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海夏  作者: あ行
2/11

2長髪

「あ、海。」

 話しかけようと手を伸ばす。しかし、誰かと話している様だ。海は俯いている。

 後で話そ。

――――――――――――

 先生の説教が終わった。教室に戻る。すると、夏が誰もいない教室で、一人座りでじっとどっかを見ている。

「夏、」

 呼びかけても返事が来ない。

「おい、夏!」

 はっと意識が戻った様にこちらを向く。

「ぁあ。ごめん。」

 たははと横で笑われる。

「ほんとに大丈夫?最近、やたらと多いで。」

「ほんと〜?気をつけなくちゃな。」

 他人事みたく言われる。ほんとに心配しとるのに。

「ぁ。さっき先生と話してただろ。また髪の事?」

 話題を変えられた。

「うん。そうやけど、ほんまあの先生うるさい。髪ぐらい自由にさせて欲しい。あのはげ〜!」

 ぐっと拳に力を入れる。

「あはは。はげって。海の髪が羨ましいだけなんじゃない?海の髪綺麗だから。」

 何気なく恥ずかしい事を、さらっと言われる。少し戸惑う。

「いいやろ。」

 海が髪を態となびかせる。埃っぽい教室に二人の会話が響き渡る。

「触ってみる?」

「うん。」

 冗談で言ったつもりが夏は承諾するなんて。まぁいいか。

「ほら。」

 夏に顔を近づける。夏の匂いがする。

「わぁ……!すごい。綿糸みたいだ。」

 眼を輝かせて髪を触ってくる。

「はは。綿糸って。」

 夏の手が段々頭の方へ移動する。頭を撫でられる。

「?」

 撫でられているという意識はなかった。

「あ……!ごめん。なんか撫でちゃった。」

「んふふー。僕の髪に見惚れたな?夏の髪も触らせろ!」

 強引に頭をかきむしゃられる。

「わ!ちょっ、やめてよ!」

 笑いながら言う。

「お返しだー!」

 お互いの髪をぐしゃぐしゃにして、訳の分からないことになった。


 一旦静かになる。

「ぶはは!おかしー!」

「あはは!海もね!」

 二人で散々笑い合った。

「はぁ……。直そ。」

 一息満足げのあるため息をつく。海の髪を手でとかす。

 (あっ、いいこと思いついた。)

「あっ、なんか悪い事企んでるだろ〜。」

「っぅえ!?そんな事ないよ。」

 うまく誤魔化せたか。

――――――――――

「……。なんやこれ……。」

 海がスマホのカメラを自分に向けて見ている。そこには無造作に結ばれた髪があった。

「芸術品だよ。」

「なんでちょっと誇らしげなん。」

 続けて海が言う。

「てか、どこでそんな大量のヘアゴムがあんねん。」

「多分妹のイタズラ。」

 夏はこう見えて立派な兄だ。

「あー。それなら想像がつくな。」

 海がいきなり俺の方へ向く。

「何。」

 嫌な予感。

「お返しや〜!」

「うわ〜。」

――――――――――

「ふはは!傑作や!」

「……。」

 ツインテールになっている。

 下校。

「え。そのまま帰るの。」

「うん。夏の芸術なんやろ。」

 揶揄った顔で言われる。夕陽が海にもたれかかる。

「海がいいならいいけど。」

 ぴょんぴょんと海が一歩一歩、歩く度に髪が跳ねる。

「あはは!」

「なんや〜?」

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