6 長い夜 (D)
続きです!
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「ウオォォォォォ!!」
俺は、気合の咆哮をする。
「アマァアマァァァァ!!」
イケメン怪物も、それに呼応するかのように咆哮する。
声量はイケメン怪物の方が、大きいが、気持ちは負けていない。
“ブン、ブン、ブンブンブンブン!!”
力を込め、ボディブレードを動かした。
“ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!”
足を縦に伸ばし、腰を深く落とす。
右手でボディブレードを持ち、振動するボディブレードを顔高さまで上げ、先っぽをイケメン怪物に向ける。
左手はボディブレードに沿うように、前に伸ばした。
この構えは、俺が何十回と読んで研究した、漫画『りろうに剣針』に登場する剣の構えの一つ『毛突』だ。
『毛突』はこの漫画の中で最強に位置する『剣を突く』構えだ。
「アァァァアア!!」
イケメン怪物が吠えると、イケメン怪物から生えていた、無数の『光』が全て折り曲がった。
それは、蜘蛛の足のような構えに似ている。
いや、金色に光り輝く『千手観音』の手だ。
何の合図もなく、突然始まった。
無数の『光』が差し迫ってきた。
俺は、反射神経を研ぎ澄まし、『光』を一本一本避けて行った。
幸運なのか、火事場の馬鹿力なのか、自分でも驚くほどに、きれいにかわすことができたーーーー、
と思っていたが、腕や太もも、脇腹、身体のあちこちに『光』によってつけられた深い傷ができていた。
めっちゃ痛い。まるでスプーンで肉が削られたような深い傷だ。
「グッ……ウゥ……」
思わず、唸ってしまった。痛い。心臓の鼓動のように、身体のあちこちからズキンと鼓動がする。
かすかに鉄のような臭いが、辺り一面からする。
気にするな。考えるな。
きっと今頃は串刺しだったが、こうして生きて立っている。
人間、逃げられない状況なら、クマとだって殺り合うとは、このことか。
俺は足に力を込め、イケメン怪物に向かって飛び走った。
臆するな! 止まってはいけない!
一心不乱に足を動かし、イケメン怪物の胸元まで駆け寄った。
イケメン怪物は、まさかの行動だったらしく、俺に反応できていない。
「ウオォォォォォ!!」
懇親の力を込め、振動するボディブレードを、イケメン怪物の胸元に、思いっきり突き刺した。
“………………”
----静寂。
まるで、時が止まったかのように、俺とイケメン怪物は固まった。
最初に声を発したのは、イケメン怪物だった。
「ア……ア?」
イケメン怪物は何が起こったのか分からないといった声を発した。
そして、ゆっくりと、自分の胸元を見た。
イケメン怪物の胸には、今にも折れそうなくらいの、えげつない、しなりをしたボディブレードが押し付けられている。
俺は、静かに呟いた。
「耐久性……問題なし」
俺は次の行動について、必死に思考を巡らした。
何かないか、今のこの現状を打破できる一手はないのか。
チラッと部屋の奥にある、洗面台に目をやった。
先ほどのヤンキー娘が、洗面台の流し台にお尻がすっぽりとはまり、座っているような状態で、うなだれていた。
洗面台の鏡には、蜘蛛の巣みたいなヒビが広がっていた。相当、強い力で吹き飛ばされたに違いない。
ヤンキー娘の肩を見ると、上がったり下がったりしている。
大丈夫、生きている。きっと気絶しているのだと思う。
いくら初対面が最悪のイメージだろうが、見捨てるほど人間性は腐っちゃいない。
それにこのまま放っておくと、イケメン・女子・密室の、少女漫画でいう王道三要素が揃ってしまう。
いろいろ、思考を巡らせて、ある閃きが思いついた。
人間で太刀打ちできないなら、同じ怪物なら太刀打ちできるんじゃね?
俺は、脱兎のごとく廊下に走った。廊下に出ると、イケメン怪物の方を向いた。
イケメン怪物は、まだ自分の胸元を見て呆けている。
右手でボディブレードを握りしめ、肩の上で構えると、大きくゆっくりと深呼吸をした。
「シュッ!」
イケメン怪物目がけて、ボディブレードを投げた。
ボディブレードは真っ直ぐ、槍のように怪物に直撃した。
「ウマァァア!」
イケメン怪物は我に返ったように、短い叫びをあげた。
イケメン怪物は俺の方を向くと、怒り狂うイノシシのように突進してきた。
「うひょーーー!!」
俺は、すんでのところで回避した。
“ズドーーン!!”
イケメン怪物は壁に激突した。その衝撃か、天井からホコリや壁の一部が落ちてくる。
俺は、後ろを見る暇もなく、ダッシュで階段を上る。
イケメン怪物も登ってくると思ったが。
“シュパッ! シュパパパパパッ!!”
俺がさっきまで踏んでいた階段板が、壊れていくのが分かる。
想像したくないが、『光』による攻撃か!?
階段がぐらつく、バランスが崩れる。
「わぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は両手を『U』の字に上げながら、階段を駆け上がっていく。
そんなに長い階段ではないが、俺にとっては、とても長い階段に思えた。
もしかしたら、異世界にあるボイラー室につながっていて、そのまま銭湯で働くことになるのではと思うくらい。
息を切らして、死に物狂いで二階にたどり着いた。
後ろをみると、階段がズタボロだ。大きな四角い穴が空いている板があれば、完全に無くなっている板もある。
一階から、イケメン怪物が俺のことをガン見している。
(マズい……、イケメンが俺になびかない!)
とっさの行動で、イケメン怪物に向かって、投げキスをした。
「アァアァァアマァア!!」
イケメン怪物は叫ぶと、無数の『光』を壁に突き刺した。
すると、『光』を使って壁を登り始めた。まるで蜘蛛が壁を歩くように。
「蜘蛛イケメン男!!」
俺は、壁や床を必死に叩いた。
(頼む! 頼む頼む頼む頼む!!)
イケメン怪物は徐々に二階に近づいてくる。
(いるんだろ! 出てこい! 出てこい!!)
必死に心の中で叫ぶ、自然と目と鼻と股間が熱くなる。
もう近くまで迫ってきたーーーと思った、その時。
「フシューーフシューー」
俺の耳元で、その音は聴こえた。
待ち望んでいたモノが来て、嬉しさのあまり、満面の笑顔で音のする方向を向いた。
俺の目に、犬の顔がドアップで映る。
血の気が引いていくのが、分かった。
「近いな……」
今日は2話連続投稿をしようと思ってます。
次の話は夜19時くらいに投稿する予定です。
よろしければ、読んでいただけると嬉しいです!




