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魔王、ステータスを確認する

この小説は三人称と一人称を使い分けて書いています。

ご了承ください。

(冷たい……)


何とも言えないその感覚に意識が刺激され、覚醒する。俺は川の中で仰向けに寝ていた。水位が耳ほどまであり、もう少し高かったら溺死していたかもしれない。

俺は何も分からず、辺りをきょろきょろと見回し始める。


「ここは……森の中?」


辺りを見回すと木々がそよ風に揺られ、さわさわと茂っていた。太陽の指す光が眩しく、葉っぱも光に照らされ綺麗に輝く。木々の合間を縫うように川が流れており、何とも幻想的な雰囲気を醸し出しだす森。

冷たく気持ちが良いがひとまず川から上がり、状況を整理する。


「おおかた俺は眠らされて、下水道にでも流されたんだろうな」


自分が川にいる理由が、そのくらいしか思いつかない。

凡人な発想しか出ない自分に思わず、苦笑いをこぼす。

と、ひとつ謎が解けたところでもう一つ疑問が浮かんできた。


(なぜ俺に魔法が効いたんだ? レベル的に効かないはず……。それと勇王……、俺の称号は魔王のはずだ)


「まずは現状整理だ。ステータスオープン」


名前 クロノ・フリーデン 

性別 男

職業 なし

LV 1


エクストラスキル 

 固有魔法(光魔法・闇魔法・時空魔法)  自動体力回復(使用不可) 魔力回復(使用不可) 勇者の本気(使用不可) 魔王の憤怒 %&&%##%%#(使用不可)


称号 勇王(勇者・魔王) 称号の似合わない男


「な、レベル1だって!? しかも俺が勇者? 一番持ってたらダメな称号だろ……」


俺は、レベルが何故か1になっていたショックと、勇者と言う魔王の自分が持っていて良いものなのか分からない称号に驚きを隠せない。

今まで必死で積み上げてきたレベルが消えたのは本当にきつい。


(けど……レベル1ならあの老人の魔法が効いたのも納得がいく。今の俺の魔法に対する抵抗力はいくら『魔王』といえども赤子同然だ……)


称号には、特別な能力があったりする。例えば『魔王』は魔法系の攻撃が効きにくくなる。

しかし、気になるのは『勇王』だ、この称号の能力は――成長速度が半減する。

つまりレベルが上がりにくくなるということだ。嫌がらせ以外のなにものでもない。


まあ、『勇王』という名前なら他の人にばれても『勇者』や『魔王』とばれる必要がないのは安心かもしれないとポジティブに考え、気を取り直した。


「それよりもなんだ、このスキル……」


いくつかのエクストラスキルが(使用不可)と書いてある。

レベルが上がれば解除されるのか? 一生このままだと相当困る、なんにせよレベルが上がらないと何もできない。


(使えなかった時にまた考えるか……)


それと〈固有魔法(光魔法・時空魔法)〉、〈勇者の本気〉、が新しく増えていた。


〈固有魔法(光魔法・時空魔法)〉――勇者専用スキル


〈勇者の本気〉――ステータス補正、デメリットあり。


〈%&&%##%%#〉――#$#&%’$#%%$#%%$&


後は――文字化けで読めないスキルがある……。これもレベルが足りないのか……?

色々と試してみたけど、それでも全く読めないスキルに匙を投げた。


(何が起こってるのか訳が分からないけど、もしかしたら、前の俺より格段に強くなれるかもしれない……)


魔王だった頃の俺は、成長しなくなってしまった、いや、できなくなってしまった自分に忌避感を感じていた。けど、今の俺なら、もしかしたら前の自分より強くなれるかもしれない。

そんな風に思うと期待と興奮で胸が高まった。そして俺は決意する。


「決めたぞ! 俺は……人間の国を勉強してやる!」


目が覚めてからずっと引っかかっていた。

あの愚王に言われた言葉――「何も知らないやつ」この一言だ。

癪だけど、確かにそうだ。俺は人族の事を知ったような気になっていただけだ。

俺に知ってる事なんて人から聞いた話や、城の書庫の本に記されていたことだけだった。

だから俺は、自分の目で見て、理解して、そして……人族と魔族が分かり合えるような世界を作る!

そう強く決意した。


喝を入れるために川で顔を洗おうとした時、水面に映る自分の顔を見て、あるはずの物がないことに気づく。


「角が……ない!?」


そうだ。今思えば不自然なことだった。

俺を見て魔族と言うことに気づかれなかったことは。

魔族には角が生えている。稀に生えないやつもいるが俺にはあった。

角が無くなったショックは自分で思うよりも大きかったのかもしれない。

体の力が抜けて、水面をのぞき込みながらその場にへたりこむ。


「お、俺の角が……自慢だったのに。どうしてだよぉぉぉぉぉぉぉお!」


思わず大きな声で叫んでしまう。あえて言おう、それが馬鹿だった。

俺の声が森にこだまし終えた後、後ろの木々からガサッという草木の揺らめく音が聞こえた。

ゆっくりと振り向くとそこには魔物――マッドボアが悠然と四足で立っていた。


「おい……まじかよ」



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