賞金首
来週は火曜日、木曜日も投稿します。
通常のダンジョンで浅層にあたる階層には森林が広がっている。出てくるモンスターもその環境にあったもの。つまり、綜馬とミケアからすれば慣れた相手だった。昆虫型、蛇型、鳥型。どれも対処法は知っていた。あの頃を懐かしむ様に二人は進んでいく。道中でダンジョン産のアイテムを採取しながら進む。
「紫の花と、白い木の実があったら教えて。」
「わかった。」
掲示板で知った効果の強い薬草。ポーションの在庫を多く抱えている綜馬だからこそ、色々な実験をしてみようと考えていた。山岳型のフィールドダンジョンは素材採取にはうってつけだった。森林部と山間部。山間部は岩肌が剥き出しになっている箇所が多く、様々な功績を手に入れられる。今までは嘉山のシェルターや、天谷たちの協力もあって鉱石系の不安は少なかったが、これからは前の生活のように補給は常に意識しておく必要があった。
消臭石と結界石。それが今回の一番の目標であり、並行して魔石の収集を行っている。
「向こうに強い気配があるよ。」ミケアは索敵能力を使い、より濃い魔石を持つ対象を探っている。
「ランダムスポーンかな。」
二人は気配のする方へ進む。先行隊として[カンジ]と[スコル]に向かわせていた。
[カンジ]の気配が一瞬にしてかき消される。消される前に視界を借りてモンスターを確認していた。
「熊のモンスター。中型なのは間違いない。」
ミケアは小さくうなずいて魔力を貯める。獣には音が効果的だった。
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ランキングに反映される強者というのは単なる魔力や魔法の強さだけではない。どんなモンスターを倒したのか、システムにとって脅威の判定を受けるかどうか。そしてこの自分がどの位置にいるのか原則は本人のみ知ることが出来る。開示することで得られる報酬と天秤にして開示する選択を決める。
ただし、これにも勿論例外は存在する。すべては取引可能なこの世界のルールによって、相応となる支払いをすればこのランキングの順位は筒抜けとなる。
「これ数えといてくれ。」
手下の男は机に置かれた袋を開けて中身を確かめる。
「今月もありがとうございました。」
「また来月も頼むな。」
袋を持ってきた男は頭を下げながら部屋を出ていく。手下の男は魔石の数を数え終えると数字を記入した。
「どれくらいになった?」
「先月より30少ないです。」
「『蒼月』と『豪雷』が来てからこの調子みたいで、」
スルメイカを喰みながら椅子に座る男はしばらく黙ったあと、
「賞金をあげて載せ直せ。」と指示を送る。
手下の男たちは頷くと、内容の詳細について話を詰め始めた。
彼らはランキング上位者を狙う賞金稼ぎだった。元々はシェルター間の攻城戦を手伝う傭兵のようにして各地を渡り歩いていたが、現在は定住地を作り、その地を管理しつつ貯まった魔石でランキング中位者を狙って動いていた。
実力はそこそこだが、経験と人数の利で少人数で動く者を襲う。彼らは報酬が得られるランキングの中位者のみを狙っているため、今回のような称号がついているような上位者が近隣にいる場合、なかなか儲けは出せずにいた。
様々な賞金稼ぎがいるが、彼らのような実力が低い者たちは、自分より弱い者がいる地域をナワバリとしてそこのケツ持ちとして外敵を排除したり、自警団的な役割を果たす事で、安定した収入を得るしかない。
その中でうまみを得られるランキング中位者を狙うというサイクルだった。
しかし、このサイクルの中にランキング上位者の強者が来るとなると話は変わってくる。
自らの称号を喧伝するようなタイプは、自分がこの地のケツモチとなると言い出したり、安定した狩場を荒らすだけ荒らしたり、好き放題やるやつも少なくない。
そんな時に使うのが掲示板と、賞金首の掲載。どうにかして自分の楽園を保とうと、彼らも必死だった。
「ボス!掲示板に連絡ありました。」
男達は載せ直した賞金首のページに目を落とす。
「関東のランキング上位100名を公開。これが条件で賞金首を片付けてやる。か、」
「今ある魔石でいけそうか?」
「どうにかギリギリです。」
「期限を設けても良いかと連絡しておけ。」
「良いんですか?こいつ本当にやるかどうか、」
「そいつはナンバーズだよ。掲示板の書き込みを個人利用できるのは使用者権限を譲渡されたものか、エリアランキングで100以内に入ってるやつだけ。こんな要件に乗っかるのはナンバーズしかいない。」
「それなら、」
「ああ。称号持ちでもどうにか出来る。上位勢がぶつかるなら漁夫の利だって出来るはずだ。」
男達はつい溢れる笑顔を堪えながら、ナンバーズと連絡を取り合い、関東ランキングの公表を決断した。
これまでの魔石全てを消費して、現在の旧関東エリアランキング上位100名の情報。名前と現在住んでいる大まかなエリアが表示されている。
これを掲示板に公表し、上位ランカー達の戦闘を狙うだけ。思惑通り進む状況が可笑しくてしょうがなかった。
が、
「期限は明日ですよね。あれ以来連絡が、」
「返事が来るまで連絡し続けろ!あの野郎!!」
「あっ!きました!」
「ふざけやがって!絶対後ろから狙って、」
「ありがとな、『蒼月』よりって書いてあります。」
「ぐわぁぁぁぁぁ!!!!!!」
騙された男達は、自分たちの載せたランキングが関東を混沌へと導く手引きになった事にこの時もちろん気づくはずもなかった。
読んでいただきありがとうございます。
『落第生と災厄』新たに書き始めましたのでよろしくお願いします。
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