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投稿頻度安定出来ずすいません、もうしばらく不定期でよろしくお願いします。

 中級ダンジョンには主がいる。これが初級ダンジョンとの決定的な違い。階層の数や未踏破エリアの多さなども違いとして上げられることはあるが、ダンジョン側が作り出した一目瞭然の変化。それが主と言われるモンスターの存在だ。階層ごとに用意された主はランダムスポーンのように回避可能な相手ではない。

 倒さなければ次へ進むことはできない。戦いを挑めば勝つか負けるかの二択を押し付けられる。誰か一人でも死亡した場合のみ、来た道に戻れる扉が開くが追跡の手が止むことは殆どない。


 このダンジョン主、またの名を階層主の討伐が堂島ひいては合同ダンジョンアタックの最終目標だった。冬弥は後続隊だったため先陣を切った堂島班の状況は理解できていなかったようで、天谷を守るために探し続けていたが逃げ惑う多くの者の意見によって期間を余儀なくされたらしい。

 その後二度ほどダンジョンに単独で潜ろうとしたが、様々な問題から不可能と判断し、堂島から告げられた、何かあったら俺らの居場所を守ってくれという最後の言葉を守るためにシェルター800に滞在していたという話だった。


 つまり綜馬がこれから足を踏み入れようとしている場所は最悪の始まりであり、帰還者のいない暗闇。生唾をゴクリと飲み込み、瓦解しそうな緊張の受け皿を保たせようと必死だ。


「じゃあ行くよ、ソーマ。」


 ミケアは日常に流れる一連の動作みたいに、軽快な一歩を踏み出す。そのいつも通りの在り方が綜馬の平常心を呼び覚ます。


「うん。行こう。」


 ダンジョン主との戦闘経験も何が起こるのか事前知識も持ち合わせていない二人は、無知というある意味最も心理武装された状態で20階層への階段を駆け下りた。


 20階層に足を下ろした瞬間に戦闘が発生する覚悟だった二人は、20階層に到着してからしばらくの間その場動くことが出来なかった。弓を構えて耳を澄ますミケアと[朔]の八割分身を召喚する綜馬。何が違和感かもわからない状況でどんな情報すらも聞き漏らさないという覚悟で意識を研ぐ。


 1分、2分と、静寂が全身を覆い、空気が馴染み始めた頃目的がここにいない事を悟った。


「どうするミケア?一旦19階層戻って拠点用意する?」


綜馬の考えは至って当然のものであり、20階層が探索可能であるとわかったため、危険度の低い場所に拠点を用意し有利に探索を薦めるのが最も効率的であり、ポテンシャルも発揮できるだろう。ミケアも綜馬とおおむね同じ意見だったようで、頷きを返してから身を翻し、階段に足をかけようとした。


 しかし、


「あれ、ソーマ、ダメだ。足が地面につかない。」


 ミケアの足は空を踏んですかすだけ。一向に進む気配がない。綜馬も試してみるが、ミケアと同じように空振りに終わる。

二人はここで理解した。自分たちは死の境界に立たされていたことを。20階層丸ごと主のエリアであり一度足を踏み入れた瞬間から、戦いの舞台へ上がったことになる。


「どうする、ソーマ。」


「とりあえず、カンジを二羽追加で呼ぶよ。あわよくば相手の位置を確認したい。」


「わかった、」


何も情報を持たない二人が今できる事はとにかく情報を集める事。主はどんな姿をしているのか、一体なのか複数いるのか、主以外のモンスターは湧いているのか。綜馬たちはこのエリアの現状に飢えていた。


――――――――――――――――――――――――――――――


 レオが視認すると同時にそのモンスターは跡形もなく爆ぜて消える。その場所には魔石だけが残る。そんな光景がダンジョンに潜ってからひっきりなしに行われている。


 冬弥の圧倒的な力を前に雑魚は存在すら許されない。あまりの強さに、冬弥の力を初めて見る二人は思わず言葉を失った。

 久しぶりの全員でダンジョン探索に冬弥も加わり、今後の方針を決めるためにもとりあえず冬弥の能力を共有しておこうという話になり、シェルター813からは少しだけ離れたフィールドダンジョンへ訪れた一行。


 岩山のような環境は剥き出しの岩肌と冷たい強風が襲いかかる。遮蔽や立体物も多いためフィールドダンジョンの中では拠点を用意しやすいが、その分死角や物陰が多く突然の遭遇に気をつけなければならない。


