第10話:魂
負傷者を運べー!!
《回復》を使える者は後方テントにいってくれ!
おーい!こっちに誰か倒れてる!
前線での戦いは、メレディアの魔法と翔太の活躍により終息を見せていた
しかし、別方面での迎撃戦は未だ苛烈を極めていた
翔太が巨人ネビュロスを撃破したちょうどその頃、国土魔法陣による防護結界が発動
国全体を包む、巨大な魔法のドームが現れ、ネビュロスの攻撃を防いでいた
ネビュロスの残りを掃討するため、前線にいた冒険者や騎士団、傭兵たちは戦場へと駆けていった
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「・・・・・・・・・ねぇ、聞こえる?」
翔太はぼんやりとした意識の中、女の子の声を聞いた
「・・・リゼ・・・?セリアか・・・?」
「・・・ううん、違うわ。でもよかった、声がようやく届いたのね」
「誰・・・?」
「私はあなた。あなたは私なの」
「・・・ちょっとよくわからない・・・」
「だよね、えっとね・・・なんていったらいいのかな・・・うーん」
声の主は、自身の存在をどう伝えようか悩んでいるようだった
翔太は白い視界の中、辺りを見渡す。声の主を探してみるが、見つからない
「まだ、会うのは当分先かな。その時には・・・全てわかるよ」
「俺をこの世界に呼んだのも、君?」
「うん。突然でごめんね」
「どうして俺を呼んだんだ?」
「・・・魂の形が似てたから、かな」
「魂の形・・・?」
「そう。魔法はね、魂の力なんだ。この世界の人たちは魂に魔力が宿る。そして身体という器を通して魔法を発現させているんだよ」
「でも俺はこの世界の人間じゃない・・・」
「そうだね。実は私だってそうなんだよ」
声の主は懐かしそうに、少しはにかんでいるようなそんな声で話を続ける
「私の出身も日本。君と同じだね」
「じゃあ、君も転生者?」
「そういうことになるかな。この世界に突然やってきて、訳もわからず魔法が使えて、魔物たちと戦って・・・そして魔王を倒した」
「魔王・・・それってこの世界の古典に出てくる、あの?」
「そうだね。今の歴史ではそういうことかな」
「君はどうしてこの世界で魔法を使えたの?俺は使えなかったけど・・・」
「私は女神に直接呼ばれた時に、身体をこの世界仕様にしてもらって、魔法を授けてもらったからかな」
「じゃあ、俺が使ってるこの力は・・・」
「私の魔法だよ。君の身体や魂はこの世界仕様に変換されてないから、私の魂を重ねて、変換させてもらってるの」
「・・・身体を変換させてた・・・」
「うん。勝手にごめんね?」
声の主は、申し訳なさそうに謝る。
「何か・・・目的があるんだよね?」
「うん・・・。でもそれはまだ言えない。」
「そっか・・・でも、君が戦う力をくれたおかげで、リゼたちを守ることができた。ありがとう」
翔太がお礼を言うと、声の主は言葉が詰まったようになる
「・・・っ。ごめんね、色々勝手で」
何か、目的があるんだろう。だが翔太は気にならなかった。これまでこの声の主に助けられていたことがわかった、それで十分だった。
「他者を回復させたり、魔力の増幅をさせたり、その時の魔法を使うことができるのは、君の力なの?」
「そう。この魔法の名前はーーーーー《白響霊絆》私だけのオリジナル、独創魔法だよ」
「《白響霊絆》・・・」
「自身の魂の力を増幅させることで、魔法の威力をあげたり身体の治癒速度を向上させることができる。そして、他者と繋がることで、相手にも同じ恩恵を与え、その恩恵の代わりに相手の魔法を魔力ごと貰うことができる魔法。・・・これってほんとチートだよね」
声の主は笑っている
「・・・今教えられるのはここまで。あまり知りすぎるとあなたの魂が壊れちゃうからね」
声がどんどん遠のいていく
