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自分だけ揚げ物が楽しめる世界  作者: ミツメ


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 別れるときに決めた集合時間と集合場所には天谷とミケアの二人が来ていた。綜馬はシェルター1501で作戦会議、蘭香は地下鉄内で魔石収集をしているため欠席した。

 お互いに情報共有をして今後の道筋を立てる。綜馬はシェルター1501と協力関係を結ぶことに成功し、色の濃い魔石を集められるように日々動いている。ミケアはその補助をしながら、研鑽を励む。蘭香と天谷はミノタウロスとの戦闘後、ダンジョン化しているエリアを減らしつつも魔石やダンジョン産の物資やアイテムはとれるように地下鉄ダンジョンを改築していた。

 天谷の【結界魔法】の効果で改築はうまくいっており、ミノタウロスが定期的に復活するエリアを作ってから、蘭香はその部屋に入り浸り戦いに明け暮れるようになってしまった。


「これ、帰ったら確認するね。」


 ミケアは綜馬が書いた近隣の勢力図、シェルターとダンジョンの位置関係を記した地図、今後の動きについての作戦案を受け取り、反対に天谷は次の予定の確認を行う。


「必要魔石量の算出は次までの終わらせておくから、分身かクラゲを連れてくるように言っといて。あと、あんまりここらの勢力争いは刺激しないようにとも。」


 天谷の計画では仲間を増やすのは時期尚早だった。シェルター1501にあるせん力はとても大きいと報告されているが、それがどれだけの確率で仲間になるのか、そして仲間になった時場合の色々を現時点で考えて抱えるほどの余裕はないと考えていた。

 ひとまずはミケアの抱える問題の解決。それを目標に動くのがすべてにとっていい。


「わかった。言っとく。今度は二人もかれぃ食べよう。」


「え?かれー!?」


 ミケアはそそくさと踵を返し天谷の問いに小さな頷きを送るだけで次の瞬間には姿を消していた。


「カレー食べたのかよ、」


 綜馬と離れてから貰った保存食ばかりの食事をしていた天谷は思わずため息が漏らした。


――――――――――――――――――――――――――――――


 包囲網の無くなったシェルター1501は今まで通りの活気を見せるようになっていく。包囲網が無くなる前日、ちょうど掲示板の内容更新の日でそのタイミングを狙ったように襲撃にあった。嘉山はやっとかという表情を見せて方々に指示を送る。事態はあっという間に鎮静化され、捕縛した数人に今回の事態について尋問しているらしい。

 隊長は包囲網が本当に解除されたのかや、今後の安全問題について動くため一昨日から姿を見ていない。索敵の終えた一部エリアであれば外に出られると発表されたのが昨日の昼の事で、嘉山が言うには明日には全面解除になるという話だった。


 物資に対する不安が無くなったため、綜馬への待遇が変わる可能性を危惧したがそんな様子は一切なく、寧ろカレーを振舞ってから日に日に綜馬への待遇という面は安定を見せていた。

 過剰な持ち上げもなく、催促もない。綜馬の存在を知っているのはごく一部の存在だが、綜馬の力を知ってこんな対応をされるのは珍しかった。


 嘉山と綜馬の間に結ばれた契約は嘉山は魔石の提供とシェルター機能の利用、綜馬は相応量の物資援助。魔石が多く色も濃ければそれなりのものを送る。一方的な援助ではない。落ち着きを取り戻した今日の昼頃、シェルター1501の住民たちには軍部関係者として軽く紹介され、これで正体不明の協力者から怪しい隣人へと格上げされた。


「一週間ごとの取引という事で。あと、カタログ的なもの作ってもいいですか?」


緊急時を明けて今後について今一度話し合いの場が設けられた。あらかたの部分は契約時と変わりなく、話し合いは終盤を迎えていた。

「カタログですか?」


「シェルター運営に必要な魔石は隊員が用意しているので、民間がとってくるものは一部のみ貰ってあとは各々に使い方任せてるんですよ。なのである程度綜馬君が用意する物資を厳選して個人でも買えるようにした方がみんな幸せかなと。」


 シェルター1501で参謀という役職に就く飯垣は、物資の管理や住民の生活水準向上について日々働いている。魔石がより多く集まるならと綜馬は了承し、飯垣と会議室に残りカタログの内容について話し合う事となった。


「それで、綜馬さん、」神妙な面持ちの飯垣は恐る恐るといった感じで綜馬との話し合いを進める。

「嗜好品の限度についてまず決めたいなと、」


「と、言いますと?」


「例えば、肉やか魚などは現時点の価値観的に嗜好品的な見方をされてます。栄養的にも配布されるサプリ系で補えるわけですし、頑張れば手に入りもします。ですがそれ以上の物。酒、煙草、甘味、口にする物以外でも香水や華美な衣服、言い出したらきりがありません。」


「自分的にはどのラインのものでも相応の魔石であればお譲りできますよ。寧ろ食品よりもそういう物の方が価値は低く見ていて、」


「なるほど。」飯垣は黙り込んで考え始める。これまで抑圧された生活を送ってきた人々にどこまでの娯楽を与えるべきなのか。人々の意思に介入するという罪悪感を覚えながらも、この調整無くてはシェルターという単位を管理するのは当然難しい。

 綜馬がもたらしたカレーと揚げ物でさえも大きな影響を与えており、様々な憶測が飛び交っている。嘉山たちは物資困窮を疑う住民たちに対して自分たちはここまで余裕があり豊かであると示すために備蓄の一部を開放したと説明しているが、食事のインパクトに色々な憶測が生まれるのは仕方ない事と理解していた。


 しかし今回やろうとしているのはそれ以上の内容。あの時代の商品が手に入りますよと言う事は、何か秘密を隠し持っていると自ら疑われに行く行為だった。嘉山が住民たちにも新しい喜びをと言わなければこんな計画するはず無かった。


 言い訳の仕方はいくつも思いつくため、建前でどうにか住民たちには納得してもらう必要はあるし、どこか疑問を抱いていたととしても住人たちは無理に掘り下げる事はないだろう。それは長い時間を費やして作った信頼関係の表れでもあり、疑問を胸にしまい込むことで得られる利益のおかげともいえる。


「それじゃ、こういうのはどうですか?」

 頭を抱える飯垣に綜馬は提案する。

「住民の方々に欲しいものを三つまで書いてもらってそこから選ぶんです。多数決風に見せてある程度コントロールするんです。それと、このシェルターでやってる組み分けを利用して、各組ごとに商品も変えるっていうやり方で、」


綜馬の提案に飯垣はなにか気付いたようで山積みになる資料から何かを探し始めた。このアイデアは上手くいくだろうなと綜馬は確信していた。なぜならこれは堂島がシェルター800で過去やっていた物資の援助システムだったから。郵便を使い物資や交流の行き来をしていたことで様々なものが手に入ったあそこでは、シェルター間の治安維持と協力関係増強のためにこのシステムを使っていた。


「それいいですね。不満も最小限に、物品の物々交換も盛んになりますし。何より不公平感が少ない。」


 飯垣は計画を進めましょうと動き始める。勢いに気圧された綜馬は頷き、一旦の作業を飯垣に任せた。

読んでいただきありがとうございます。


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