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これってまさか異世界転生!?  作者: さくまそう
序章
3/20

導き、そして秘める決意

リゼの目は翔太をしっかりと見つめていた。その緑の瞳には深い信頼と感謝が滲んでいた。


「さっきも少し話したけど、このエルシオン大陸には、何世代にもわたる古の伝説や予言が数多く存在するの」


「異世界からの訪問者と、この大陸の住人が特別な力を持つって話か?」


「そう。その伝説の中では、『異世界からの使者が現れ、大陸の危機を救う』というものがあるの」


「・・伝説の通りなら、俺がその使者ってことか・・・?」


「それはまだわからないけれど、でも翔太が持つ力、私たちの間に感じたこの絆のような力、これは単なる偶然だけでは説明できないと思う」


翔太は思考に沈んでしまった。


古の予言や伝説・・・。魔法がある世界のなかに突如として飛ばされてきた俺の中ではまだまだ理解が追い付いていなかった。


これが異世界への転生だとしたら・・・俺はリゼの言う通り運命というものに導かれているのかもしれない。なぜ俺なんだ・・・?


翔太の中ではまだ受け入れるのが難しく、様々な思考がよぎり、困惑が増していた。


翔太がリゼに質問を投げかけようとする。その時突如森の奥から大きな轟音と共に黒煙が上がってきた。


「あれは…!」


「まさか・・・!まだ黒煙の怪物が・・・!」


轟音の中に、悲鳴のような音、何かか壊れる音・・・地鳴りのような唸り声が聞こえる


「村が襲われてるのか・・!?」


「急がなきゃ・・・!翔太もついてきて!」


有無を言わせないリゼの迫力。だが否定する理由はない。


翔太は強くうなずき、リゼとともに駆け出した。


「《加速(かそく)》するわよ!」


リゼは魔法の杖を取り出し、森の中を高速で駆け抜ける魔法を使い、速度を上げる。翔太自身にも魔法をかけてくれたようで、翔太の足取りは空を飛ぶような軽さになった。


翔太は慣れない体の軽さに気を付けながらも、リゼのあとに続き黒煙の方向へと進んだ。


村にたどり着くと、先ほどの黒煙の怪物が村の近くで暴れている。


オオカミのような体躯で、その見た目には似つかわしくないズシンズシンと足音を響かせながら、村の中へと進んでいく。


家屋などその場にないように進み、そのまま家屋を踏み潰す。村人たちは悲鳴をあげ、どんどんと村の奥へと逃げ込んでいく。


村人のなかには魔法を黒煙の怪物に向けて放っているものもいるようだが、どれも効果がなさそうであった。


「くそ・・!助けなきゃ!!」


翔太が飛び出そうとする。村人たちの命を守らなければという正義感が翔太の中から湧き上がる。


《加速》の勢いのまま黒煙の怪物に向けて突撃し、全力でのドロップキックをお見舞いする


「うおおおおおおおお!」


翔太は武道などからっきしであったが、いじめたちに立ち向かう際にもみ合いになることも少なくなかった。その時身に着けた唯一の得意技にして捨て身の大技だ。


バキィ!と枝が折れるような音と共に、黒煙の怪物の顔面にヒット!手ごたえはある


よし!と思ったとたん、翔太は地面にたたきつけられていた


「ぐぅ・・・・・・!」


翔太の一撃は確かに黒煙の怪物の顔面をとらえていたが、行動不能にするようなダメージはなく、カウンターをもらったのだ


「翔太!!!・・・《焰護の障壁(えんごのしょうへき)》!!!!」


リゼは杖を操り翔太へと向けると、杖の先から紅蓮の炎が放たれ、一瞬で地面をなめあげながら立ち昇り、翔太やリゼの周りに炎の壁を作り出した。


黒煙の怪物が倒れた翔太めがけて腕を振り下ろそうと襲い掛かるも、その炎の壁に触れるなり、黒煙の怪物は猛烈な熱によって腕を焼かれ、唸り声をあげ後退した


「ハァ・・ハァ・・・・助かった・・・ありがとうリゼ・・・!」


轟々と燃え上がっている炎の壁だが、不思議と熱さは感じない・・・。これが魔法なんだな・・・


リゼが翔太に近づきながら


「これで一時的に動きを止めることができるけれど、結界は長くはもたないわ・・・!」


リゼは全身に力を込めてこの炎の魔法を維持しているようだった


黒煙の怪物もじりじりと炎の壁と距離を測りながら、結界が弱体化するのをまっているようだった


「翔太・・・!翔太!!お願い!さっきのあなたの力をかして・・・・!!!」


リゼの言葉に我に返り、冷静さを取り戻した翔太は


「ああ・・・!やってみる・・・!」


深呼吸をして、先ほど感じた奇妙な感覚を再び探ろうとした。


体の中から飛び出してくる、あの感覚を・・・・!


