16 遠吠え
続きです!
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私は女性の手を引いて、ミツゴロウと全力で走っている。
なぜ、走っているのかというと、後ろからとても大きな塊が押し寄せているからだ。
「ハーー……ハーー……ハーー……」
高校・大学と剣道部に所属してた私だが、年には勝てない。
ミツゴロウが先頭を切って走ってくれているが、そろそろ足が限界だ。
それに、女性の方も限界だろう。
私は後ろから手を引っ張って付いてきている女性を見た。
「ああぁあぁあぁぁ!!」
女性は白目を向いて、走りながら悲鳴を上げている。
「すんごい体力だ!」
つい口に出して言ってしまった。
少しくらい息切れしててもいいのに、息切れするどころか叫ぶって。
結構全力で走ってるんだけどな……。それに全力疾走で10分は経過してるぞ!
最近の若者は元気が有り余っているとは、このことをいうのか?
そんなことを考えながら、走っていると、突然ミツゴロウが止まった。
「どうしたミツゴロウ!?」
ミツゴロウを見ると身体が震えている。そして身体を低くすると、
「ヴゥ……クゥーーン……クゥーーン」
苦しそうな声を上げた。
私はミツゴロウの急変に戸惑いを隠せない。
どうしたのか、考えようとするが、
“ドドドドドドドドド”
「「ああぁぁあぁぁあぁ!!!」」
後ろから迫ってくる塊のせいで、思考がまとまらない。
錯乱している女性、苦しそうなミツゴロウ。
(どうする……どうれば……私はどうすればいい)
私は動いた。
左手で女性の手を掴み、右手でミツゴロウを脇で抱えるようにして持ち上げる。
(ミツゴロウ大きくなったな)
中型犬なので、それなりの重さがある。
大丈夫。私なら絶対にこの子たちを救える。救わなければいけない。
「クゥ~ン」
ミツゴロウが心配そうな声を出す。
「大丈夫だ、ミツゴロウ。まずはここから脱出しような」
私は走りだした。
足が痛い。両手も痛い。息するのも苦しい。
しかし、立ち止まるわけにはいかない。
(明日は筋肉痛確定だな)
そんなことを考えながら、必死に走る。
後ろからは、地鳴り、地響き、叫び声。
終わりが見えない、ひたすら続く一本道の洞窟を走り続ける。
走っていると、急に闇が濃くなる。
洞窟の壁面にはたいまつの火があるはず。
その火の明るささえも、飲み込むほどの闇だ。
(なんだ急に、この暗さは……まるで……『無』だ)
闇がどんどん深くなり、何もかも光が感じられなくなった。
しかし、後ろから塊が迫る気配。何も見えなくても走るしかない。
そういえば、さっきからミツゴロウが温かいな……。
最初は気づかない程度のポカポカくらいだったが、その温かさはどんどん強くなり、最終的に手がヒリヒリするほどまで達した。
「あっっっちぃぃぃ!!」
思わず叫んでしまった。
ちょっ! ミツゴロウ! 燃えてんの!?
ミツゴロウを見ると、ミツゴロウが見えなかった。
いや、正確に言えばミツゴロウを抱えてる脇から闇が出ているようだ。
私は何が起こっているのか理解できなかったが、ある思考にたどり着いた。
(私の脇汗が闇を生み出しているのか……!?)
ミツゴロウが私の脇汗に飲み込まれている!?
急いでミツゴロウを降ろす。
「んん??」
ミツゴロウが見えない。
私は自分の脇を見る。見える。
「ワァン!!」
ミツゴロウの元気な鳴き声が聴こえる。
「ミツゴロウ……、おまえ……汗かいたのか?」
「ワァン!!」
先ほどのミツゴロウが、一変して元気になった。
姿は見えないが、元気になったミツゴロウを見れて一安心する。
「「あぁぁぁあぁぁああ!!」」
もうすぐそこまで迫ってきているようだ。
「ミツゴロウ、一人で走れるか?」
私はどこにいるか分からないミツゴロウに声を掛ける。
「ア゛ォオーーーーン!! ア゛ォオーーン!!」
ミツゴロウが遠吠えした。その遠吠えは洞窟全体を振動させるかのような大きさだ。
“ゴゴゴゴゴゴゴ”
遠吠えに共鳴するかのように洞窟が振動し始めた。
この揺れは、さっきの比ではない。洞窟が崩壊するかのような揺れだ。
「ミツゴロウ! シィィィィィィッ!! 崩落するぅぅぅぅぅぅ!!」
ミツゴロウは遠吠えを止めない。女性もまだ悲鳴を上げている。
私は知っているぞ。声だけでワイングラスを割っている人を、テレビで見たことがある。
この洞窟にはこんなにもたくさんの声が響いてるんだ。ワイングラスを割るどころか、地面さえ割りかねない。
私は深く息を吸うと、
「スウィィィィィィィィィィ!!」
すると、先ほどまでの騒がしさが、ウソのようにシーンとなった。
なんか、場違いなことをしまったようで、ドギマギする
“ゴゴゴゴゴォッ!”
えっ……。なんか地滑りの音がする。
やってしまった? 私の大声でやらかしてしまった?
“バゴン!”
それは突然現れた。
私たちと塊を隔てるようにして、地面に大きな穴が空いた。
大きさ的にはクレーン車一台分くらい余裕で落ちそうなほどだ。
穴の奥から何かが、よじ登ってくる音がする。
すると、とてつもなく強風が穴から吹いた。
その風は強すぎて、目を開けてられない。顔の皮膚が揺れ動くのが分かる。
「グゥゥゥ」
目を開けると、大きな穴から頭だけを出しているオオカミの頭があった。
まるで、狭い穴からハムスターが顔を出しているようだ。
信じられない光景で口をパクパクする。
そのオオカミは私たちを見ると、口を大きく開き、
「ガウッ」
目の前が真っ暗になった。
誤字脱字があれば教えてください。
明日も2話分投稿しようと思ってます。
投稿時間はお昼12時と夜19時くらいを目安にしてます。
引き続き、読んでいただけると嬉しいです!




