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自分だけ揚げ物が楽しめる世界  作者: ミツメ


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捕食者

 飢えに喘ぐ同伴者達。当然だ、逃げたあの日から碌な食事をとっていない。日の出ている時間帯はモンスターを狩れるだけ狩りながら、空き家から食べられそうなものを見つける作業の繰り返し。

 有栖ただ一人だけは飢えとか疲れとかそんなものどうでも良かった。ただ退屈で仕方なく、何度も同伴者達と仲間割れをしてヒリヒリした状況を加熱させようとしたか。その度に思いとどまってあくびを噛み殺した。


 なんの計画のなく衝動的に逃げ出した結果がこれだ。あの日から何も成長出来ていない。向こう見ずな性格も、退屈を嫌う癖も。

 どんな世界になろうとも変わらないのだろう。変えようのない自分の性格はいつ何処でも同じような場所を用意していた。


「最後にシェルター凸ったのって何処のシェルターか分かる?」


「多分1588だと思う。上石がいたから。」


「なるほどねぇ。」


「それがどうかしたのか?」


「せっかくだし、賭けに出るか。はなから居場所は無いんだからとりあえずやってみようの精神で。」


 西城の性格と古森の意地の悪さを知っている有栖は、これから行われるだろう憂さ晴らしについて動くべきだと考えた。この世界においてシェルターに所属していないもの達はまず初めに狩られる。裏クエストによって人の命は最も簡単に恩恵を得られる代償となった。モンスターと対峙する危険がない人狩りは、倫理観の欠けたこの世界では最もハードルの低い戦いだった。

 自分に力がないとは思っていないが、非捕食者のテーブルに立たされ続けるのはどうにもやりづらい。そのためにどこかのシェルターに所属しなければならない。

 西城に怯えているであろうシェルター1588からすれば自分たちは願ってもいない援軍だろう。それが仮に犯罪者組だったとしても彼らが一番大事なのは今の自分と、未来の自分。少し賭けの要素はあるがこのタイミングを逃している場合ではなかった。


 西城は弱者の心理を深く理解している。弱い者達が弱いままでいられるようにぬるま湯に浸けながら、その弱さを利用して自分の立場を固めていた。

 有栖は西城の横暴をよく見てきていたが、不思議と彼のことは嫌いではなかった。むしろ居心地の良さまで覚えていたが、西城と有栖の根本は同じく自分の世界を軸としていたため、協力者として相容れる可能性は無かった。きっと西城は自分たちを必死に取り返そうとはしてこない。それよりもトロフィーとして自分たちを利用することで支配下の結束を高めるだろう。


 シェルター1588に向かうのは西城からすれば願ってもない選択であり、結果的に自分たちは地獄へ進んでいるのかもしれないが、ずるずるといつの間にか地に落ちているよりかは幾分かマシなのは確かだった。


「しばらくはシェルター1588の周りに仮拠点用意して、様子見しよう。」


「あいつら困ってるなら初めから顔出しても、」


「度胸なしの上石がいるんだ。どうせ敵だと思われて追い返されるか、単純に判断決めきれず待たされるに決まってる。ピンチを救ってヒーローとして受け入れてもらうが良いはずだ。」


 有栖の提案になるほどと相槌をうつ彼らは、いつの間にか波乱へと引き摺り込まれていくことになる。


――――――――――――――――――――――――――――――


 作戦は単純だった。繰り返し使われて色褪せすら感じさせられる物量と人数有利を使った包囲作戦。失敗した場合も下部のシェルターが物資困窮に喘ぐだけで自分たちが傷を負うことは無い。大成功は無いが、大失敗も起きない安全な策。

 指揮官がさほど無能で無い限りは大丈夫なのも好都合。西城は安心して自分の根城でくつろいでいられる。


 シェルター1588を狙った攻城戦は、意外にも準備の早かった嘉山率いるシェルター1501ではなく、西城の支配下シェルター連合が先制を取った。有無を言わせないどころか、有無を持たせない西城の独裁政権は圧倒的に動きが早い。

 明日攻めようと西城がなんとなく思いついただけで翌日朝早くから動き始めるのが西城の作り上げた王国のルールだった。


 今回の包囲作戦は、シェルター1501に仕掛けた攻城戦との違いは大きく二つ。一つは前回3班で形成していた指揮系統をより大幅に増やし20班構成にしたこと。もう一つは今まで戦闘経験がなかった人員を下部から上位までのシェルター集めて実戦導入させたことの二つ。

 狙いは分かりやすく経験を積ませる事と、シェルター1588への精神的負荷を強くする部分にあった。また、参加した者達への圧力も同時に与えており、実際に参加している者達は仲間の多さや潤沢な物資に高揚感を覚える反面、この刃が自分たちに向けられるという恐怖が脳裏を過った。


 【火魔法】、【風魔法】、【光魔法】といったメインで遠距離攻撃ができる者、サブで同様の攻撃や、遠距離の補助ができる者達が脅しの意味を込めた発砲をシェルター1588に向けて行う。

 【土魔法】、【岩魔法】、【水魔法】などのもの達は工兵として道を作ったり、簡易的な罠や拠点作りを始めた。誰一人余りを出さずに各々分担した作業を行う。戦場にいるという緊張感によって作業する者たちの作業速度も加速していく。


 圧倒的な効率で動き出す彼らを観察する視線が3つ。それぞれがそれぞれの思惑の持ってその行動を監視していた。


「流石の動きだね、やり慣れてるだけはある。」


「ここら辺にシェルター少ないのはあいつらのせいなんだ、」


 双眼鏡で全体の動きを把握するのは天谷と蘭香。綜馬は[カンジ]と[スコル]を使って細かい部分の監視をしている。地下鉄に作った拠点から続く、建物からシェルター1588を一望できるため、天谷達は地形の利を活かして行動できる。


 一方その頃嘉山達は、先遣隊を派遣してシェルター1588の状況を逐一確認しながら機を伺う。またと無いチャンス、一石二鳥を成功させるために絶好のタイミングで動けるように準備を進めていた。

 最終目標のために西城の組織されたもの達はいずれ減らして行かなければならない。うまくいけば、シェルター1588を傘下的な位置に置く事だってありえた。


 彼らは目を鋭くさせる。獲物を狙う捕食者として今か今かと見つめていた。

読んでいただきありがとうございます。


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