1-e ドキドキな一日
続きです!
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ドアを開けると、階段前に犬型怪物がいた。
犬型怪物は、イノシシのように足を蹴り上げ、今にも突進しそうな気迫をしている。
「ウォォォォォ!!」
俺は力いっぱい、激しくボディブレードを動かした。
横に、縦に、斜めに。
“ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン!”
ボディブレードは鋭い風を切る音を出している。
すると、犬型怪物は動きを止め、ジッと俺を見つめた。
“ヒュン! ヒュン! ヒュン! ヒュン!”
今度は、ワンテンポずつ、リズム良く、オーバーな動作でボディブレードを振動させた。
「ゥゥウゥゥゥ……」
犬型怪物は低く唸る。
(いいぞ! ネットの通りだ!)
ネットにはこう書いてあった。
『動物は基本、相手が大きかったり、すごい音だったりを恐れる習性がある。もし、襲われそうなら気合で身体を大きくして、気合で動物が怖がる音を出せ』
この記事を見た時は、ふざけてんのかと思ってたけど、ものは試し。
今こうして、やってみると、効果てきめんだ。
俺は、ここがチャンスだと思い、ボディブレードを動かしながら犬型怪物に近づいた。
「ウッ! ウッ! ウッ!」
犬型怪物は、様子見なのか威嚇なのか分からない、リズムよく猿のように唸っている。
きっとひるんでいるんだと思う、でも、まだ何かが足りない……。
(ボディブレードだけじゃだめなのか…………)
必死に思考を巡らせて、ある行動にたどり着いた。
「おーー……rororororororororo!!」
威嚇だ。それもベロを巻くように、大きな声で。
俺は、威嚇と、絶え間なく全力でボディブレードを振動させた。
俺のベロがつるのが先か、喉が枯れるのが先か……、それとも腕がつるのが先か。
「フーー……フーー……」
犬型怪物が大人しくなった。
このまま、これで押し切るぞ!!
「バフッ!」
急に吠えたと思ったら、なんと、犬型怪物の頭が三百六十度、回転した。
「フクロウ!!!」
俺は呆気にとられ、ボディブレードを動かす手を止めてしまった。
頭が回転したと思ったら、犬型怪物はジャンプをして、天井に張り付き、俺をジッと見つめた。
何がなんだか、よくわからずに俺は棒立ち状態になっていると。
(今が一階に降りるチャンスなんじゃないか!?)
頭の中で、声が響いた。
我に返ると、睨んでいるクマから逃げるように、犬型怪物から目を離さず、ゆっくりと静かに、後ろ向きで移動した。
犬型怪物は俺が一階に降りるまでの間、二階の天井からずっと見ている。
一階まで降りると、犬型怪物は闇に消えた。
俺は、高鳴る心臓を無視して、一目散に、何も考えずに近くのドアを開けて入った。
そこは、洗面台と風呂場がある小さな部屋だ。
今にも、あの犬型怪物が一階に降りてくるのではと恐怖を感じた。
幸いなことに、部屋のドアと風呂場のドアの二か所にカギが付いている。
部屋のドアのカギを閉め、風呂場に入ると、風呂場のドアのカギも閉めた。
(二重のカギなら安心だろう……)
風呂場の中は、足を抱えれば身体全体が入りそうな浴槽と、小さな窓が一つあった。外は真っ暗だ。
「ワォォォォン! ォォワォォォォンンン!!」
どこからか、犬なのか、それとも別のモノからなのか、分からない鳴き声が聴こえる。
さっきから震えが止まらない。寒い。浴槽の中にいた方が、幾分かマシになる気がする。
(今夜はこの浴槽の中で寝て、明るくなったら、急いでここを出よう)
俺は、今後の不安がこみ上げる中、今朝食べた卵サンドの味を思い出し、ボディブレードとひざを抱えて眠りについた。
「腹、減ったな……」
誤字脱字があれば教えてください。
明日も、一話分投稿しようと思います。
よろしかったら、読んでいただけると嬉しいです!