18 希望のホイッスル
続きです!
あと、活動報告の方で『きょうのどっぐ~でんせつ~』を更新しました!
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周りを見渡すと暗い。
俺は海の暗い底にいる感覚だった。
「さっきからニタニタしてキモイんだよっ!」
セツナの声が遠くでする……。
ん? 一瞬、疑問に思ったが俺は安心して心で呟いた。
(俺のことじゃないな)
それにしても、騒がしい。あのヤンキーは喧嘩でもしてんじゃないだろうな。
そんなことを考えていると、暗い景色が白い煙に包まれていく。
(え……なにこれ……。なんか気持ち悪いな)
どんどん煙に包まれる。もう視界が白くなった。
(ちょっちょっ! 火事なの!? 火事起きてんのここ!?)
俺はどうすることもできず、目の前が白くなった。
「燻製になるぅ!」
俺はハッと目を覚ました。
すごい汗だ。それも俺の身体周り一面、水たまりができるほどに……。
(えっ……ほんとに水たまりがあるんだけど……。これ汗じゃないよな?)
俺は水たまりを指で拭い、舐めてみた。
「しょっぱい!!!」
どうやら、汗で間違いないようだ。
そういえばどことなく、口がカサカサして喉の渇きもあるな。
周りを見渡すと、誰もいない。
俺は建物入り口から入ってすぐの真ん中に寝ていたようだ。
ふと、建物入り口の奥に目をやる。
「!!!」
入り口付近にあった商品棚が、何か強い衝撃でひどく壊れている。
そして、その先には、向かいにある建物のシャッターにめり込むように倒れるセツナの姿。
何が起こったか理解ができない。
しかし、理解よりも先に助けなきゃいけない。
俺は立ち上がろうとする。
“シュゥゥゥゥ”
なんか、俺から煙出てない?
両手のひらを見ると、白い煙が発生している。しかも、なんか建物中煙たくない?
(これって……汗の蒸気……?)
俺はその蒸気を見て、ある漫画を思い出した。
それは『後退の巨人』という、近年稀に見る大人気漫画だ。
主人公は汗をかくことで巨人になり、巨人の姿で数々のスポーツ競技に挑むという内容だ。
巨人になるときに大量の汗の蒸気が発生することから、一部の視聴者から汚いとクレームが入り、蒸気にモザイクが入る伝説を残した。
(いやいやいや。まさかな! まさか……)
少し考える。確かに現実世界ではファンタジーな展開は起こりえない。
しかし、ここは怪物が存在するような非現実的な異世界だ。
異世界転移の際に、めっちゃかわいい女神様には会わなかったが、もしかしたら知らぬ間にファンタジー能力が備わっているかもしれない。
(いや……とにかくセツナのところへ向かうぞ)
俺は立ち上がった。
「んんん?」
ふと足元を見ると、水たまりの中に何か落ちている。
俺はそれを拾い上げると、どうやらアヒルの形をしたホイッスルだ。
「なんでこんなところに、ホイッスルが? それにしてもダッサいデザインだなーー」
ホイッスルをよく見るが、特におかしな点はない。
とりあえず、ホイッスルを鳴らしてセツナの気を引いてやろう。
俺はホイッスルを口にすると、息を吹いた。
「ピーー!」
ほう、いい音じゃん。なんか楽しくなってきたな。
「ピッピッピーー!」
ホイッスルをリズム良く鳴らしながら、入り口に出た。
セツナが空を眺めて、なんかブツブツ言ってる。
こいつ大丈夫か? と思ったが、セツナの近くに血溜まりがある。
よく見ると、セツナの口から血が垂れている。
「ピッピッ!」
俺は驚いて、ホイッスルを強く鳴らしてしまった。
その瞬間、とてつもなく鋭い視線があることに気づく。
その視線はまるで、クマにでも睨まれているかのような視線だ。
思わず足がすくむ。身体が固まる。
すると、怒鳴り声が聴こえた。
「てめぇ! そのホイッスルあたしのだぞ!!」
「ピッ!」
セツナの声だ。あのヤンキーの視線なら納得だ。
あんだけ目つきが悪いんだ。足がすくむのも無理はない。
俺はセツナに近づく。
「おい変態! 早くホイッスル返せ!」
「ピッ!」
返事をする感じでホイッスルを鳴らす。
そして口からホイッスルを放すと、そのままセツナに手渡した。
セツナはドン引いた顔で、汚物を触るようにホイッスルを受け取る。
「セツナさん? その……お怪我は大丈夫でしょうか?」
セツナのホイッスルと知らなかったけど、なんか悪いことをした気分だ。
「べつに……」
セツナ様だ! 超有名ツンデレ女優のセツナ様がいるぞ!
そして、セツナ様は目線を後ろの方向に向けると、
「あそこに祈者がいる」
と小声で言った。
俺は目線の先を見ようとすると、
「まだ見るな。アイツも様子見な感じでこっちを見てるだけだ」
セツナは続けて、
「現状、あたしらに勝ち目はない。あたしは多少なら動くことはできるが、戦闘は無理だ」
確かにセツナを見ると、ひどいケガだ。それに喋ることも辛そうだ。
「それに、アイツにはペットの罪人もいる」
俺は、おっさんの後ろにいた怪物を思い出す。
あれはあおり運転されてたんじゃない? それじゃ、何をしていたんだ?
「だが、一つだけこの場を切り抜けられる方法がないことでもない」
セツナはそう言うと、俺の目を見る。
その目は、しっかりと俺を見据えている。
俺はセツナの期待に応えるべく言った。
「どうすればいい?」
セツナは少し口角を上げると言う。
「あたしがよく知る人の中で、罪人を瞬殺できるほど強いヤツを知っている」
セツナはニヤッと笑うと、
「そいつに来てもらえば、ワンチャン助かる」
そう言うと、汚物のように掴んでいるホイッスルを見た。
「もちろん、あたしのホイッスルを汚したんだ。おまえ、責任取るんだよな?」
ホイッスルを俺に向かって投げてきた。
誤字脱字があれば教えてください。
明日は1話分投稿しようと思ってます。時間は夜19時くらいを目安にしています。
前書きにも記載しましたが、『きょうのどっぐ~でんせつ~』を活動報告の方で更新しました!
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