「また会おうね、翔太。私はそばにいるから・・・」
「待って・・・まだ聞きたいことが・・・」
ぼんやりとした思考の中、別の声が聞こえてきた
「翔太!!お願い起きて!!!」
「目を開けてよ!翔太!!」
・・・ああ、そうだ俺はまだ戦っているところだった・・・・・・
翔太は白の世界から徐々に現実の世界へと意識が戻っていく・・・
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「う・・・」
「翔太!!!大丈夫!?!?」
「翔太―!!」
翔太がぼんやりと目を開けると、涙目になっているリゼとセリアが視界に入った
「・・・ごめん、寝てた」
「ねっ・・・もう・・・!!」
「やっぱり英雄様は肝っ玉が違うんだね」
リゼとセリアが、安堵した様子で笑っている
翔太が身体を起こし、状況を確認する
「今どうなって・・・?」
「あなたが、巨人ネビュロスを倒した後、この辺りの戦況は落ち着いたから、戦える人たちは別方面の迎撃に当たってるわ。ここは国土魔法陣の結界の中だから安心よ」
「翔太すごかったね・・・!てか、私の神駆も使っちゃってるし、ほんとすごいよ!」
「・・・嫌じゃないか?自分の魔法を相手に使われるのって・・・。そうだとしたらごめん」
「いやぁ、最初は驚いたけどさ、あのオーラを纏った時に翔太の優しさとかみんなを守りたいって気持ちも流れ込んできたんだよね。だから、翔太のためならなんでもしてあげたいなって思ったの」
「な・・・!なんでもなんていっちゃダメよ!!」
リゼがなぜか抗議の声をあげている。セリアはキラキラした笑顔で笑っていた
「・・・そうか。よかった」
そんなやりとりをしているとき、メレディアが話しかけてきた
「本当に素晴らしかったわ、英雄様。あなたの力があればこの王国は盤石。魔物たちやネビュロスの脅威から全てを守ることができる・・・」
「俺で、何かしようとしてたんですよね?」
「ふふふ。あなたの魔法を研究して、一般魔法に取り込むことができればと・・・ね」
メレディアが妖しい瞳で翔太を見つめる。リゼとセリアがその間に割って入る
「危ないことはさせないわよ・・・!」
「悪いけど、偉いさんでも翔太のことは好きにはさせらんない」
「・・・ふふふ、モテモテですこと。この戦いの前は研究材料にして、魂を分離して肉体を霊薬漬けにして・・・なんて考えていたのだけどね」
・・・なんておぞましいことを平然といってのけてるんだこの女は・・・
「だけど。繋がった時に私の魂に牽制が入ったような気がするのよね。危害を加えれば殺す。そんな感じの牽制がね」
「それは・・・」
翔太は先ほどの白い思考の中で対話した声の主のことを思い出した
「だから、私たちの手には負えないから、このまま世界の英雄として生きてもらおうかなと思うの。そうすれば、あなたは勝手に脅威を排除してくれるでしょう?」
このメレディアは、国を守るという想いが強いのだろう。それゆえの考え、行動。たとえ他者を犠牲にすることになろうとも、自分自身が犠牲になろうとも・・・。
「翔太を都合よく使おうとするなんて・・・!」
リゼがかなり怒っているようだ。俺のために怒ってくれる人がいることに、リゼとは対照的に心が穏やかになっていくようだった
しかし、事態はさらに悪化する
「し、失礼します!!!」
王国兵が、メレディアの元にやってきた。かなり急いで慌てている様子だ
「どうかしたの?」
「王城に何者かが侵入・・・!警備兵が全滅し、玉座の間に進軍しているとのこと!」
全員に緊張が走る
「なんてこと・・・・!急いで向かうわ!!!」
メレディアは、《加速》を使用し、王城へと向かう
「・・・俺たちも行こう!」
翔太たちもメレディアを追いかけ王城内へと向かうのであった




