23 後味が悪いおっさん
続きです!
4人で構成されている水出し部隊の一員である俺『浅川 リョウタ』は、空中に避難が完了した部隊を見て大声で言う。
「俺ら以外の部隊は全員、避難完了したようですね!」
すると、同じ部隊にいる女隊員『黒木 マホト』先輩が応えた。
「私たちも、隙を見て避難するわよ!」
俺ら4人は目で合図をすると、すごい勢いで放水している『火消し箱』を地面から離す。
“シュウゥゥゥゥ……”
水の勢いが弱まり、観音開きの扉が自然に閉まっていった。
先を見ると、罪人は道の奥の方まで流されていったようだ。
この距離だと、罪人が走ってきても十分逃げられる。
「よしっ! 馬の準備をするぞ!」
同じ部隊にいる男隊員『細木』先輩が言う。
俺らはそれを聞くと、一斉に『火消し箱』を担ぎ、馬に跨った。
「全員乗ったな! いくぞ!!」
一斉に、馬のお腹を蹴る。
「ヒヒーーン!」
馬は大きな羽で羽ばたき始める。
すると、同じ部隊にいる同期の女隊員『山本ミキ』が乗っている馬が、突然、羽ばたくのを止めた。
「どうしたミキ!?」
俺はミキに声を掛ける。
ミキは必死になって何度も馬のお腹を蹴る。
「山本! 早く飛べ!」
細木先輩がミキを心配して言う。
ミキは大きな声で言った。
「馬が……馬が急に動かなくなってしまって……」
「なに……!?」
細木先輩と俺はミキのもとまで、馬を近寄らせる。
馬を見ると、目だけが動いており、身体は石になったかのように固まっていた。
「これは……、『護力』によるものか……?」
細木先輩が呟くと、
「全員、前方注意!!」
頭上でマホト先輩が大きな声で注意を呼び掛けた。
前を見ると、祈者がニヤニヤ笑いながらこちらに歩いて近づいて来ている。
「マズい……、こっちに来る……」
俺は静かな声で言うと、ミキが狂ったように馬のお腹を何度も何度も蹴る。
「飛んで! お願い飛んで!!」
細木先輩は俺を見ると、頭上にいるマホト先輩に向かって言った。
「今から、山本を俺の馬に乗せる! 黒木と浅川はその時間稼ぎを頼む!」
「「了解!」」
俺は腰に差している日本刀『祓刀』を抜刀した。
『祓刀』は対罪人戦闘用に作られた日本刀だが、祈者に効果があるかは分からない。
それでも、ないよりはマシだ。
「浅川! 私は前に出て足止めをする! あんたは私の援護をお願い!」
マホト先輩が馬を並走させて言った。
「マホト先輩! 隊長から、祈者との戦闘は避けるようと言われてますので、無理はしないでください!」
マホト先輩はニコッと笑うと言った。
「大丈夫よ、山本が細木先輩の馬に乗るまでの間の、少しの時間稼ぎだよ」
マホト先輩は祈者に向かって馬を走らせる。
祈者とマホト先輩の距離が、間合いの距離になった。
マホト先輩が祓刀を振り上げる。
「おおおおおおお!!!」
祈者に切りつけたーーーと思ったら、
「!!!」
祓刀が祈者の身体に触れるか触れないかの距離でピタッと止まった。
よく見ると、祓刀を握っているマホト先輩の腕がプルプルと震えている。
相当、力を入れているのが分かる。
それなのに祓刀は時が止まったかのように微動だにしない。
「刀が……全く動かない……!」
マホト先輩は声を絞り出すように言った。
祈者はニコニコしながら、マホト先輩を見ている。
「この子は邪魔ですねぇ、おっちゃん空飛べないから、空中に逃げられると困っちゃうよ」
そう言うと、祈者は馬の頭を両手で掴むと、
「ふん!!」
祈者は踏ん張るような声を出す。
祈者の両腕はみるみる太くなっていくのが分かる。
「ヒ……ヒ……!!」
馬が白い泡を口から出しながら鳴いている。
“ブチ……ブチ……”
肉が少しずつ千切れるような音がしたと思ったら、
“ズボッ!”
雑草を引き抜くときに、根っこから抜けるような音がした。
マホト先輩が乗っていた頭があった馬はヨロヨロとよろめき、やがて倒れた。
「うっ……!」
マホト先輩が馬と一緒に倒れる。
「マホト先輩大丈夫ですか!?」
俺は馬から降り、マホト先輩のもとまで駆け寄る。
「だ……いじょうぶ……」
見ると、マホト先輩の足が馬の下敷きになって身動きが取れないようだ。
マホト先輩が、力が入らない手で祈者を指さして言う。
「みて……」
祈者を見ると、驚きのあまり息を飲んだ。
祓刀が空中に浮いている。
誰も刀を握っていないのに、だ。
俺は、入隊直後に行った祈者の説明を思い出した。
祈者は罪人にはない特殊能力を2つ持っているらしい。
どの能力も、この世界に流れている不思議な力『護力』を使う。
俺らも『護力』を使って消火活動やらカラクリ道具を動かしているが、『護力』を使うには必ず媒体が必要だ。
しかし、祈者は媒体を使わずに『護力』を操れると説明を受けた。
あの祈者がどんな能力を持っているかは分からないが、『護力』を使ったに違いない。
「あの兄ちゃんを連れてった時は、おっちゃんプンプンしたけど」
祈者は両手に持っていた馬の頭を、ゴミのように放り投げると、続けて言った。
「とりあえず、おやつも貰ったし……、残りはあの子のお友達候補ということで!」
祈者は耳まで口が裂けるほどの笑みをして言った。
誤字脱字があれば教えてください。
あと、すみません、明日は1話分投稿しようと思ってます。
時間は夜19時くらいを目安にしています。
今回はシリアス回でしたが、明日投稿予定のお話から、さらなる展開があります!
引き続き、読んでいただけると嬉しいです!
また感想・評価・ブックマークをしていただけると作者の励みになります!
よろしくお願いしますm(__)m




