1-a プロローグ
ここから、本編はスタートです!
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「キャァァァァァァ!!!」
「誰か……、誰かいないのかーー!!!」
「助けてーー!!!」
「ママ!!!、ママァァ!!!、ママァァァァ!!!」
トウカーーーー俺は多くの絶望した叫び声で、目を覚ました。
身体中が痛い。きっと、足を抱えるようにうずくまって、寝ていたせいだ。
全身の震えが止まらない。すごく、寒い……。
頭上にある、小さな窓を見ると、日の光が入っていない。
まだまだ、夜が続くようだ。
お気づきかもしれないが、今、俺は暖かい布団の中でぬくぬくと眠っているわけではない。
俺がいったい、どこで寝ているのかだって?
ここは、全く知らない誰かの家の浴槽の中だ。不法侵入?
誤解を解くために、言っておきたいことがある。
俺は浴槽で寝る趣味はない。もちろん、知らない人の家に勝手に入るような趣味もない。
ここで寝なければいけない事態に追い込まれてるからだ。
とりあえず、俺がなぜ、こんな境遇にいるのか、回想しようと思う。
**********
“チュン、チュン、チュン”
小鳥がさえずる声がする。カーテンから漏れる光が少し眩しい。
「トウカー!学校遅刻するよー! さっきから呼んでるのだけど、全然起きてこないわね。リッカ、お兄ちゃんを起こしてきてくれる?」
「兄ちゃん、今日、大学あるの? なんか、テスト期間のせいで、魔法少女なんちゃらが2話分も見れなかったから、録画したのを一気に見るんだって言ってたよ。あたし、それ聞いて、てっきり今日はお休みなのかと思ってたんだけど……」
そんな、母さんとリッカちゃんのやり取りを聞いて、俺は呟いた。
「リッカちゃん、今日もテストだよ……」
俺は急いで枕もとの目覚まし時計を見た。
時計の針は午前9時ぴったり。テスト開始時間まで、残り30分。
大丈夫。家から走れば駅まで15分。駅に着くと同時に電車に乗れば、大学の最寄り駅まで15分。駅から大学まで走れば10分弱で着くはず。たぶん遅刻15分までは受験資格はあるはずだから、遅刻は確定だがテストは受けられる。
すぐに、ベッドから出て、急いで着替えた。
「あらっ。ようやく、起きてきた。トウカ、おはよう。あんた、今日大学ないの?」
母さんが、台所から身を乗り出すように聞いてきた。
「あれーー? 兄ちゃん、昨日、夜遅くまでアニメ見てなかった?」
妹のリッカちゃんが、ソファーに寝転がって、携帯ゲーム機で遊んでいる。
「大学はある。リッカちゃん、そんなに長い時間、アニメは見ていないぞ。撮りためてあった、『魔法少女プリティー☆もきゅもきゅ』を2話分と『とある神の記憶喪失』を3話分だけだ。」
俺は、淡々と応え、急いで、机の上に置いてある、卵サンドを手に取って、そのまま玄関まで小走りで向かった。
「ちょっと、兄ちゃん! 何も持たずに大学行くの!?」
「そうよ、あんた、大学に何しにいくの!?」
俺は手ぶらなのに気づいたが、時間がないこともあり、冷静に、ゆっくり静かに言った。
「テスト。持ち物は……、行けば、なんとかなる。その場で必要なものは用意する」
勢いよく玄関のドアを開けた。
一瞬、赤黒い光に包まれたと思ったら、ドアを開けたその先は、いつもの見慣れた外とは少し異なっていた。
町全体が、薄くモヤがかかっており、薄暗く、どことなく人間の手入れがない、さびれた町が目に映った。
俺は、違和感を感じたが、テストに遅れてはヤバい焦りからか、腕時計を確認して、気にせず、駅に向かって走った。
“バタン!”
ドアが勢いよく閉まった。
「ねぇ……。お母さん……。なんか、外おかしくなかった……?」
「……」
「お母さん!」
「!!!」
急いで、ドアを開けると、そこは何も変わらない、いつもの見慣れた外だった。
「もぉ~。リッカちゃん、驚かさないでよ!」
「あれっ……? 気のせいか……」
「リッカちゃん、今日は休みだからって、ゲームばかり、やってちゃダメだからね!」
ーーーーーーーーーー
“バタン!”
俺は、急いで、玄関から出た。
「よっし!!」
勢いよく走りながら、横目でお隣さん家が見えた。
いつもなら、ごく一般的な二階建ての一軒家のはず、そこに見えるのは、大きな自動ガラスドアの入り口。
まるで、駅近くにある大型ショッピングモールのような建物だ。
「へぇ~。お隣さん、『アオン』になったんだーー、都市化が進むなぁ」
駅に向けて走り出した。
誤字脱字があれば教えてください。
2話連続投稿します。