24 ここに建つ
続きです!
あと、『きょうのどっぐ~でんせつ~』を活動報告の方で更新しました!
浅川リョウターーーー俺は、馬の下敷きになっているマホト先輩の側に立って、祈者に向けて祓刀を構えた。
刀を握る両手が震えだす。
一見すると、笑顔が汚い普通のおじさん。
しかし、そのおじさんからにじみ出る狂気を肌でピリピリと感じる。
様々な罪人と何回も相対してきたから分かることができた。
「兄ちゃんたちには、聞きたことがいくつかあるんだよね」
祈者は地面に投げ捨てられていた馬の頭を指さした。
「まず、この子らをどうやって手懐けた?」
そんなこと知るはずもない。俺が入隊した当初から隊の方々は、当たり前のように従えていた。
それに知っていたとしても、祈者に教えるはずがない。
俺は無言のまま祈者を睨んだ。
「だんまり……か」
祈者はそう呟くと、さらに続けた。
「それとも兄ちゃんは、しゃべることができないのかな?」
そして狂気に満ちた目で笑いながら、
「んじゃ、そこで寝転がってるお姉ちゃんに聞くとしますか」
そう言うと、俺とマホト先輩がいる方に駆け出した。
そこまでのスピードはない。
むしろ、俺の方が速い。
予想として、あの祈者の能力は“物体を止める”ことだろう。
詳しい条件や制限は分からないが、それでも戦わなければ殺される。
もう一つ能力があるはずだが、隊長すらもよく分からないことを、俺が考えたって仕方がない。
「マホト先輩、必ず助けます。ここで待っててください」
「待って浅川! あいつには不思議な能力がある。私でさえこの様なんだから、あんたじゃ無理だよ!」
マホト先輩は震える手で俺のズボンの裾を掴む。
俺は安心させるために、笑って応えた。
「大丈夫ですよ、俺、こう見えて運だけはいいですから!」
「何言ってんの! あんた昨日の丁半博打で連敗してたじゃない!」
マホト先輩は涙目で言ってきた。
俺は頷くと、迫ってくる祈者の方に駆け出した。
(考えるな! まずは行動!)
祈者との戦闘に入った。
俺は刀を祈者に向けて振り下ろす。
「!!!」
やっぱりな……、マホト先輩と同じことが起きた。
全身の体重を刀にかけるが、ピクリとも動かない。
祈者はニヤッと笑うと、俺に腹パンをした。
「ゥウッ……」
肺の中の空気が全て吐き出される。息をしたくても息ができない。
「ハァ……ハッ」
息を吸おうとすると、
“ズドン!”
お腹を中心に再度、ニブイ衝撃が全身を駆け巡ると、
“ズドズドズドズド!!”
祈者は連続で腹パンをしてきた。
「ガッ……ハッ」
“ボトボトボト”
俺は息をする暇もなく、吐血した。
息をすると、脇腹がひどく痛む。それに吐き気がすごいする。
思わず、よろめきながら後ろに下がる。
(いっ……てぇぇぇ)
祈者は追い打ちをかけるように、今度は俺の顔面目掛けて右ストレートをしてくる。
俺は歯を食いしばると、額で受け止めた。
“パキッ”
嫌な音が頭に響いた。
視界がかすむ。
薄れる意識の中、マホト先輩の声が聴こえた。
「浅川ーーーー!!!」
その声が聴こえた瞬間、力が湧くのを感じる。
俺はよろめく足に力を入れると、伸ばしている祈者の右腕を両手で掴んだ。
「……めんな……よ」
祈者は真顔で俺を睨む。
「なめんなよハゲェェェェェェ!!!」
俺は大きな声で叫んだ。
そして、祈者の右腕を軸にし、身体を持ち上げて、両足で祈者に顔面キックをした。
「ぶべんぼきゅ!!」
祈者は変な声を上げると、後ろに下がり尻餅をつく。
俺は、空中で両足を伸ばした状態のまま、地面に落下した。
「ウッ!!!」
頭と内蔵に響く痛さだ。
俺はすぐに身体を起こすと、祈者を見た。
祈者は何が起きたか分からないといった表情できょとんとしている。
鼻からはボタボタとすごい勢いで鼻血が流れていた。
「ぽっきゅう?」
祈者は自分の鼻に手をやると、手に付いた鼻血を見て絶叫した。
「なんだこれはぁぁぁぁぁ!!」
そして、自分の鼻血をまじまじと見たり、匂いを嗅いだりする。
「ペロッ」
舐めた!! 俺はその異常な行動を見た瞬間、全身に鳥肌が立つ。
すると、祈者は目をカッと開いて叫んだ。
「ゥンマイねぇぇぇぇぇーーーッ!!」
祈者は、はちみつを両手につけたクマのように手をしゃぶる。
「化け物……」
俺はそう呟くと、覚悟を決めて拳で祈者に立ち向かおうとするが、
「う……」
身体が動かない。
祈者は指を一本一本舐めながら言った。
「兄ちゃんもういいよ。おっちゃんにケガさせたことは許したるよ。でもな、ただの人間が図に乗りすぎや」
そう言うと、目にも留まらぬ速さで、俺の目の前に移動した。
移動したといっても、瞬間移動に近いものだと思う。
そして、俺の頭を両手で掴んだ。
「がぁぁぁぁ!!!」
頭蓋骨がメキメキと音を立てる。
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!)
