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自分だけ揚げ物が楽しめる世界  作者: ミツメ


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佳境

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

明日も投稿します。

 西城陣営の一手から、嘉山陣営が反撃に出て、その結果、かなり分のいい戦いに持って行けた嘉山陣営は、必要以上に攻めることはなく静観を貫いていた。これまでとは打って変わって、突然待つような戦法に変化した事に西城陣営は様々な可能性を考えた。

 これがただ単に嘉山が前線を上石達に投げたとは誰も考え至らず、採算の会議の結果「もうなんでもいいから攻めよか、」という西城の発言により、急ピッチで突撃の準備が再開された。


 西城陣営では、寝返ったような元西城陣営の者達に怒りを露わにする者と、今なら寝返る事が出来るのか、それとも自分たちが本当に勝てるのかと、勝機を探す者で二分されていた。

 西城の強さは十分承知しているし、西城が従える騎士隊と呼ばれる者達の実力も嫌というほど見てきた。それを味わった者達も少なくない。

 ただ、それを知っていても嘉山達の勢いと、シェルター1501の軍隊の強さはあまりある脅威だった。


「明日までには準備が終わるとのことです。」


 通信の魔道具で状況把握した伝達役が発言する。その言葉に西城は小さく頷きを返すと会議室を後にしてしまった。


「本当に大丈夫なのか。」

「何かお考えがあるんだろ。」


 会議室に残された面々は堰を切ったように話始める。

 西城にとって仲間はと呼べる存在はただ一人もいなかった。駒のように人を動かすだけ。着々と準備していたとある場所に向けて西城は向かった。


――――――――――――――――――――――――――――――


 天谷と嘉山。事前に綜馬から聞いていた通り、直ぐに意気投合した。年齢は一回り以上離れているが、価値観はかなり共通していて互いの手腕を褒め合う。お世辞抜きで指導者として適格だと思ったのは堂島に次いで二人目だった。これまでの話をしながら、互いの目的のために情報を共有し合う。


「それじゃあ、綜馬君はその魔石集めに、」


「もう少ししたらこっちくると思いますよ。魔石集めはあくまでもついででしたから。」


「このまま上手くいけば、来週には終わる。」


「そうですね。この戦いが終わったら、その後。」


「もちろんわかってます。私たちの脅威でもありますから。そのマークという団体は。」


 対マークを意識した計画のためには人数が圧倒的に足りていなかった。綜馬の話を聞いた翌日、嘉山たちシェルター1501と協力することを決めて、それぞれ動き出した。フロントマンは天谷。暗躍するのは他三人。

 エリアボスを倒すときだけ三人は集まっていたが、今は三人とも別々に動いている。それなのに情報共有が密に行えているのは――


「しかし、驚かされてばかりですね。」


 嘉山はトランシーバーに触れながら笑う。

 当時の状態のまま、電池も予備があり使用できるトランシーバーが現在いくつ残っているのか。もしかするとそのほとんどがここに集中しているかもしれない。


「準備はもう終わります。最後の戦いに行きましょうか。」心強い味方を手に入れたシェルター1501と嘉山は進む。

天谷も頷き、準備に動き出した。


――――――――――――――――――――――――――――――


 ’裏’クエストが発見されてから、この世界における行動には全てに意味が生まれた。破壊も再生も守護も、全て。何かを奪えば何かが手に入るし、奪われたくないのなら守るしかない。まるで新たな発見のように思えるかもしれないが、それはいつの時代だってそうだった。それがクエストの名を冠して可視化されただけ。


 綜馬たちの行っていたエリアボスの討伐も当然意味がある。行軍の妨げにならないようにとか、万が一を排除したいからではなく。エリアボスを倒すことで得られる恩恵。何種類かある効果の中で、天谷は選んでいた。そもそもこの力を行使するためにエリアボスを討伐しようとしたのだから当然だった。