翔太の体から白いオーラが立ち上る・・・!


「・・・あっ、ダメ…っ!!」


見上げると、焰護の障壁が揺らいでいる。


黒煙の怪物は大きい口を横に拡げ、まるでにやつくかのような表情で腕を振りかざす


パキパキ・・・パリン!!!!とガラスが砕け散るような音とともに、焰護の障壁は崩れ去ってしまった


「くっ・・・《業火の・・・》」


リゼが魔法を唱えようとした瞬間、黒煙の怪物は大きな咆哮をあげる


「ガグオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


その咆哮は衝撃波となりリゼを襲い、吹き飛ばす


「キャアアアアアッ」


リゼの華奢な体が吹き飛ばされ地面に転がる


黒煙の怪物はそのままリゼに突撃し踏み潰そうと身構える


ドクン…!翔太の中で「何か」が爆ぜた


「リゼエエエエエェェ!!!!」


翔太は我を忘れ黒煙の怪物に対し両腕を構える。


「このやろおおおおおおおおぉぉ!!」


翔太の雄たけびと共に、両腕から赤と青の炎が生まれ、黒煙の怪物に向けて放たれる


たちまち黒煙の怪物を赤と青の炎が取り囲み、火柱をあげる。


何が起きたのかを理解する前に、黒煙の怪物は灰となり、消滅した。


こ・・・これは一体・・・?これはさっきリゼが使った魔法・・・ッ


リゼは…?リゼは無事か…!?


「リゼ!!!リゼ!!!!!!」


翔太はリゼのもとに駆け寄る


「・・・・だ、だいじょうぶよ」


リゼは倒れた体をゆっくりと起こしながら、はにかんで答えた


「・・・よかった・・・・・・よかったぁぁ」


腰が抜けてしまったように翔太がその場に座り込む


「今のは・・・あなたも《業火の舞(ごうかのまい)》が使えるの・・・?」


翔太は安堵の表情を浮かべながらも否定する


「俺も・・・よくわかわらないんだ・・・リゼを守らなきゃって思ったら、さっきリゼが使ってた魔法が頭によぎって・・・そこからはもう無意識というか無我夢中というか・・・」


翔太は白いオーラも含めて魔法なんてつかったこともないし、見たことがあると言ってもゲームや漫画・アニメの世界でしかみたことがない。ただの一般人だ


「もしかしたら、あなたの魔法は・・・」


リゼが言葉を紡ごうとしたとき、村の方から大歓声が聞こえてきた。


黒煙の怪物に襲われていた村人たちは、翔太たちの活躍に驚きと感謝の声を上げ、翔太とリゼに感謝の言葉を伝えてきた。


村人の中の一人、少しふくよかな、しかし威厳のある顔つきの男が近づいてきた。


「リゼ・・・!無事だったか・・・・!お前たちが守ってくれたんだな」


「ガレオン!!村のみんなは無事??」


「ああ。けが人はいるが、今薬草と《回復》で手当てしているところだ」


「そう・・・・よかった・・・。よかったあぁ・・・」


リゼはようやく安心したのか、その緑の瞳には涙をためて安堵の息をはいていた


「この村を守ったのは、この『異世界からの英雄』よ!」


「『異世界からの英雄』!?この少年がか・・・!?」


ガレオンは驚いた様子で翔太をまじまじと眺める。そしてうなずきながら


「なるほど・・・。どおりで先ほどの魔法の威力だったわけだ・・・。」


翔太「あの・・・」


翔太が気まずそうに言葉を切り出す


「ほんと、自分でもなにやったかわかってなくって・・・英雄なんて大それたものじゃないと思うのですが・・・!」


リゼが笑う


「こんなところで謙遜しなくっていいわよ!英雄様っ」


「みな!英雄だ!英雄様が来られたぞ!!!」


ガレオンはハッハッハと大きく笑いながら村のみんなのもとへと駆けていった


「あらあら、これから大変そうよ?英雄様?」


「俺をからかってるだろ・・・!まったく・・・」


翔太はからかってくるリゼをかわいいなぁと思いながらも心に決意を込めていた


「俺が一体何でこんなことになってるか、なにもわかんないけど・・・」


翔太はこぶしを握り締める。


「この世界の人を助けられるなら、なんだってやってやるさ」


過去の記憶を振り払うかのように、決意を胸に村へと入っていった。


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