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自分だけ揚げ物が楽しめる世界  作者: ミツメ


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謀略

 一連の戦いが変化を見せたのは2日目の朝。三交代制で朝昼晩とシェルター1588を包囲している西城軍は、最高の滑り出しをしていると上々の手応えを感じていた。今回も全体の総指揮を受け持つ古森は、どうにか前回の失敗を払拭出来たと安堵を覚えていた。

 しかし、朝の担当から昼に移行する段階で幾つかの地点で問題が起こった。


「昼の班はまだ来ないのか?」


「呼びにいってるんですが、このエリア担当の人たちがいないらしくて、」


「昨日とおんなじなんだろ?いないってどういう。」


 この段階では総指揮の古森ではなくそれぞれの場所を担当する指揮官が臨機応変に対応する。初心者のかき集めだ。それに西城に対する不満、不安を持つものを少なくない。特に今回の作戦では西城への思いが希薄なものや、先の作戦で失敗して気持ちを膨らめてしまった者もいる。そんな者達を追い出すためにも今回集められたのだろうと西城をよく知る指揮官達は理解する。


 昼から夜へ交代する際にも同じ問題は所々で起こった。とはいっても20のエリアの中で3〜4エリアで2、3人。わざわざ緊急で報告する内容ではなく、全体報告会で言えばいい程度の内容。エリア同士で密に情報交換するわけでもないため、少し反抗的な者が多いシェルターから参加したんだろうなとしか各指揮官は思っていなかった。


 この交代の際に数人減っていく状態が数回続く。3日目、4日目、5日目と、事の異常性に気が付いたのは全体報告会に上げられてから。持ち回りで現状を話す際に1人の指揮官が口に出したことを皮切りに次々と指揮官が自分もそうだと手を上げる。

 5日目の昼の時点で正確に計算したところ全体数の十分の一が減っていることが判明。話を聞いていた古森は青筋を立てながらイライラした様子で報告を聞く。


 全体で1000人近かった兵隊がなんの攻防も起きていないのに100人ほど姿を消した。明らかな異変だった。まだどうにか手が打てる人数だが、相手は中規模シェルターだ。元々人数差相手の方がある戦いではあったが、兵隊の質や後ろに見える圧力含めて相当有利な戦いではあった。1000という数字はそれだけで恐怖を生む。それがいつのまにか十分の一減っていたとバレたら敵はどんな心境になるか。

 決して漏らしてはいけない情報だと判断した古森は指揮官達に秘密裏に調査するように命じ、それと同時に今後はどんな些細な問題でも隣り合う班に毎日報告し合うように義務付けさせた。


 今回失敗すれば古森は総指揮官の立場を失い、良くても指揮官職に戻り、最悪下部シェルターへ送られることになるだろう。何としても失敗するわけにはいかなかった。が、しかし。

 

「補給班から報告、現在エリアモンスターとの交戦中により次の補給間に合わないとの事です。復帰見込みもついていないらしく、」


「もういい!下がれ!」


 古森は苛立つを隠す様子はなく、周りに当たり散らす。人数減少によって補給遅れは傷が浅くなったもののこれは不幸中の幸いでも何でもない。ただの不運の連続。現在では振り返る問題は敵にはもちろん、味方陣営にも漏れてはならないものだった。

 そのため、解決に動かせる人員は僅か。古森は頭を悩ませながら、自分の不幸を呪うしかなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――


 仕組まれた不幸だとは気が付かずに古森が眉間に皺を寄せる裏で、嘉山はうまく行き過ぎている現場に警戒心を持った。

 嘉山の作戦は今回3つ用意されており、そのどれもが予想の最大限の効果を発揮しようとしている。普通はまずこんな事ありえない。


 誰かの意図が紛れているのか、それとも逆に利用されているのか。嘉山は慎重な性格から、二の矢三の矢を放てるように準備を進める。あまりの働きぶりに飯垣や体調は倒れてしまわないかヒヤヒヤしていた。


 暗躍に徹する時間もあと少し。数日すれば攻撃に打って出る。シェルター1501内には緊張感が漂い、各々戦意を高めていた。


 一方その頃、何も知らずにシェルター1588周辺にまでやってきた有栖達は、いつも通りではない古森の動きを見て異変を察知した。古森は失敗が許されない立場になり、ここは丁寧を心がけている。そう考えた有栖は大胆にも彼らが居を構えるエリアにまで近づき様子を窺う事にした。


 仲間の手も借り異変の原因を探る。事態の情報収集を進め、人が減った件と補給部隊の件を掴んだのはちょうど嘉山達が動き出す前日の事だった。


「古森のことだ、失敗すると分かればすぐに逃げ出す準備を始める。」


「その時を狙うんだな。」


「あぁ、上石達のシェルター1588に入れてもらう方が安全だけど、その先がない。それならもっといいやり方がある。」


 有栖は考える。自由で楽な生活を求めて。


 嘉山は願う。今ある幸せを守り抜く事を。


 そんな彼らの運命を握るのは目の前のシェルター1588でも、古森でも、西城でもなくて綜馬という一人の少年だった。綜馬自身もその事には気がついていないけれど、綜馬の踏み出す一歩が地を揺らし大きな変化として彼らに影響を与える。

読んでいただきありがとうございます。


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