痛みで何も考えられない。とにかく首が痛い。
「浅川! 浅川! 浅川ーーーー!!」
何か聴こえるが、どうでもいい。痛い助けて! 誰かこの痛みから俺を助けて!!
身体の中でブチ……っと変な音が響いてくる。
ーーーー楽になりたい。
そう思った時、
“ブルン! ブルン! ブルゥゥゥゥ!!”
遠くから『カラクリ式自転車』のエンジン音が聴こえる。
「おい! 本当にここら辺であってんだろうなぁ? ぁあん!?」
エンジン音に混ざって、女性の声がする。
「『カレン』ちゃん! そんなに怖い言い方しないでよーー!」
鳴きそうな声で、別の女性の声がした。
「あのセツナが初めて救助信号を出したんだ、ぜってーー助けだす!! おいこらっ?! 聞いてんのか!?」
「だから怖い言い方しないでよ、カレンちゃん! セツナちゃんが吹いた場所を教えてくれる『アヒルコンパス』はこっちの方角を指してるみたいだけど!」
祈者は、俺の頭から両手を離した。
“バタッ”
俺は死にたくなるような痛みから開放される。
まだ頭は痛いが、助かった……のか?
「今日は、次から次へと人間が出てきますね。いつも散歩してんのに、こんなに残ってるとは……おっちゃん驚きですよ」
祈者はそう言うと、音の方向へ駆け出した。
俺は痛みを我慢して、祈者の行方を目で追う。
奥の一本道から、カラクリ式自転車がこっちに向かって走って来ているのが分かる。
よく見ると、二人組が乗っていた。
前で運転している女性は、長い黒髪で、格好が黒い革ジャンに下が白いTシャツを着ている。
後ろにいる女性は、ここからではよく見えないが、白いTシャツに何か文字が書いてある。
目を凝らすが、『ワタシは』しか読めない。
「おい、『マコ』! お前目当てにハゲが走って来てんぞ? まだ未練たらたらなんじゃね?」
「ハゲなお方と付き合ったことないよ!! それにカレンちゃんの後ろに私が乗ってるんだから、私じゃないでしょ!」
エンジン音がさらに大きくなる。
「いーーや、お前だな。んまぁ、とりあえず、なんかムカつくから殺しとくか」
そう聴こえると、
「マコ!! 一人で運転できるよな?」
「えっ!? ちょっと待って待って!! 危ないことは私絶対嫌だよ! カレンちゃぁぁぁんん!!」
その会話が終わるのと同時に、黒い革ジャンを来た女性は、祈者とすれ違になる瞬間に、祈者の頭を両手で掴み、カラクリ式自転車から飛び降りた。
「うぎゅぎゅぎゅぎぎゅ!!」
祈者は苦しそうな声で唸る。
無理もない。
だって、祈者の首が、ありえないくらい後ろに伸びているのだから。
どうやら、祈者の頭を掴んだ女性は、カラクリ式自転車から飛び降りた時にかかる力を祈者の首で相殺したらしい。
普通の人間は絶対にできない。
その女性は、飛び降りた勢いで祈者を垂直に持ち上げる。
そして、両手を離したと思ったら、祈者の胴体を両腕で抱え、祈者の頭を挟むように両足を組むと、
「墓石建ててやるよ!」
意味不明な言葉を言ったと思ったら、
「ここになぁぁぁ!」
勢いよく垂直に祈者の頭を地面に叩きつきた。
“グシュ!!”
肉が潰れる音が、心の中でした。
近くにいないが、たぶんそんな音がしたと思う。
「お~、きったねぇ墓石だなぁ」
誤字脱字があれば教えてください。
すみません、明日も一話分投稿しようと思ってます。時間は夜19時くらいを目安にしています。
前書きにも記載しましたが、活動報告の方で『きょうのどっぐ~でんせつ~』を更新しました!
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