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自分だけ揚げ物が楽しめる世界  作者: ミツメ


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意識の外

 1500のエリアのボスは虎の大型モンスターだった。好戦的で挑発する必要なく戦いは始まる。初めての大型モンスターとの戦闘という事で、入念な準備をしてきた三人は連携をとりながら立ち回る。

 戦いは想像していたよりも呆気なく終わった。綜馬の【空間魔法】は相手が巧者である方が効果を発揮した。生み出した僅かなズレは、彼らの間合いを破壊する。間合いが壊れた巧者達は長年でどうにかリカバリー行うが、その隙を三人が見逃すはずがなかった。


 特に敵の機微には目敏いミケアにとって、普段のフォームを崩した巧者など、絶好の標的でしかなかった。ミケアの【音魔法】を皮切りに体勢を崩したエリアボスは次第に何もできない時間が増えていく。

 蘭香の大雑把な攻撃が当たり始めたところで完全に勝利をものにした。三人がそれぞれの最大火力をぶつけ、戦闘開始から一時間ほどでエリアボスは討伐された。


 この世界にはたった一つ確定したルールがある。それは誰にも平等で時に理不尽と思ってしまうほど全てのものと同じ距離に置かれている。

 何かの代償を支払うことで何かを得られる。当然で明解なルールは今回のエリアボス討伐にも当然作用する。


――――――――――――――――――――――――――――――

 

 嘉山たちの目の前に広がる光景はまさに地獄絵図だった。かつて見た悲劇の再来。落ちたと報告を受け、至急準備を整えて向かった嘉山率いるシェルター1501軍は、西城の秘密兵器を前に思わず尻込みをする。

 モンスターで埋め尽くされたシェルター。そこには人の影はなく、狂気に満ちた殺意が充満しているだけだった。


「まさかとは思っていましたが、」


嘉山はあまりにも動きのない西城について様々な考察を用意していた。彼の力は掲示板で調べれば出てくるように有名だった。強力で汎用性の高い能力は、西城という最強のブレーンの下なら何倍にも輝く。その一つにモンスターの使役という可能性があった。死を恐れず、簡単に補充できる軍隊。最強そのものだった。

 

 途端に隊長と飯垣は頭を悩ませ、打開案を模索し出すが先述の通り、嘉山はこの可能性を考えていた。

「あれ使いましょうか。」

 嘉山は天谷に声をかける。

「わかりました。準備します。」


「私たちも準備始めましょう。」


「ですが、」


「大丈夫です。寧ろ今がチャンスです。」


 嘉山たちはその場を離れ、突撃準備に取り掛かった。モンスターが覆いつくすその先に西城が位置取っている事は知っていた。現状把握のために来たつもりだったがここが最終決戦の場になるだろうと嘉山は踏んでいた。そのためにとっておきもここで使う。全身全霊をかけて勝利を掴みに向かった。



 【契約魔法】で縛ったモンスターほど優秀な兵隊はいない。人の醜さと無能さを常々憎く思っていた西城にとってこの決断は最良のものだった。それと同時に不要となった醜いものの処理に頭を悩ませていた。

 どうせ勝つのは自分だと確信していた西城はダラダラと長くなることを嫌い、占拠したばかりのシェルター付近に全軍を準備させた。両軍とも思いは違えど、この戦いで勝敗を明らかにする準備をしていた。


 開戦の合図は嘉山たちから。明確に言うと、軍を集める動きを察した上石達がこのまま敗戦で終わってなるものかと、急激を仕掛けたのが始まり。モンスター犇めくシェルターと、人々が争うシェルターの外。まるで世界が裏返ったような光景が広がる。


「やれ、」


西城が小さく呟いた瞬間、モンスターの大群が沸騰し外へ雪崩れ込む。【契約魔法】の範囲は近ければ近いほど効力を増し、対象を思うがままに操れる。西城が対象に命じたのは西城以外の生命の排除。隣に座る数人の使える者たち以外はモンスター以下の廃棄物でしかなかった。


 嘉山たちが準備を終える頃には両軍ともに数をかなり減らしていた。モンスターに怯えながら敵を掃討する。普段と何も変わらないはずが何者かの作為が関与することでよりどす黒く色を変える。


「配置終わりました。」

 部下の報告を聞き終えた隊長は嘉山に通信する。戦闘開始の合図を待っている隊員たちは目の魔の地獄に生唾を飲み込む。足が竦まないのは愛を取り戻したいから、体温を知っているから、生きて帰ると約束したから。守ると誓ったあの日に逃走の二文字は忘却の彼方に置いてきた。心を厚くし闘志を燃やす。激はなくとも士気は十分なくらいに高かった。


「天谷君、聞こえてる?」


「はい、大丈夫です。今すぐにでも。」


「合図を送るからそれまで待機でお願い。暫くたっても合図がない場合は天谷君判断で頼む。」


「了解しました。それじゃあご無事で。」


「天谷君もね。」


 戦闘開始から一時間も経過していないはずの戦地は散々な状況にあった。どちらの形勢が有利なのか不利なのかも判断付かないが、西城は勝利に指を掛けていることは確かだった。

 しかし、それは一変する。天谷の放った結界が辺り一面を包んだ時、西城は漠然と浮かんでいた全能感を手放す。それは西城だけでなく全てのものに平等に作用した。

 

 エリアボス討伐によって得たもの。それは天谷の結界が一時的に全ての魔法効果を打ち消す力。魔法が日常化し、人間の指標となったこの世界で彼らは思い出させられる。今の自分は仮初なんだと。

 統率を失ったモンスターはモンスター同士でも血を求めあう。同族など関係なく、弱いもの、奪えるものを基準に牙を立て、爪を振るう。多くの者が違和感に取りつかれている間に、隊員たちは制圧行動に取り掛かる。武器もなく、先手をとれる一般人に彼らが後れを取るはずがなかった。


「A班より通達。対象捕獲完了とのことです。」

 

 指示を出してから三十分もしない間に作戦は完了した。西城が戦闘不能になったことで、彼の管理するシェルターの所有権は嘉山に移る。これからの事後対応を考え溜息を吐く嘉山の目の前に半透明のウィンドウが浮かび上がる。


《一定数のシェルター管理を確認しました。統率者として投票への参加権を得ました。次の投票は一日後になっています。》


理解できない羅列が意識を占拠した。

 

読んでいただきありがとうございます。


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