第9話:英雄の戦い
メレディアの放った魔法《星焔煌躙》。炎の属性魔法の中の『原初の魔法』と呼ばれる、古代魔法。
かつて、魔王を打ち払った勇者たちが使った魔法とされ、現代では使えるものはいないとされる
『天災魔法』である
威力・衝撃は凄まじく、直撃したネビュロスはもちろん、前線にいる者たちすべてが吹き飛ばされる
きゃあああああああ!!!!!
グアアアアア!!!
仲間たちの悲鳴が静寂を破り響き渡る
その爆風は、瞬く間にネビュロスの大群を飲み込み、何もかもを一瞬で焼き尽くしていた。
爆炎が上がり、焔が舞う。地上に降り注ぐ焔が、まるで流星の雨のようだった。
「く・・・メレディア!!!オメェ味方ごと!!」
ブランドンが怒りの声をあげる。しかし、メレディアは満足そうに微笑みながら、火炎の中で舞い上がっていた。彼女の魔法が生み出した熱気は、周囲の空気を完全に焼き尽くしていた。
「あはは…!こんなに気持ちいいことは久しぶりっ…!」
彼女の瞳は興奮と闘志に満ち溢れていた。
翔太の思考は白いのモヤの中にいた。自分の身体を俯瞰して見ているような、アニメを見ているかのようなそんな気持ちで漂っていた
突然の極大な魔法。それから皆を守らなければ・・・・
翔太の持つオーラが辺りにいた冒険者たちを包み込む。
皆の体に纏わせたオーラがダメージを回復し、緩和させてくれていた。
リゼやセリア、ブランドンたちは衝撃波を耐え、なんとか立ち上がり、火炎の海を眺めていた。
「凄すぎる・・・。でもこれであのネビュロスたちは…」
リゼが言葉を続ける前に
「まだだ!」
とブランドンが叫び声を上げた。
焼け付くような炎の中から、異常なほど大きな影が浮かび上がってきた。
「あれは・・・巨人・・・?」
「・・・あれがこの大群のボスかもしれないね?」
「ちっ・・・やるしかねぇ・・・!」
冒険者たちや傭兵団も、メレディアの魔法の後のショックから立ち直り、再び戦列を組み直していた。
メレディアは恍惚の表情で、翔太を眺めていた。
「さぁ英雄様、次はあなたの番ですよ?」
ああ・・・みんなを守らないとな・・・
白いモヤの中を浮かんでいるような、そんな気持ちよさのなか、自分の戦いを眺める
オーラを纏い、瞬間的に加速をすると、纏わせた風で巨人ネビュロスの足を切り裂く
「・・・あれは、私の神駆・・・?ほんとに使えるんだ・・・!」
「あんな動き・・・一体いつの間に・・・?」
セリアやリゼが驚きの声を上げる。翔太の攻撃は止むことなく続けられる
足を切り飛ばされた巨体がバランスを崩す。その瞬間に翔太の周りに無数の氷の刃が浮かび、巨人へと放たれる
氷の刃は巨人の腕や胴体を切り裂き、さらにバランスを崩させている。その中で翔太は風の刃をも放ちながら、縦横無尽に飛び回り、巨体を切り刻んでいた
「・・・試験の時とは別人だな・・・。これが英雄の力ってわけかよ」
ブランドンはその光景を信じられないという様子で眺めている。冒険者たちも、固唾を飲んで見守るしかない状態であった
巨人は、その身体に見合わぬ速さで腕をふるう。が、翔太には当たらない。
翔太は巨人の頭上へと飛び上がり、手をかざす
その手からは赤と青の炎、《業火の舞》が放たれ、巨人の全身を包み込んだ
ガアアアアアアア!!
炎に包まれながらも攻撃をやめない巨人に、さらに《業火の舞》や《炎渦》を浴びせていく
ば・・・化け物・・・
初級魔法であの威力・・・?
この距離で熱風まで・・・
なんなんだあいつ・・・
翔太のことを知らない者たちは、メレディアの魔法と同等か、ネビュロス以上の脅威を翔太から感じていた
「・・・すごいね・・・」
「うん・・・」
リゼとセリアも、目の前で繰り広げられた無双劇に、威圧感に恐怖を感じてしまっていることに気がついた
「・・・違うわ。彼がいなければ私たちは蹂躙されていた!」
リゼは、恐怖を覚えながらも、翔太の優しさやこれまでのことを思い出し、皆へと言い放っていた
「彼は、真の英雄なのです!!!」
冒険者たちは、英雄と呼ばれる男の戦いぶりをただただ眺めていた
「本当に・・・本当に素晴らしい・・・!」
メレディアだけは、翔太のことを愛おしそうに眺めていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「いやぁ・・・びっくりびっくりだねぇ」
黒いローブを纏った、小柄な男がもう一人の黒いローブの男に話しかけている
「まさか、天災魔法を使えるなんて思ってなかったよ〜。やるねぇあの子」
「腐っても魔法大国の大隊長様だった女だ。想定はしていたさ」
「しかも、これで彼も使えるようになっちゃったわけでしょ?大丈夫そ??」
「問題ない。俺たちの目的に支障はないさ」
黒いローブの男たちは、水晶を見ながら話している
「さ〜て、時間稼ぎのネビュロスたちもそろそろ狩り尽くされそうだし?俺たちももう待ってらんないのよねぇ」
小柄な男が、玉座に縛り付けられている男・・・アグニア王に話しかけている
「俺たちは、宝石が欲しいだけなの。それさえくれれば見逃してやるっていってるのに」
「・・・お前たちの目的はなんだ・・・宝石を求めて何をする・・・」
「俺たちの目的〜?そうだなぁ教えても理解できないでしょ〜?何も知らない平和な時代の無能たちにはさぁ!」
小柄な男は、袖の中から漆黒の剣を抜き、アグニア王の肩に突き刺す
「グゥ・・・・!」
「さっさと!宝石の!場所を!!教えろっての!!!」
何度も何度も、剣を体に突き刺していく
「・・・くっ・・・・・・」
アグニア王の意識が遠のいていく
「おい、やりすぎだぞ」
水晶を持った男がアグニア王に手をかざすと、立ち所に傷が癒えた
「我々は、宝石を使いこの世界の真の姿を取り戻したいだけなのです」
男の眼が、アグニア王を見据える。男は穏やかな、懐かしむような声で告げる
「我々が望むのは、“落日”ですよ」




