9 臭くなった手
続きです!
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朝日が昇る。
小鳥のさえずりが聴こえる。
あまりにも穏やかすぎる朝だ。
まるで、夜中に起こったモンスターパニックがなかったかのような朝だ。
イケメン怪物が帰宅するのを見送った俺は、犬型怪物の方に目をやる。
犬型怪物は壁にもたれかかり、打ち上げられた魚のように、ビクンビクンとけいれんしている。
この分だと、しばらく夢の中だろう。
俺はこれからの行動について考える。
この家に滞在すると、イケメン怪物がまた襲いに来る可能性がある。
日が出ているうちに次の隠れ場所を探して、潜伏するのがベストに違いない。
問題なのは、どこに向かうかだ。
家に帰宅できればいいが、現状、迷子だ。
元の世界に戻るための方法については、腰を落ち着ける場所でゆっくりと考えることにしよう。
あと、一階にいるはずのヤンキー娘が気になる。
もしかしたら、ヤンキー娘が拠点としている場所があるかもしれない。
気が進まないが、ヤンキー娘のご機嫌を取り、その拠点で隠れさせてもらおう。
ーーーとなると、一番初めにやるべきことは、一階に降りることだな。
俺は、階段へ向かう。
案の定、階段はボロボロで使えそうにない。
「うーーん……、どうしたもんかな……」
どうすればいいか腕を組んで悩む。どこかの部屋に使えそうな物あるかな……。
“ヒューー”
笛を吹くような音がする。どうやらイケメン怪物が空けた穴から風が入ってきているようだ。
とても寒い。
「イケメンって、こんなにでかい穴開けれるのかーー。なんか、すごいなーー」
俺は壁に空いた穴から身を乗り出す。
朝の風はとても気持ちがいい。それにちょうど日の光もいい感じに暖かい。
俺は目を閉じ全身で朝を感じる。
“ヒューーーー!”
突然、突風が吹く。
「おーー! とっとっとっと!」
強風に煽られ、バランスが崩れる。
ヤバい! ここが二階だとしても、俺の腰赤ちゃんなんだから、無事に地面に着地できるわけない!!
「やっばい! やっばい! やっばぃぞ!」
思わず両手の親指を立てて、グッドサインにし、腰をえび反りにして、バランスを保とうとする。
俺はなんとか数十秒頑張った。
頑張ったけど力及ばず、そのままゆっくり身体が前のめりに傾いていった。
身体が二階床と約四十五度の傾きになったとき、長く太い棒が左の視界に入る。
直ぐにその棒に摑まった。
「あっぶねーーー」
俺は四十五度の傾きのまま、その棒に全体重を預けた。
その棒をよく見ると、なんか金色に眩しい。
これ……、イケメンの光り輝く太い棒じゃん。
イケメンの『光』が地面に垂直に刺さっている。
なんでこんなところに『光』が刺さっているのかは知らないが、とにかく助かった。
ほっと安堵する。
腕に力を入れ、バランスを立て直そうと思うやすぐに、掴んでいる手がすべり始める。
ゆっくりと、ヌルヌルと降下していく。
手汗じゃない。俺は掴んでいる手を確認する。
なんかネバネバしてる。しかもゴミ臭い。
棒の先の方を見ると、無数のヒビが入っていて、折れ方がギザギザだ。ところどころ動物の歯型がある。
「ヌルゥヌルゥすぅるぅぅぅぅ!!」
俺はイケメンの棒を握りしめた状態で、ゆっくりと地面に降り立った。
降り立った場所はちょうど玄関扉近くだった。
家の周りを見るが、誰もいない。
さきほどの間抜けな様を誰かに見られてなくてよかった……。
棒から手を離そうとするが、なかなか離れない。格闘すること数分、ようやく剝がすことができた。
棒と手の間に、まるで怪物映画に出てくるような白くてブヨブヨしている液体が、糸を引く。
「ちゃんと歯を磨いてんのかよ……ミツゴロウでさえこんなに糸引かないぞ……」
ネバネバしている自分の手を眺めながら呟いた。
俺は再び、一階の洗面台と風呂場があった部屋に向かう。
ヤンキー娘はまだ、洗面台の流し台に、お尻をすっぽりとはめた状態でうなだれていた。
ヤンキー娘に近づく。
「すー……すー……」
寝息がする。こいつ……あんな状況下だったのに、よくぐっすり寝れてるな……。
ヤンキー娘の肝っ玉の太さに驚きを隠せない。
どうやって、ヤンキー娘のノンレム睡眠から現実に戻すか、ネバネバする手をグー・パーしながら考える。
ヤンキー娘といっても、女性に変わりはない。
下手な起こし方をしたら、犯罪者認定されかねない。
俺は、ネバついた手をヤンキー娘の顔に近づけた。
「すー…すー………、ん…んんん…んヴヴヴゥゥオォエ!?」
ヤンキー娘は寝起き早々、お戻しになられた。
「なんて、お下品! もっと優雅にできないのかしら!」
昔見た少女アニメ『ベルサイユの雑草』の決めセリフを言った。
誤字脱字があれば教えてください。
明日は一話分投稿しようと思っています。
引き続き、読んでいただけると嬉しいです!
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