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自分だけ揚げ物が楽しめる世界  作者: ミツメ


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僕たちは人見知り

 世界は確実に変化していた。それはゼロからイチへと姿を変えたあの日とは違って、はじめと比べればそこまで大きなものではない。けれど確実に兆しは生まれていた。


 休日に二人はそれぞれの時間を楽しんでいる。綜馬はポーションや薬草類を使った調合。他には未だ謎の多い【空間魔法】と【陰魔法】の研究。あとは音楽を聴いたり、空間魔法内での農園に勤しんでいる。


 休日も早起きして活動する綜馬とは対照的にミケアは寝ているか、食べているかが基本で、これまで味わえなかった堕落を取り戻そうとしているようにも見える。

 武器の手入れや、軽い運動はしているが、生活の大部分は堕落が占めていた。

 時々、綜馬や完全体の【朔】と模擬戦をしているが、1時間もすれば休憩と言って、昼寝を始める。

 出会った当初では考えられない変わりようだった。


 ゆとりのある生活と並行して、二人はある計画を立てていた。

 ミケアの願いである故郷の者達との再会。無事である可能性が高くなった現在は、仲間達の実力を知っているミケアはそこまで焦って事を進めていないが、早ければそれはそれで嬉しい。しかし、幾重にもなっている彼らの行方を探る方法。

 宝珠の欠片とやらを集めて、それによって『叡智』というスキルを手にできる。そのスキルで仲間の居場所が、といった感じなのだが、肝心の宝珠の欠片を探すためにもその度に魔石を消費する。


 これがゲームのやり込み要素ならば熱中して取り組んだかもしれないが、現実であり自分の命が常に掛かっている。それなりの修羅場を越えてきた二人だが、何が起こるかわからないこの世界で絶対はなかった。

 その結果二人が考え出した計画。それは行商をする事だった。


 日本各地を、果ては海外すらもどうにか生きていけるという自信が二人にはあった。昨日の残りの唐揚げをつまみながら綜馬は頭を悩ませる。

 情報は魔石と交換とばかり考えていて、綜馬の持つあまりある物資もそれの代替品になり得る。しかし、問題はその情報の正確さだった。掲示板で広げた場合精査不可能な情報が飛び交うだろう。

 その曖昧な情報を頼りにあちらこちらに出向いていれば体が一つではもたない。と考えたところで、


「誰か近づいてる。」

 ゴロゴロと微睡むミケアが呟く。咄嗟に隠密を発動して、二人の気配を殺す。

「距離は?」


「ガソリンスタンドのところに二人。」


「感知範囲は広げられる?」


「うん。少し離れた、コンビニ跡に集団がいる。じゅう、最低でも十五人。魔力の波が大きいから気づかれるかも。」


 綜馬はミケアに教えられたエリアに放してある[カンジ]を使い空からの偵察を試みた。

――――――――――――――――――――――――――――――


 システムは狡猾だった。自分にとって危険な存在を排除しなければと常々思案していた。ランキングというのはシステムにとって渡りに船の新ルールだった。排除したものを同族で殺し合いさせる。これ以上効果的なものはないと安堵する。


 しかし、システムは公平でなければならない。あくまでも中立。それを保たなければ【神】からの信は得られない。

中立であることと関与しない事はイコールで結ばれてはいない。【スコル】を生み出したときもそうだった。ならば今回もと、システムは使い魔と使徒を作成する。


 慎重でなければならない。前回のように名前持ちを産んでも役目を果たさずに殺されては何の意味もない。

 だから慎重に。丁寧に。そのために使徒を作る。人にシステム側の存在を作り出す。利用しやすく、それでいて強い。そんな存在を。


 システムは脅威を排除する。この世界が統合された事でより一層価値が生まれた。全ての存在をシステムの管理下に統治するために。


――――――――――――――――――――――――――――――


 実力の離れた同士の戦いは生まれない。どうやって知り得たのか、綜馬とミケアが拠点にするエリアには日を追うごとに人が現れた。

 彼ら同士の小競り合いが増え、人の往来がないような道にさえ足跡が残るようになっていた。どこかで失敗したのだと、綜馬とミケアは強い後悔を覚える。


 しかし、仕方ない。今自分たちに出来る事はこの場から離れるか、敵を一掃する事。ただ、ここらに現れた者たちが一概に敵であるという断定も出来ない。そしてそれを確かめる方法も思いつかない。

 ここで二人は気がついた。自分たちは人見知りなのだと。そして、うっすら他人という存在を敵視しており、パーソナルスペースが人一倍大きい。


 綜馬とミケアは自分たちの居住地、大体半径300メールのエリア全てが誰にも入られたくないパーソナルスペースだった。元から他者への興味が薄く、異種族という自覚のあるミケア。

陽気な性格ではなかったが、他者を恐れるようになり、内と外の区別がはっきりと線引くようになった綜馬。


 こんな二人だからこそ波長が合うのだが、今回のような対人の問題で、対等に会話をするというコミュニケーションがどうも苦手だった。つまり、外にいる者が敵かどうか判別する方法はなく、相手から攻撃意思を受け取った場合徹底的に潰すという、カウンター準備完了で近づく戦法しか用意できなかった。


「名残惜しいけど、行こうか。」


「ミケアの家だったのに、」


 結果、二人のとった選択は逃避。二人の力があれば似たような環境は見つけられるだろう。それでも、初めての安息地をただただ手放すと言うのは辛かった。


 二人がその決断をする頃には、拠点の近くに居を構える者も出始めており、我らが万能生物[シーナ]に拠点全ての物資を回収して貰い、その場を後にした。

 綜馬とミケアが編み出した隠密完全形は、【陰魔法】で気配や魔力を消して、【空間魔法】で姿も見えなくさせる。これが従来の隠密と呼んでいた形。そこにミケアの【音魔法】で生じる音を消し、ミケアから学んだ狩人の歩法で痕跡も残さない。


 敵とか、相手になる以前に認識される事なく、二人はそこから姿を消した。

 

読んでいただきありがとうございます。


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