第2話:王国に向けて
馬車はゆっくりと走り出した。
翔太とリゼは外の景色を見ながら、二人の他愛のない話や王国での美味しい料理など、王国での生活について話し合っていた。
「いろんなお店も見て回りたいけど、まずは王立図書館に行ってみたいの」
「王立図書館?」
なんでも、さまざまな魔法の書や歴史書など、世界の文献が集められており、翔太の魔法や黒煙の怪物『ネビュロス』について何か手がかりがあるかもしれないと考えているようだ
「俺も読書は好きだから、興味あるな」
「ほんと!?じゃあ一緒に行けるね!」
リゼは本が好きで、今までもたくさんの本を読み歴史の知識や魔法の知識を蓄えていったようだ
なるほど、そしてそれを披露する機会がなかなか無かったため、俺に指導をするのが楽しいようだ
この世界の書物や物語など、リゼが今まで読んだ本を教えてもらいながら馬車は進んでいく
途中、馬車は幾度の休憩をとりながら進んでおり、日が暮れて夜となった。
3台の馬車には翔太たちの他にも乗客がおり、十人程度の人たちが休憩スペースの焚き火の周りで食事をしたり体を休めていた。
その中の旅人が翔太たちに声をかけてきた
「お兄さん、珍しい服を着てますね?何処産なんですかい?」
どうやら商人のようだ。俺の着ている服はこの世界に来た時に来ていた制服のままだったから、確かに周りの人たちとは服装が浮いているかもしれない
「これは・・・特注というか形見というか、故郷の服なんですよ」
「ほぉ・・・すごいですなぁ。フォーマルさもカジュアルさも持ち合わせていて、なおかついい魔法陣が織り込まれているようですな」
「魔法陣・・・?」
これはただの制服のはずだが・・・?
「あら、あなた『鑑定眼』が使えるのね」
「これでも、商いは長くやっているのでねぇ。目利きにならなきゃ生き抜けない世界ですからね」
旅人の見た目は若く好青年という雰囲気だが、よく見れば耳が少し長い。これがエルフという種族か・・・
「ふむふむ・・・耐衝撃・斬撃に耐魔法に耐汚染に・・・防御マシマシですなぁ」
「いつの間にそんな魔法陣が・・・」
でも、言われてみれば・・・ネビュロスとの戦いの際にいくらか攻撃を受けていたが・・・
あれ、普通に死ぬダメージだったのでは・・・?
翔太は戦いを思い出し、苦い顔をしながら
「これのおかげでネビュロスに勝てたようなものだよなぁ・・・」
と、ぼそっと呟いた。
そのつぶやきを聞いた旅人は顔色を変え
「ネビュロスに勝った???!!!!?!?!?!」
と、周りの旅人がびっくりするほどの声で驚いていた
「あ、あぁ・・・。まぁあの時はこのリゼに助けてもらったんだけど・・・」
「私も倒したのは初めてだったのよ・・・?」
「え!そうなの?!」
旅人は目を開け口を開け驚愕の顔で固まってしまっていた
「あ、あのぉ・・・大丈夫ですか・・・?」
旅人はハッと我に返った
「お二人・・・お二人は救世主になるかもしれませんな・・・??」
旅人は続ける
「ネビュロスは各地に出没し、人を襲っています。不定期に現れ目的もなく暴れ回っているかと当初は考えられていましたが・・・。どうやら魔法に関連する街や国、人が狙われているようでしてね。」
旅人はこっそりと、声のトーンを落とし始めた
「知識の街と謳われたヴァルフォーレ、考古学が盛んな魔術都市フラムハートなど、魔法に関連する都市が滅ぼされていると・・・」
リゼの表情が固まっている。リゼの故郷やリゼが襲われたのは魔法の知識があるから・・・?
旅人は続ける
「そして、フレイアルの統治国家アグニア王国にも侵攻が増えていて、王国兵がひっきりなしに討伐に駆り出されているとか」
「討伐するには、ネビュロスが持つ魔力を超えた魔法を放つか、対属性を見つけそれを用いて行動不能になるまで攻撃をするか・・・っていう物量作戦が一番効果的みたいでしてね」
俺たちがネビュロスを倒すことができたのは、高い魔力の攻撃を放つことができたからなのか・・・?もしかしたら火が弱点だったのか・・・
「だが、やはり人的被害がデカすぎるし王国兵も疲労困憊のようでね。今は冒険者や傭兵から討伐隊を編成しているようで、戦えるものはほぼ強制的に召集されてるような現状と聞いております・・・」
旅人は少し興奮した様子で続ける
「しかし!あなた方が来たとなれば王国はもうウハウハでしょう・・・!」
旅人は目を輝かせている。そして思い切り土下座をして懇願した
「ぜひ!お二人を王国騎士団の方に推薦させていただきたい!!!」
翔太とリゼは何事かと、旅人に顔をあげるように促す
「推薦したものがネビュロスを討伐したとなれば、紹介したものも王国より手当がもらえるはずなんです・・・!それがあれば今度こそ王国にお店を構えられるかもしれない・・・!」
旅人は必死になってお願いしてくる。どうやらかつて店を構えようとしたものの許可がもらえなかったというのだ。
そこで突然現れた俺たちに乗っかろうとするのは、この世界の商人ゆえなのか・・・
「リゼ・・・どうする?」
「王国のアレについても調べたいし、優遇が受けられるかもしれないし、乗ってみてもいいんじゃない?」
「ほ、ほんとですかい!!!恩にきりますよ・・・・!!!」
旅人は翔太とリゼの手を握り涙を流しながら喜んでいた。
「私の名前はアルセニール・シルバーリーフと申します・・・!以後お見知り置きを・・・!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
馬車は翔太たちをのせ、一晩をこえ王国へと向かう
そして、夜が明けた早朝
様々な思惑を抱えた一行は、ついにアグニア王国に到着するのであった
アルセニール・シルバーリーフ
種族:エルフ
年齢:127歳(エルフの中では若い方の年齢)
外見:長めの金色のストレートヘアーと青の瞳を持つ。縦長の耳には紋章が刻まれた純銀のピアスをつけている。体格は細身、身長は190センチ程度。




