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自分だけ揚げ物が楽しめる世界  作者: ミツメ


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アップデート

 眼前で繰り広げられる戦闘は巧者と巧者のものだった。綜馬はこの一ヶ月休む事なく働き続けた。その甲斐あってか、嘉山達シェルター1501はシェルター同士の抗争に勝利することが出来た。

 大きな一歩だった。これまで歩んできたどれよりも大きく、確実なこの一歩は四人の悲願に近づいていた。


 シェルター1501だけでなく、嘉山がまとめる30近いシェルターは全て協力者として借りる事ができる。これはミケアの故郷を救うために必要だった。

 ミケアが話した故郷の現状。そのために綜馬に力を借りようとした理由。ミケア自身も途中から綜馬がかの英雄達と同じではないことを理解していたようだが、離れるに離れられなくなり、それに綜馬の凄さはわかっていた事もありここまで一緒に着いてきたらしい。


 魔石の用意でき次第兵隊を送ると天谷は言っており、この兵隊の数と練度が天谷の『マーク』打倒にも繋がっていく。


 急ぐようにして強引に勝負をつけたのは、引き込むははずの敵戦力を削りたくないという理由が大きかった。

 綜馬、ミケア、蘭香の三人は天谷の手足となり様々な工作から、手の空いている時は雑務をこなした。


 西城の実質支配を受けていたシェルターから援軍が向かわないように足止めしたり、逆に味方には有利に運ぶように所々で手助けを行った。

 綜馬はへとへとになりながら、作戦成功を聞いてやっと落ち着けると息を吐いた。


 そんな帰路の途中で見かけた戦闘。一対一のその戦いははじめ、巧者同士のものだと思っていたが、見れば見るほど片方の強者がただ遊んでいるだけの図式になっている事に気がついた。

 綜馬も様々な死闘や修羅場を越えた事で地力がついたのだろう。

 二人の戦いを止めるつもりも、勿論割って入るつもりもなかった綜馬は、見つからないようにと遠回りで天谷の元へ帰ろうとした。が、


「あれ、誰君?」


 綜馬は有栖に呼び止められた。


――――――――――――――――――――――――――――――


 天谷は嘉山が聞いたと言うアナウンス、そして《投票》について嘉山と思案し合う。この世界に敷かれた規則は、ある種普遍的でありながらも、思考の外にあることを忘れてはならない。

 二人が想像の中で思考を加速させたところで、答えには到達しないと判断し、指定された明日を迎えることに決めた。この話は天谷と嘉山の二人だけしか知っておらず、嘉山は万が一のことも考え今後の全体の動きについて急遽まとめ始めた。


 翌日、普段と変わらない状況に戦々恐々としていた嘉山は、ちょうど昼を回った頃にとてつもない眠気に襲われた。緊急時に備えて天谷が常に控えていたこともあり、自室へどうにか戻った嘉山は程なくして意識を失うように眠った。

 天谷は冷静に嘉山の状態を確かめながら、事前に決めておいた時間までは隊長や飯垣に報告するのを我慢していた。


 一方、突然の睡魔に襲われた嘉山は不思議な空間に意識がある事に気づいた。夢の中でもあり、実体があるようでもあり、とにかく不思議な世界。浮かんでいるような、沈んでいるような、とにかく自分という輪郭だけははっきりとしているが、それ以外は不定形で歪だった。


《投票場へようこそ。統率者86がいらっしゃいました。》


 質問する暇もなく、そもそもどうやって意思を表現して良いのかわかっていないまま、空間は飛ぶ。スイッチを切り替えるように目の前の世界は変化し、大きな円卓のひと席に腰掛けていた。まばらに空いた席は、嘉山が空間に慣れる間に次々と埋まっていき、体感時間にして1分くらいで円卓の席は全ていっぱいになった。


 人である事は確かだが、それがどんな人なのかは認識がボヤける。隣の席に誰か座っている事はわかるが、それ以上の情報を脳は処理しようとしていないみたいだった。


 説明を、と口にしようとすると脳内に元からある知識だと言うように、この場、そして投票についてが浮かんできた。外部からインプットされた情報はその瞬間、自分の知識の混濁し、いつのまにか理解を終えていた。


《今回の投票は全体の10分の1の統率者によるシステム干渉への投票になります。》

《以前のシェルターシステム破棄の投票では否決となりました事案を代替案によって可決へ向かわせる提案になります。》

《今回の投票では裁定者以外の発言、意思表現を禁止しており、可決、否決のみを承認いたします。》


 そこからは先ほどのこの場、そして《投票》というシステムについて理解させられたように、この場を提案した者達による新たなシステム案とこれまでのシステム案との違いを脳内へ流し込まれる時間が続いた。


 普通ならば気が触れるような状況かもしれないが、不思議と意識は明瞭としている。全ての説明を聞き終える頃には嘉山も今回の投票に対する自分の意見を用意していた。


――――――――――――――――――――――――――――――

 薄く聞こえる声に意識が引っ張られていく。

 「大丈、すか、やさん。大丈夫ですか、」

 体を揺すられて、意識だけでなく自分という存在がここにある事を実感する。眠気と呼べばそうなのだが、きっと違う気怠さを纏いながら嘉山は目を覚ました。


 未だボーっとする意識と視界を擦りながら確かめていく。断片的で曖昧な夢とは違い、嘉山はさっきまでの記憶を確かに持ち帰ってきていた。天谷の心配の声掛けには答えずに嘉山はこれから起こる変革について口にした。

「天谷君。これから大変になるよ。」



 数日後、あの日見たような不穏な空が一面に広がっていた。誰もが不安を抱きながら空を見つめる。異質な風が吹き、人を、モンスターを、全てを飲み込んで啓示した。

《システム改編案可決により、これより一部シェルターを除いた全シェルターの維持機能を停止いたします。並びにランキングシステムを開始いたします。》


その日、殆どの人類は居場所を失うことになった。

 

一度区切りです。書き溜めたいのでしばらく休止します。ブックマークいただくと次の更新わかりやすいと思うので是非。

別作品も宜しければどうぞ。


読んでいただきありがとうございます。


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