11 おっさんの正体 (A)
続きです!
<<<<<トウカ:パート>>>>>
俺は今、ヤンキー娘から少し離れて歩いている。
ほんとは、隣で歩きたい。
日は出ているが怪物がいつ出現するか分からないし、横に並んで歩いた方が安心できる。
しかし、俺がヤンキー娘の横に並ぶと、
「ーーーッチ。近寄んな変態」
と舌打ちされ、睨まれる。
まだ20代だけど、年頃の娘を持つ父親の気持ちが分かるような気がする。
そんなこんなで、しばらくヤンキー娘の後をついて歩いていた。
「あ……あの~」
会話がない状況に耐えられない。
それに、俺はこの世界について知りたいし、目の前のヤンキー娘についても今後のことを考えると協力関係を結びたい。
相性は合わないかもしれないが、なんとか会話から情報収集を試みる。
「なんだよっ」
不機嫌そうな返答が来る。怖い。なんでこんなにオラついてるの……。
声の高さといい、雰囲気といい、女性だよな……。
いや……、最近勉強した本に『男の娘』という単語があったな。
ジェンダーレスという社会の流れに反するかもしれないが、どうしても性別が気になる。
俺は、段々、目の前にいる人間は男性なんじゃないかと疑い始めた。
「その……、まずはお互いを知るということで、自己紹介してもよろしいでしょうか……?」
ヤンキー娘は聞き流すように、そのままスタスタと歩き続ける。
そして、ぶっきらぼうに、
「……名前はセツナ」
えっ……それだけ? 冷たいなーー。
最近の若者はコミュニケーション能力が欠けているとニュースで見たが、その通りかもしれない。
それにしても、『セツナ』って言うのかーー。
見た目と名前が一致しないな。
やっぱり俺は勘違いしてるのではないか?
どうしても気になる。気になるから無理やり質問した。
「一つだけ、教えてくれないか?」
「…………」
セツナは立ち止まり、俺の方を向く。
俺は真剣な表情になり、重い口調で質問した。
「きみって、男だよね?」
セツナの額に青い筋が立つのが分かる。
唯でさえ目つきが悪いのに、殺意がある目になった。
「女だよ! ぶっ殺すぞ!」
セツナは顔を真っ赤にし、中指を立てて返答した。
どうやらセツナは女性で間違いないようだ。
三十分くらい、歩いただろうか。
どこか見たことがある道に来た。
何だっけかなーーと考えていると、思い出してきた。
そうだ。この道は、化け物から逃げる自転車に乗ったおっさんと合った場所だ。
おっさんどうなったんだろうなーー。たぶん死んでんだと思うけど。
そんなことを薄っすらと考えていると、遠くから自転車が見える。
(まさかな……!!)
いや、まさか! いくら一級フラグ建築士の俺でも、そんなフラグが立つわけない!
すると、セツナも自転車に気づいたようで、俺に目で合図して言った。
「隠れるぞ」
俺はセツナの後に続いて、近くにある駄菓子屋みたいな作りの建物に隠れた。
ちょうど二人分、身を隠せそうな商品棚があったので、そこから外の様子を確認する。
セツナも俺も息を殺して、微動だにしない。
少し待つと、自転車がゆっくりと通ってきた。
俺は自転車を見て驚く。
おっさんだ。
例のおっさんが生きていた。
白いタンクトップで、青色ベースの白い縦模様がある短パンを着ている。
服装まで同じだ。つまり後ろには……。
「グフゥゥ……、グフーーー」
いるじゃん! あおり運転されてるよ! もしかして一晩中、怪物から煽られてたの!?
セツナを見ると、緊張ある顔で額に汗が流れているのが分かる。それはそうだ。
あんな恐ろしい化け物がいるんだから。
おっさんをもう一度見る。
おっさんは呑気に鼻歌を歌って自転車を漕いでいる。
可哀想に……。怪物に煽られてることにすら気づいていない。
俺は考える。
もしかして、今、俺がおっさんに、注意喚起すれば逃げれられるのではと思った。
細かいことを考えるより、行動が先だ。
「おい! まてまてまて!」
セツナが声をひそめて、俺を静止した。
「どこ行くつもりだ!?」
「え……と、あおり運転されてる人を助けに……」
セツナがすごい剣幕で言う。
「はあっ? おまえ、何言ってんの?」
確かにそうだ。おっさんの後ろには、明らかに人間ではない怪物がピッタリいる。
一回目は怖くてスルーしたが、イケメン怪物や犬型怪物を退けた今の俺なら、もしかしたら何とか救い出せるかもしれない。
セツナの目を見て言う。
「救えそうな人を見捨てるほど、俺は腐ってない!」
あんだけ目つきが悪かったセツナの目が丸く大きくなり、口を少し開けた。
もしかして、今の俺かっこよかった?
かっこつけて言ったのではない。本心だ。
俺は建物から出ようと一歩進んだ。
すると、グイッと後ろに引っ張られる。
振り返るとセツナが俺の背中を引っ張ったらしい。
何事かと振り向くと、
「なんでアホみたいなこと言ってんのかと思ったけど。おまえ、アレの正体知らないな?」
俺はセツナの顔をマジマジと見る。
何言っての、このバカは?
正体もなにも、チャリンコ乗って呑気に鼻歌を歌っているおっさんじゃないか?
そのおっさんが、今怪物にあおり運転されてピンチなんだよ。
セツナは、そんな俺の心の声を無視して言う。
「おまえ、どこから来た? この町の人間じゃないな?」
んん? なんで分かったんだ?
「この町に住んでたんなら、アレの正体を知ってるはず。むしろ正体知ってて声を掛けようとしてんなら、相当なアホか、自殺志願者のどっちかだ」
セツナが真剣な表情で話す。
(えっ……。あのおっさん、もしかして相当ヤバいやつなの……?)
言われてみれば、おかしい。
俺は今まで、白のタンクトップと下着にしか見えないパンツを着て、自転車に乗るハゲたおっさんを見たことがない。
セツナのこの発言を聞いて確信した。
「なるほど……、あのハゲ……相当ヤバい変態なんだな」
そんな俺の発現を聞いてセツナは口をパクパクした。
誤字脱字があれば教えてください。
明日も一話分投稿しようと思ってます。
引き続き、読んでいただけると嬉しいです!




