効率厨
木曜日、あがります。
岩を砕く音が辺り一帯に響く。カンカンと一定のリズムを刻むのはピッケル。岩を削り、鉱石を採掘しているのは[朔]だった。久々の召喚に心なしか張り切っている様子に見える。
山岳型のダンジョンは素材や物資を集めるのにうってつけだった。そもそも、大量の物資を運搬できる力と難度Aのダンジョンを進んでいける力が前提なのだが、綜馬にこれらの問題は問題でもなんでもなかった。ミケアと綜馬は強い魔石を持つモンスターを中心に狩りをして、[朔]には採掘、[シーナ]を司令塔として[カンジ][スコル]で薬草や果実の採取を行わせていた。
役割分業を二日間したことで、彼らは二人のダンジョンアタックでは考えられない成果を上げていた。
「これ無駄遣いしない限り一生分あるんじゃない、」
目の前に積まれた鉱石の山。どれも品質が高く性能も良さそうだった。なかなか出る機会が無かったがやはり[朔]の力はそうとなものだったなと改めて実感した。
ミケアと共に生活して彼女が万全な状態で動けるのは二日だというのがわかった。明らかに動きのキレが違う。初めから長期戦を覚悟した温存モード、短期決戦を意識した決戦モード、そして通常モード。温存は長く動ける分戦闘行動を避けるきらいがある。決戦は燃費が悪く、バランスがいい通常モード。それも一番パフォーマンスがいい二日間を利用して動くのが二人の行動軸になっていた。
二日働いて三日休む。このローテーションが二人の最適だった。家を移動するのもこのローテーションに依存したもの。
「今日何にする?」
「から揚げがいい。」
「折角だから食べてみよっか、あれもから揚げにして。」
帰り道、今日の晩ご飯について話し合う。ここ最近は一つの試みとして動物型のモンスター。それも原種の動物と姿形が近いものを調理してみるというチャレンジをしている。今のところ四戦二勝一分け一敗。これで言う勝ちは元より美味しかった。負けは不味い、若しくは害があった。といった感じだった。今日使おうとしているのは二首に分かれ、鋼鉄のような嘴を持っていた鳥型のモンスター。首が二股に分かれていなければ見た目はまんま鶏で、綜馬はかなり期待していた。
持つべきもの[シーナ]だと今ならはっきりと言える。一家に一台とはこの事なのではと、他の家庭が持てるはずもない"特別"を前にしてしみじみ思う。
彼女は明らかに高度な思考を有していた。それは本能に準じた反応のようなものではなくて常に学んで成長していた。【空間魔法】から自由に外出できるのを知った時は脅威だと強く感じたが、彼女に敵対の意思は欠片もなく綜馬の事を家族のように愛している様子だった。
そんな[シーナ]は【空間魔法】の自由の往来以降も見る度に新しい力を得ていた。風の刃、擬態、モンスターへの寄生。そして分身。彼女は明らかに吸収する力を有していた。前の綜馬ならきっと脅威に感じ、[シーナ]を監視していただろう。しかし、互いに心許した関係になった事により綜馬は素晴らしい力だと手放しに喜んだ。
それからというもの、[シーナ]は二つ目の思考として綜馬の分身体の司令塔として頼っている。それは戦闘や採取に限った話ではなく今もなお【空間魔法】内で働く綜馬の分身体へも作用する。
誕生から常に農園か工場で働かされている綜馬の分身体。召喚数の限りは魔力依存だが、数を増やすとオリジナルの原型を崩して生まれてしまう。そのため数の制限して【空間魔法】内に留めさせているのだが、単純労働しかできないのが難点だった。作業は機械的でその都度指示を送らなければならなかった。
そんなとき救世主と表れたのが[シーナ]だった。彼女の登場以後と以前で世界は飛躍的に変化した。モンスターを解体し、下処理を済ませておける。ごちゃついた空間内を整頓しその数を管理できる。あまり使わない魔道具や武具、ポーション類の研究など、あとでやろうが無くなった。
[シーナ]と二人で掴み取った勝利だと、綜馬はガッツポーズをした。
だからこそ、
「もうじき揚がるからご飯よそっておいて。あとマヨネーズもお願い。」
ミケアは冷却の効果を持つ魔道具の中からマヨネーズ、そしてレモン汁を取り出す。炊飯器のご飯を二人の茶碗によそっていく。当然炊飯の魔道具は無いため、日光で貯めた充電を利用して炊飯器を動かしている。
ぐぅーとミケアは今か今かとから揚げの到着を腹を鳴らせて待ち構えていた。
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単純な戦闘力だけがランキング順位の加算には役立たない。その事は多くの者が知っていた。けれど、ランキングにはある基準が設けられており、その事を知る者はほとんどいなかった。
ある基準というのはシステムに対する脅威度。特異点とされる存在。
例えば、神によって創造された名前持ちのモンスターを討伐したり、神が設計したモンスターをリサイクルして新たな存在を生み出したり、システムの歪みである『祭壇』を持っていたり。
張り出されたランキングの一位。そこには綜馬の名前が記されていた。それだけでなく、六位にはミケア。名前の異質さからただ者ではないと誰が見ても察知できる。
はぐれエルフという特異点。主世界となったこの地に統合された従世界の存在でありながら、主世界のシステム【魔法】を手に入れた特異点。
誰がどう見てもおかしな二人組だった。それに、彼ら自身は気づいていないが相当な実力を持っている。町を彷徨く野生のモンスターとダンジョン産のモンスターとでは大きな力の差があった。ダンジョンに篭って戦い続けている彼らが弱いはずなかった。
掲示板に張り出されたランキングを見たもの達は、さっそく狙いをつける。ただの順位ではその者の実力は測れない。賞金狩りをする者達の取る作戦は基本的に急襲。いくら強くても、優秀な魔法を使えても、元は人間。首元にナイフを突き刺しでもすれば殺す事が出来る。死を狙わなくても交渉の材料を作れたらそれでいい。とにかく対面で打ち合うのは避けたい。それが賞金狩りの思考だった。
「おい、こいつら随分と人の少ないエリアにいるな。」
「なんて読むんだ、こいつ。そうま?とミケアってやつは仲間かもな。どうする?」
「他にも仲間がいる可能性だってあるんだ。とりあえず下の方から攻めようか。」
「やるなら一位からっしょ!!ぁぁぁ、滾るぜこの感じ!!」
「そんな事ばっかりやってちゃ、命がいくらあっても足りねぇぞ。」
「おいおいおい!!こんな世界なんだ!命なんて一番安い硬貨だ!こんな値段で最高級の興奮を楽しめるなんて、やらなきゃ損じゃねぇか!!」
続々とランキング掲載者を狙った賞金首達が集まってくる。それだけランキング掲載者を倒すことによる報酬が大きいと言う事だった。
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