絆、そして道標
「翔太の魔法・・・それはきっと絆の魔法よ!」
「絆の魔法?」
なんだかあまり魔法というイメージは持てないが・・・
どういうことだ?と翔太とガレオンはリゼの言葉を促す。
「翔太が使ったあの白いオーラ、あれが私に包まれた時に、翔太との繋がり・・・絆みたいなものを感じたって言ったでしょう?」
最初の黒煙の怪物と対峙した時に起きた、あの現象だ
「ああ・・・。何か繋がったなって感覚になって・・・」
「その後の私の魔法、《業火の舞》は、普段の威力とは桁違いだった」
あの赤と青の炎の火柱の魔法、あれはかなり強化されていた・・・?
「そして、さっき翔太はこの《業火の舞》を使ってみせた」
ふむ・・・とガレオンは考え込んでいる
「他者との絆が生まれた時、相手の魔力を増幅させ、さらに自身は繋がった者の魔法をも行使できる・・・と?」
まだ仮説だから検証が必要だけどね、とリゼは続ける。
「あの時、私は死を覚悟していたわ。その時に翔太が現れて・・・藁にもすがる思いだった。翔太と目が合った時に、上手くいえないのだけど・・・安心感というか、任せられるって思ったの」
「俺もリゼを守らなきゃ・・・なんとしてでも助ける!って感覚だったな」
「そしてお互いが白いオーラに包まれた。さっき翔太が魔法を使った時もこのオーラをまとっていたでしょう?」
「ああ。だけどさっきの戦いでは、リゼにはオーラは纏っていなかったよな」
「・・・今、オーラを纏わずに魔法は使える?」
リゼは翔太に魔法を使うように促す
「えっと・・・、こうだったっけ・・・?」
翔太は先ほどの戦いを思い出しながら、両腕を伸ばしイメージを思い描く
「・・・・うーん・・・・なんか出る気がしないな・・・。」
魔力というものはまだよくわからないが、湧き上がってくるものを今は感じなかった。
「つまり、白いオーラは翔太が魔法を使うための条件で・・・オーラを纏っている間は絆を結んだ人の魔法が使える・・・ってことかもしれないわ」
それにね、とリゼは続ける
「伝承にある4つの宝石の繋がり・・・この繋がりが今脅かされているとしたら・・・」
「繋がり・・・宝石の「絆」を守るため、英雄様がこの地に来られた・・・?」
「俺がこの世界に来た時の記憶はないというか、思い出せないんだけど・・・。この魔法が「絆」だったとして、俺が絆の魔法を使えるっていうことと、伝承がこんなにリンクしてるっていうのは、なんだか出来過ぎな気もするが・・・。」
俺がこの世界に来た理由、この伝承を辿っていけばわかるかもしれない。
だがその前に、魔法のことやこの世界のこと・・・。知らないことが多すぎる・・・!
「リゼ、ガレオンさん。俺はこの世界のことは全然知らない。きっとみんなが当たり前と思ってることも俺にはわからないことが多いと思う。」
翔太は続ける
「だから、俺にこの世界のことを教えてくれないか?・・・この世界を守るために」
翔太は決意する。自分の役割を、自分の進むべき道を知り、世界を救ってみせると。
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同刻、とある地にて—
「そうか、火の地に降り立ったか・・・。」
黒のローブを纏った男は手に持った大きな水晶を覗き込みながら呟く
「絆・・・ねぇ。なるほどなるほど・・・」
くくく・・・と笑いを堪えるような声を出し、水晶に映る翔太を、そしてリゼを眺めながら
「彼女が選んだなら、間違いないだろう。・・・さぁ、いよいよだ・・・」
笑みをこぼしながら、水晶を握りしめる。その手からは黒煙が立ち上っていた・・・