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二人の初仕事




「あんま、無理すんなよ……?」

「わかってるよリオン。だけど、私も今は自身の力を測りかねているしな……一度何かで腕試ししていきたいが」

「それなら、ケイオスさん!何か依頼を受けながら次の街まで移動するのはどうですか? 冒険者ギルドの依頼って、受付と完了の報告場所は別々で大丈夫でしたよね!」

「ああ、確かにその通りだぜ。って、そうだそうだ。ケイオスさん、モニカお嬢ちゃん、二人に渡さなきゃならんものがあったんだ」


 リオンとはここでわかれ、私とモニカさんの二人はギルド職員の男に連れられて、ギルド奥の部屋から依頼受付のカウンターまで移動した。

 カウンターにつくと、私とモニカさんに一つずつ新しい冒険者タグが手渡された。古いブロンズのものとはここで交換だ。

 私には白金色の冒険者タグが、モニカさんには銀色の冒険者タグが渡され、それぞれ首へとかけなおす。


「昨日のグリーンワイバーン討伐でな、登録したばかりとはいえブロンズとして置いとくままなのはまずいだろうって職員達の間で話になってな、グリーンワイバーンをほぼ単独で討伐したケイオスさんをプラチナに、グリーンワイバーンの攻撃から生き残り、ケイオスさんの戦闘を支援したモニカお嬢ちゃんをシルバーに昇格させることになったんだ」

「おお……これで受けられる依頼の幅が広くなりますね!」

「凄いですねケイオスさん!ブロンズからいっきにプラチナですよ!あっ、でもこの場合パーティでの依頼ってどうなるんでしょう」


 私達の昇格を喜んでいたモニカさんだったが、ふとそんな疑問が浮かび、眉尻を下げてしゅんとしてしまった。


「やっぱり、バラバラじゃないといけないんでしょうか」

「あー、それはだな、もしもケイオスさんがプラチナの依頼を受けるならお嬢ちゃんは一緒には出られないな」

「うぅ、やっぱり……」

「でもよ、ケイオスさんがシルバーの依頼を受けるなら、パーティで受けられるぜ。パーティで依頼を受けるときの決まりは、メンバーの中で1番等級が低いやつに合わせるって事になってんだ。俺たちも依頼で死人を出したくはねえからな」


 彼女の疑問にギルド職員の男はそう答えた。

 色々と制限はかかるようではあるが、パーティでの依頼はちゃんと受けられるようだ。それを聞いて私は安心していたのだが、彼女の顔はまだ晴れない様子である。

 どうしたのかと彼女の小さな肩に手をかけると、彼女はおずおずとこちらを向いて視線を合わせてきた。


「わたし、やっぱり足手まといなんじゃ……」

「モニカさん……?」


 そう言ってしょんぼりとうつむく彼女。

 元々小さな彼女であるが、今の彼女は更に小さくなってしまったように見えた。


 彼女、もしかして私と組むことに後ろめたさがあったのだろうか。誘ったのは私からだと言うのに、私が彼女を迷惑だなどと思うものか。


「モニカさん、私は貴女を足手まといだなんて思いませんよ。絶対に。私が貴女を旅に誘ったんですから、私は貴女と行けるならどこでも構わないんです」

「……ケイオスさん」

「それに、モニカさんはすぐにプラチナに上がりますよ。私が保証します。たとえ一人でも戦えるように、魔法だって教えます」

「ありがとう、ケイオスさん……!でも、私はひとりじゃなくて、ケイオスさんといっしょがいいです」


 彼女の顔がぱっと明るくなる。そうだ、この顔だ。

 彼女には太陽のような明るい表情が似合う。その眩しい明るさでもって、暗い私を照らし続けていて欲しい。いつか別れが来る、その時まで。


 その時までずっと、私も彼女を守り、世間に疎い彼女が一人で生きて行けるように育てよう。そう、私は心の中で決心した。






「こいつだ、シルバーで今一番難しい依頼って言ったらな。頑張れよ」


 ギルド職員の男が持ってきたのは『オーク4頭の狩猟』だった。どうやら、王都から東部に向かったところにある村、ピエテ村でオークによる農作物の被害が発生したらしい。

 オークとは、草食で頭部がボア種のような形をしている二足歩行の人型の魔物だ。一応オーガ種という人に近い姿をした大型の魔物の一種の魔物であるが、その中でも最下級であり知能も低ければ体格の割に強くはない。だが、同種の雌が貴重であるオーガ種の例に漏れず、人間の女性を拐って繁殖を行うという大変危険な特徴を持っており、発見され次第討伐依頼が出される。

 今回の依頼ではまだ被害者は出ていないようだが、そろそろ彼らオーガ種は繁殖期に入る。いつ被害者が出てきてもおかしくない状況だ。


「お、オークですか」

「モニカさんもご存知で?」

「はい、大変汚らわしく滅ぼすべき魔物だと」

「ああ、やはり。まあそうなりますよね」


 教会らしい考え方だと思うし、私もそれには同意である。オークだけでなくオーガ種は、いるだけで人間にとって害にしかならない。


 だが、あんなオーガ種でもたまには役に立つのだ。

 オーガ種はその異様な繁殖能力により、他種である人間の女性を妊娠させることが出来る。その仕組みを王宮魔導師達は解析し、男性の不妊治療に使用する薬を開発したりしていた。

 彼らから作られた薬は身体機能を改善し、そのお陰で何組もの夫婦が救われたものか。産まれてきた子供も健康そのものであり、魔力遺伝的にも問題はなんら確認されていない。あんな魔物でも、どこで役に立つかわからないものである。


「まあ、ものは使いようですか。あれらは野生にいられると困りますが」

「………?」

「あ、いえ、今のは独り言です。一緒にオークをやっつけに行きましょう」

「はい!」


 次なる目的地はピエテ村。

 更に東へ進めばオルディニア公爵領のオルディニアの街につく。旅の中間地点としても丁度よいだろう。


 私と彼女は拳をトンと突き合わせ、互いに笑顔を向けあった。




読んでくださりありがとうございます!

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