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魔王、レベルアップする

マッドボアとは、イノシシのような魔物で体長2メートルほど、茶色の体毛、口元に大きく鋭利な牙が付いているのが特徴の魔物だ。

ちなみに魔族と魔物は同じ『魔』がついているもの同士仲間だと思われがちだが、実際はそんな事はない。全くの無関係だ。

そもそも魔物には知性そのものが希薄と言われている。実際のところ、真相は分からないが友好を気づいた魔物も確かに存在する。


「鑑定!」


名前 マッドボア 獣型魔物

LV8


スキル なし


「レベル8か……まずいな」


俺はまだレベル1……マッドボアなんて魔物、普段なら取るに足らない雑魚だが、今の俺には一撃受けただけでも致命傷になる。

レベルで勝敗が決まるわけではなく、技術、駆け引き、運、など様々な要因が積み重なって決着がつくものだが、流石にレベル1は厳しいところがある。


俺はまず、魔力を練りだす。

魔力と言うのは常に身に纏っているものだが、それだけの量では魔法を発動できない。

故に心臓に溜まっている、魔力の元になる魔素というものと、脳から出される魔力脳波を合わせ、魔力を増やすことをコネクトといい、この一連の工程を【魔力を練る】という。

魔力というのは、個々人で練りだせる量に差があり、レベルが同じでも術者事に量に違いがある。

どれだけ魔法を使う時に魔素を速く、無駄なく魔力に変換できるかが魔法使いにとって生涯の目標になる。

今の俺はレベルが低いので、練りだせる魔力はレベル5の魔術師の平均くらいだ。やはりレベルが低いと前のように膨大な魔力が練れない。


「グルルルルルルッッ!!」


魔力を練っているのを感知したのか、マッドボアはその巨体を俺に向かって走らせてくる。

まるで馬車が突っ込んでくるかのように、予想以上に速い突進に俺は若干驚きつつも、右に半歩ずらして半身で避ける。

マッドボアの突進は速い、故に急に曲がる事は出来ない。そのまま突進を止める事が出来ずにマッドボアは木に突撃する。


「プギィィィィィ!!」


ドゴッという生々しい音を立て、マッドボアは木に直撃し、ふらつく。

振動で鳥が木から一斉に飛び立つ。

俺は怯んだ隙を見のがさず、手を前に向け魔法を打ち込む。


「ファイアーボール!」


マッドボアに向けた手のひらから、直径50センチほどの火の塊が出る。

直線的に飛んでいく火の塊は、マッドボアの横腹に直撃した。


「グ、グゥゥゥゥ!!」


マッドボアは火に焼かれ熱かったのか、叫びながらその場で暴れ回る。

10秒ほど暴れた後。


「ピッギィィィィィィィ……」


苦しそうな断末魔を上げ、意識を手放した。


「ふー、なんとか勝てた……。さて、マッドボアはどうしよう」


普通魔物を倒した後は魔石と呼ばれている魔力を帯びる魔物の核を取り出すのだが、今は魔石を取り出すナイフがない。

と、そのとき俺は昔本に書いてあった、エクストラスキルの事を思い出す。


「確か、【時空魔法】の中に『収納』って魔法があったな。とりあえず試してみるか」


時空魔法の一種である、『収納』。これは意識を持っていないものを四次元空間に収納できる便利魔法だ。


「収納――うわっ!!」


成功したのか目の前にあったマッドボアの素材は一瞬で姿を消した。しかし、一瞬で魔力を根こそぎ持ってかれてしまい、つい声を荒げてしまう。


「これは……当分使えない魔法だな……。せっかく便利なのに」


レベルが低く、魔力が少ないのでおいそれと使えるような魔法ではないようだった。

『収納』の不便さに若干の不満を吐き出しつつも、ひとまずレベルを調べる。


「よし! レベルが2になったぞ! って、低いな……」


レベルの低い者がレベルの高い者に勝つと取得経験値が増えるはずなのだ。だから、レベル1のまま、レベル8の魔物を倒したのだから、レベル4くらいに上がってもおかしくはないはずだった。


(これが称号『勇王』の取得経験値半減の能力か……。いじめでしょ? いじめだよね?)


「はあ、仕方ない……か」


過ぎた事をぐちぐちと言うのはあまり好まないので、大きなため息の後に、気を取り直す。

とりあえず、低いレベルだと何もできないのでレベルを上げることにし、片端から見つけたマッドボアを狩った。


――――――――――――――――――――――


「よし、レベル9になったぞ!」


マッドボアを狩りまくった俺は、ついにレベル9に到達した。7レベルも上がったことに達成感を感じたが、普通ならもう15くらいになっていてもおかしくないので、喜びも半減する。


「というか……暗いな」


太陽が西に沈み切り、暗闇が孤独を一層と自覚させる時間帯に差し掛かっていた。

マッドボアを狩るのに時間が掛かり過ぎたせいだ。

そして森を散策してみて分かった事がある。

俺が今いるのは、名前は分からないがあの気に食わないクズ王のいる、王都郊外からそれなりに離れた森ということだ。

生きていることがばれる前に王都から抜け出したかった俺からしたら嬉しい情報だった。早く森を抜けもっと遠いところに離れたいが、とりあえず今日はもう暗いので森で野宿をして、明日から他の国を目指すこと脳内会議で決定する。


問題は寝る場所なのだが、魔物に見つかると面倒くさいので、手ごろな太い枝が生えている木によじ登り一夜を明かした。


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