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1-d ドキドキな一日

続きです。

<<<<<パート:トウカ>>>>>


 ボディブレードを構えながら、ゆっくりと階段を上っている。


 “キシッ……、キシッ……”


 階段がきしむ音が家中に響き渡る。心臓の鼓動がうるさい。

ボディブレードを握る手から自然と汗が出ているのが分かる。



 「何もいなければいいんだけどな……。」



俺は、独り言をつぶやいた。しかし、つぶやいてから、頭の中にある声が聴こえる。



 (それ、フラグじゃね?)



 二階にたどり着くと、一階と同様、暗く、部屋が二つあった。

階段近くの部屋のドアに手を掛けると、ゆっくりとドアを開けた。

その部屋は六畳分くらいの広さだった。

ベッドと勉強机が置いてあり、開いたクローゼットにはコートなどの服が多数掛けてあった。

たぶん、子供部屋かと思われる。

俺はジッと部屋の中を見渡したが、異常はない。



 「フゥ~……。」



思わず、ため息がこぼれた。緊張が少し緩み、全身の汗が出るのが分かった。

少し安堵したが、休んでる暇はない。俺は再度、覚悟を決め、次の奥にある部屋へと向かった。

最後の部屋のドアに手を掛けると、何やら中が騒がしい。



 (!!!)



 ドアノブに掛けている手から、汗が噴き出す。


 “ドタッ! バタッ! ドン!”


 明らかに、部屋の中に何かがいるのが、分かる。

俺は、このまま引き返そうと考えたが、もしかしたら、もしかしたら気せいかもしれない。

いや、きっと気のせいだろう。

この時の俺は、恐怖からか、なぞの勘違いと、変な勇気が湧いており、ゆっくりとドアを開けた。


 “ギィィィ……”


 ドアが開く時のきしむ音が響いた。

俺は、いつ化け物が襲い掛かってきても大丈夫なように、ボディブレードを激しく動かした。

ボディブレードを動かしながら、ゆっくり部屋の中に入ると、その部屋は、さきほどの部屋と同じ間取りだった。

音の正体を確かめようと、部屋の隅々まで、しっかりと凝視した。これといった異様なモノは見つからなかった。



 (やっぱり、気のせいだよな……)



 安心感が身体中に染み渡った。

俺は、ボディブレードを、動かしながら、一階のリビングに戻ろうと廊下に出た。



 「バゥゥ。ブシューー」



 それは、俺が部屋から出るのを待っていたかのように、階段の前に立ちふさがっていた。

一見すると、制服を着た女子高生。

しかし、よく見ると、制服はボロボロだ。それにさっきからネバッとした唾液が絶えずポタポタと垂れている。

顔を見ると、絶句した。そこには人間の顔がなかった。

犬の顔だ。

よく見る犬の頭が、人間の身体に生えているのだ。

その怪物は、興奮している犬のように口から唾液を垂らし、唸っていた。



 「バゥゥーー。ブシュッ。ブュイィィィィ!!」



犬の化け物が、叫び声を発するのと同時に、俺の方に突進してきた。



 「あぴゃゃゃゃァァマァァァマァァ!!」



俺は今まで発したことがない、突拍子な悲鳴をあげると、急いで、今出てきたばかりの奥の部屋に入って、ドアを閉めた。



 「ギィィィィィ! ギュイィィィィ!!」


 

ドアを開けようと、犬型怪物がドアに向かって体当たりをしている。



 「どうしよ! どうしよ! どうし……オップッ……、ヴッ……オエッーー……」



極度の緊張と恐怖のせいで、吐いてしまった。


 俺は、消化途中の卵サンドを見ながら、何かこのピンチから抜け出す方法はないか、必死に頭を巡らした。

心臓の鼓動が壊れそうなくらい速くなっている。むしろ、心拍が上がりすぎて、胸が痛い。



 (考えろ! 考えろ! 卵サンド! 考えろ! 卵サン……!)



息をするのも忘れるくらいに、必死に思考を巡らした。

俺は吐しゃ物にまみれながら、ゲロがついたズボンを見て、ある閃きが浮かぶ。



 (そういえば、第三の眼を持っていた化け物は、俺の尿を見た途端、俺から離れていったような……)



ものは試しだ! と直感で、再度開放をしようとした。



 (…………)



でない。

おかしい、テスト一週間前になると、焦りからなのか緊張からなのか、夜中に頻繁にトイレに行ったり、テスト中だと極度の緊張感で先生と同伴でトイレに行ってるのにーー。



 (でろ! でろ! でろでろでろでろ!!)



俺は恐怖の中、速く開放しなければならない焦りで、無理に開放しようとしたが、なんだか、痛みが出てきた。



 (お願いだ! 先ずは一滴、始めの一滴さえ出ればーー!!)



 ふいに、犬型怪物が体当たりするのを止めた。


 “ドタ! ドタ! ドタ!”


 廊下を走る音がする。



 (なんだなんだなんだ?!)



 「フシューー! フシューー!」



犬型怪物の息が荒くなっている音がする。


 “シュッ、シュッ、シュッ”


今度は、廊下を足でひっかくような音がする。



 (何をしようとしてるんだ?)



 恐怖と焦りの中、今の打開策と、犬型怪物の奇行について考えていた。

すると、ある記憶が脳裏に浮かんだ。


 それは、愛するペット・『ミツゴロウ』の、ある仕草だ。

ミツゴロウとは、我が家で飼っている、黒い毛並みの秋田犬だ。

性別はオスで、六歳になる。人間でいうと中年男性だ。


ミツゴロウは排泄物を出すと、決まって、後ろ足で地面や床を蹴り上げていたのだ。

ネコならこういう行動をするイメージがあるが、ミツゴロウは犬だ。

俺は気になって、ネットで調べたことがある。

ネットにはこう書いてあった。


 『犬がウンチやオシッコをした後に、後ろ足で勢いよく蹴り上げるのは、縄張り主張の一種の行動である』


 確かに、ミツゴロウは、家の中で排泄をする時、決まって父さんの仕事机の下でする。

父さんが、仕事机に向かう度に、ミツゴロウは父さんに向かって吠えて、決まって父さんは机の前に座るとウンコを踏む。

 

 確信を持った。あの犬型怪物は縄張りに入られて怒ってるんだ。

一階にいた時は、あの犬型怪物は反応を示さなかったが、俺が二階に来た時に、姿を現し威嚇している、ということは、二階が縄張りか……。

縄張りを主張して威嚇している犬の対処法もネットで調べ済みだ。



 (いちかばちか、やってみるか)



 俺は覚悟を決め、ドアを開けた。

誤字脱字があれば教えてください。

明日は一話分投稿しようと思ってます。読んでいただけると嬉しいです!

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