邂逅、そして自己紹介
翔太は少女を見て、戸惑いを隠せない表情で言った。
「異世界って、実際にあるんだな…???」
少女は翔太の驚きを見て、少しホッとしたようすで話しはじめた。
「助けてくれてありがとう…。もうダメかと思っていたの……あはは…」
少女は力が抜けたのかへなへなと座り込んでいる。
「私はリゼっていうの……あなたは……」
リゼか質問をしようとするが、翔太の考え込んでいる様子を見て言葉を止める
「魔法って実在するんだな・・・」
リゼは不思議そうな顔で質問をする
「あなたの世界では魔法はないの・・・?」
翔太「ああ、こんな何もないところで火をおこしたりはできないかな・・・」
「魔法を使ったことがないのに、さっきの私たちがまとった白いオーラは一体・・・?安心感というか繋がりというか…そんなものを感じたのよ。」
「俺自身も、いったい何が起きたかはさっぱりで・・・」
リゼは考えながら言葉を選んだ。
「うーん、魔法も知らない、突然異世界から来たかも?という人間・・・。まるで…運命のようなもの?なのかもしれないわね」
「運命?」
リゼは記憶を辿るように、言葉を紡ぐ
「ええ。エルシオン大陸に伝わる古い話に、異世界からの訪問者についてと、その訪問者がこの大陸の住人に対して特別な力を持つっていう伝承が伝わっているの」
翔太は半信半疑の表情で答えた。
「運命か…。それは大げさな…でも、さっきのあの力は、確かに普通じゃなかったような気がする。」
リゼは思案するように黙って、俯き、悩んでいる様子だった。
心配になり翔太が声をかけようと近づく…
もしかしたら、この人が…っ
リゼはバッと顔を上げると真剣な表情で翔太の手を取り、懇願するように言った。
「ねえ……あなたの助けが必要なの…!」
「え?!…ど、どういうことだよ」
翔太は見た目がとてもきれいなリゼに手を握られしどろもどろになりながらも答えた。
「さっきの黒煙の怪物。このエルシオン大陸に突如として現れて各地を荒らしているの・・・対処法もまだしっかりとは見つかっていなくって。」
リゼは目を伏せ涙ぐみながら話を続ける
「…王国騎士団や各国の傭兵団、冒険者連盟が対応しているけど数が多すぎて追い切れていなくて・・・私の故郷も・・・」
「!!・・・リゼの故郷も・・・。」
翔太はもともと正義感が強い男ではあった。
が、出る杭は打たれるというように、彼が元の世界でいじめや横暴に立ち向かった際、誰も手を差し伸べてはくれなかった。
それだけでなく彼が助けた人たちにまで非難されるなど、正義感を振りかざすといいことはないと学んでいた。
そんな過去がありながらも、先ほどの黒煙の怪物に激しい怒りを覚えていることに気が付いた。
今知り合ったこの少女のことは、まだ何も知らない。しかし彼女が恐怖し、怒り、故郷を失ったという事実に憤りを抑えられなかった。
翔太はリゼの目を見つめて答えた。
「正直、まだ何ができるかとか、俺のこの力?のことは何もわからない。だけど、リゼを助けたい。俺にできることを教えてくれ!」
リゼは翔太の手を強く握った。
「ありがとう・・・!」
二人は見つめあい、そして、距離が近いことを思い出し慌てて向きなおった
「改めて、私はリゼ。……リゼ・ヴァルフォーレ。今はこの近くの村にすませてもらってるの」
「俺は、えーっと…翔太。藍原翔太だ。日本ってところから来た異世界人・・・でいいのかな?改めてよろしく」