3水
「おい。お前本当に俺の話聞いてんのかぁ?俺はお前の事を思って……。」
雑音。
(早く説教終らへんかな。)
「お前、他所から来たんだろ?あそこは都会だから、さぞかしこんな田舎は合わないか。」
一瞬、反応してしまう。下を向いていた眼が、どこか遠くを見つめる。
「ぁ……。夏だ。」
「お前……!」
(やべ……!)
――――――――――――
「夏までごめんなぁ。」
「いいよ。どうせ暇だし。」
炎天下。話を聞いていない罰でプール掃除をさせられる。
「先生も、先生やで。こんなひっろいプールを子供一人に任せるかぁ?」
ブラシに顎を乗せて言う。
「そうだよね。ここの学校狂ってる。」
「だよなぁ……!」
海の方をなんとなく見る。黒のゴムで髪を結んでいた。
「だからか。」
「ん。何?」
自然と口に出してしまった
「なんかいつもと違うなって。」
「あー、そ。くくってみた。」
ニッと笑う海。暑さを忘れてしまう程綺麗だった。
「ぶわ!」
いきなり透明な水をかけられる。海はホースを持ってニマニマしてる。
「何すんだ、よ!」
海に勢いよくとびかかる。
「いって!」
当たった衝撃でホースが、無重力かのように宙を舞う。
二人に水がかかる。
お互いに見つめ合う。
「あはは!」
「ぶはは!」
シャツとズボンが大胆に濡れた。
「ちょっと、ずぶ濡れじゃん!」
「だはは!おもしろ!」
入道雲と青い空、太陽に反射する水が綺麗だった。
―――――――
「あ〜。涼し〜。」
黄昏時。自転車の二人乗りで下校した。海の透き通る様な髪が流れる。