 冬弥の後ろに続くレオ達は流れのまま3階層まで進んでいた。その間冬弥を除く4人が戦闘したのは、撃ち漏らした手負いのサンドラビットが岩陰に隠れ、偶々しゅんがそれを仕留めた程度。

 彼ら4人は魔石を拾い集めるという動作を繰り返すだけ。カホの持つ魔石用の鞄にはいつもの探索で3時間かけて集める量の魔石が溜まっていた。


 3階層に辿り着くまで、1時間程度しか経過していなかった。


「いや、やばすぎでしょ冬弥。」


 しゅんは最初の戦闘から感銘を受けっぱなしだ。生物としての差というのを思い知らされたような、ある種信仰に近いような表情を浮かべていた。


「これで、人数集まらなくても初級ダンジョンの中階層くらいは回れるよね。」


 レオの言葉にみんな頷く。当の冬弥は純粋な賞賛を向けられ続けたせいか少しだけ恥ずかしそうな振る舞いを見せていた。


「それじゃあ、一旦試しに3人で戦ってみよう。2人はここに仮拠点を建てるって感じで。」

 レオの指示で5人はじゃんけんの手を出す。


「最初はグー、じゃんけん、ポン!」


 しゅんの掛け声に合わせてそれぞれが手を出して最初の組み合わせが出来た。


「よろしくね冬弥くん、」


「とうやんいるなら余裕だね。」


 冬弥、カホ、ララの3人は、それぞれの能力を伝えながらどこに向かうか話し合う。万が一の可能性も考え、5階層までという区切りを設けている。

 今から3時間後、レオとしゅんの用意した拠点に戻ってくるも約束をして3人は5階層へ向けて出発した。


――――――――――――――――――――――――――――――

 [シェルター813 旧山本宅]


 議長の石田、木原は杉の一枚板テーブルを介してある1人の男と会っていた。


「それで羽間さん、あの件なんですが、」


「石田さんは気が早いですね、もう少し雑談でも挟むのかと。」


「普段ならいくらでも無駄話しますが、今回ばかりはどうにも。」


「そうですよ羽間さん。あまり僕たちを焦らさないでくださいよ。」


 議長の中で最年少の木原は鼻息を荒らしながら前のめりになる。

 2人のそんな様子を目にして、羽間は観念しましたとおどけて笑い、口を開いた。


「この前お話しした掲示板に掲載される‘裏クエスト’はご確認されましたか?」


「はい!もちろん!お話しいただいたあの日のうちに僕が!」


「内容がわかるものから、文字化けでわからないものもあったと思いますが、中でも報酬が高い内容があったのは覚えていますかね?」


「あぁー、えーっと、」


「どうなんだ木原、覚えてないのか。」


 木原は何も描かれていないはずの空を見あげながら記憶を辿っている。頼りない木原に石田はやや語気を荒げながら問う。しかし、木原はどうにも出来なそうなまま状態は変わらない。


「まぁ、石田さん落ち着いてください。また後で確認していただければいい話ですから。本題はここからです。」


 羽間は大胆に間を使いながら2人の意識を自らの発言に集める。


「‘裏クエスト’には様々な内容があるのは木原君も見たと思います。ここでは言うのが憚れるような非道なものから、なぜこの程度のものまでいう、範囲はとてもバラバラです。しかし、報酬の高さには規則性があります。それは、どれだけ人命を消費したのか、または消費する可能性を与えたかというものです。」


「もしかしてそれが!」


「はい。この前お話ししたシェルターの大きさを倍以上に保った状態を半永久的に続けられる可能性というものです。現在でも利用されているクエストでも魔石やモンスターの討伐を必要としないものがありますよね?」


「あぁ、確かあったな。」


「効果を持続させるようなものから、使い切りや、一度クリアしたら暫く効果が続いたり、終わりが来ない影響を得るものも。」


「住居の水道とか、確かに最初のミッション以降何もしてないな。」


「それらと同じようにシェルターの拡張を維持できるんです。今は、魔石を大量に消費したりシェルター側の出す緊急ミッションをこなしてですが、」


「羽間さん、はっきり言ってください。つまり、そういう事なんですよね。」


「そうですね。‘裏クエスト’を受けた段階で他のシェルターを襲い、核、又はシェルターの機能を破壊した場合大きな恩恵を得られるというわけです。」

 

 

 

 

読んでいただきありがとうございます。


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