契約
短めです。
有栖という男は大変使い勝手が良かった。それは【契約魔法】の効果でもあるが、契約で縛る相手が無能であればそれば枠を無駄にしているだけ。
実際、西城が手綱を握っている犯罪者たちの殆どが気性が荒いだけで頭も悪ければ力も大した事がない。彼らは無法と呼べる現状に対して自由を手にしたと喜んでいるが、彼らの能力を見るところ真に法律に守られていたのは彼らだったのだろう。
吐き捨てたくなる彼らの武勇伝を聞き流しながら、檻の中にいる《犬》達をどう使おうか頭を悩ませる。西城が目指しているのは一つの国家を作り出す事。彼の力を知る人間はそれを夢ではなく、いつか訪れる未来だと思っている。西城自身も贔屓目なしで自分の願いは叶えられるだろうと思っている。
そのためにシェルター1501を崩壊させなければならなかった。‘裏クエスト’にはなんでもある。掲示板の機能には様々隠し機能があるようで、西城は秘密裏に管理者権限というのを手に入れていた。
管理者権限から見る‘裏クエスト’はより世界が広がっており、例えば多くのものが無駄にしているスキルという存在を獲得できたり、枠を増やす事ができる。当然魔法の習得や魔力の量も増やせるし、モンスター、シェルター機能の大幅拡張、そして人など。
得られるものの大きさに比例するように掲示板が要求するものは大きくなる。それは魔石やモンスターの討伐、ダンジョンの攻略といったわかりやすいものから、人の命、魔力、他シェルターへの損害、破壊など多岐に渡る。
西城が目指している未来のために今手にしたいものは土地の拡張だった。約1キロ感覚に置かれたシェルターはその核が破壊される事で完全に機能を停止させる。そうした場合、近隣のシェルターは土地の拡張ができるようになる。しかし、それもただではない。その土地で最も力を持っている必要があるのだ。
その土地というのは曖昧な線引きで、その部分は神のみぞ知る領域なのだが、西城が居を構えるこのエリアではシェルター1501が最も強い存在として認定されている。
せっかくなら破壊してしまえとも思ったが、彼らはとても優秀だ。目の前で堕落している《犬》とは比較できないほどに。一般市民達も大して役に立たない。強さと従順さは中々両立しないらしい。けれど、あのシェルターにはそれが両立する物が沢山いる。
西城は勝ちを確信していた。そして、今は時間のかかるその件より別件に興味が湧いていた。モンスターを呼び出す少年。報告で聞いたその存在になぜ取り逃がしたのだと報告役の男を殴りつける。
モンスターを使役できる存在がいる事は知っていたが、その存在が自分の下に来れば西城の求める世界へその道のりはぐっと短くなる。馬鹿な奴らはその周りにいた若い女に興奮している様子だったから、久しぶりに人狩りを許可した。【探知魔法】を使えばいかなる存在でも見つけられる。しかしそのためには魔力のほかに探すための触媒が必要となり、そして探知対象に触れていたり近しい何かを使う必要があった。
西城はシェルターの監視をする者たちを呼び集め、件の少年たちを見た者達を部屋に呼んだ。その中の一人、ボーっとした様子の男を拘束し、その男の目に手を突っ込むとそれを使い【探知魔法】を発動した。
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神妙な様子で戻ってきた嘉山たちを見て綜馬は大人の振る舞いというものを感じさせられた。結果は決まっていて、彼らが今か目の前で行おうとする一芝居も知っているが、嘉山たちはそんな予感をさせることなく、時間が来たから話は纏まってないから来ましたと言わんばかりの表情を浮かべていた。
「すいません、お待たせしました。」
綜馬はさっき聞いたばかりの流れを頭の中で読み返す。まず、嘉山が一晩時間をくれと催促し、一旦話は持ち帰る事になる。部屋の用意の件は許可が下りるため、隊長がそこまで案内するのだがその間に自分達の隊にだけ協力してくれないかと隊長は提案してくる。その中で現体制へ不満を持っていることを打ち明け、綜馬の考えを聞こうというものだ。
彼ら自身、その最大の戦闘能力である自衛隊が敵からの脅威になっている自覚は強い。そんな脅威が自分の味方になると唆された時、綜馬という男の意思を確認できると踏んでいる。
このテストはあくまでも綜馬の判断力や、理解力の部分に重きを置いているため、結果の部分はたいして重要じゃない。ただ、こんな今日であったような人間の暗躍にただ簡単に乗るような人間だった場合、連れていかれる部屋は何かしらの細工がされた牢獄になるだろう。
ただ、このテストに対して綜馬は答えを出すつもりはなかった。
「それで、今回の件そう簡単に進められる案件ではなく、一晩お時間をいただけないかと、」
「それなら話は無しだ。別にこっちはどうしてもじゃない。対等な交渉の方が楽だからそうしているだけであって、」
綜馬は表情を作り上げる。自分が自分であるために、そして自分が手の届く範囲を助けられるように交渉は強気な姿勢で挑む。ここに来るとき決めた事だった。
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