 西城陣営の攻撃は以前の嘉山と同様に急襲によって繰り広げられた。とは言っても守りに徹した構えの上石達にとって急襲は予想の範疇を超える事はなく、二度に亘る攻撃はどれも西城陣営の求める結果とは乖離したものとなった。


「今回の西城は出てこないってどういうことだ!」


「それが、」


 基本的に自ら戦場に立たない西城は古森のような指揮官を擁立し、勢力を広げていった。これは今回のように大きな戦いの場合でも崩すことのない西城なりのポリシーだった。しかし、現場は納得しない。自分たちが気力、体力、精神力を削られているというのに、西城はのうのうと驕奢を欲しいままにしている。反感を買うのは当然だった。特に今回は、満足に攻めきれずいるのに相手は勢いを持ったまま悠然と構えている。手の内を理解されている元の仲間で、可能性として離反する事だって出来る状況だった。

 裏切りや反乱の声は勿論生まれる。信義や忠誠などなく、西城陣営を結んでいるものは西城に対する畏怖と西城の確かな才能だけだった。


「次でラストだ。出し惜しみなしで仕掛ける。ここで攻め切れなければ俺はもう諦める。」

 古森の後を継いで総指揮官となった八紀は、疲れた顔でそう言い放つ。彼は自他ともに認める凡人だった。古森のような野心も、西城のような才覚も持ち合わせていなかった。堅実で臆病。だからこそ総指揮官に選ばれたのだが、納得しない者少なくはなかった。八紀自身もこの立場に精神をすり減らす毎日で、だからこそ最後と決めて動き出すのは簡単だった。


 三回目のこれまでと同様に、最初の方だけ勢いがあり徐々に尻すぼみになっていく攻勢。攻めきれない。この線上にいるもの全員がそう思った時、


「左翼、右翼、どちらも優勢!このまま押し切れるとの報告です。」

本体とは別に戦線維持のために左右を抑えさせた部隊。数はそれなりだが圧倒的に能力は足りていない。時間稼ぎと見掛け倒し程度にしか数えていなかった二つの部隊が大金星を挙げる。

「本隊もこの勢いに乗じて攻めきるぞ。両翼指揮官にそのまま中央に突撃せよと通達。」


 一度手にした勝利の流れは放すことなく、勢いそのままに二つのシェルターを陥落させた。


「何がどうなってこうなったんだ。」

上石達は状況判断もままならず、ただ力に圧される形で防衛ラインを後退させた。

反対に戦勝ムードの西城陣営は数時間前の様子とは打って変わって、余裕のある空気が流れていた。


「両翼の指揮官を呼んでくれ。」総本部の者達は次でラストと言った覚悟のようなものは落ちて、味わった勝利の味を反芻するように明日からについて話し合っていた。そうなれば今回の立役者である両翼の指揮官を呼ばない理由がない。褒美を取らすと言った感じで彼らを呼びつけた。


「いやぁよくやったね。君たち。」「本当に運がいい。」「八紀さんと古森の違いはここだったのかな。」

ダラダラとよくやったよと話す総本部の者達。

「まぁ君たちの活躍がなくとも結果は変わっていなかっただろうけどね。」

これを言いたかったんだなと、両翼の指揮官は理解する。活躍はあったが値千金ではなく、褒美と名誉はこちらが優先だと。

「それなんですが、」左翼の指揮官が説明を口にしようとした時、


「ずいぶんな言い方だな。お前ら。」

 勢いよく開いた扉の前には西城が立っていた。

「両翼とも俺の指揮と援護で動いたんだが、いらない助けだったか。それならいい。明日からも励め、」


「西城様、それは、」「申し訳ございません!!」「浮かれた発言をしたものさっさと、」


「もういい。俺が総指揮に入る。八紀と両翼の二人以外は民兵に降格だ。さっさと失せろ。」


 戦いは佳境へと向かって行く。



読んでいただきありがとうございます。


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