激闘の最中に
ルーンの衝撃の順位とそれを聞いたシルクの思った以上の喜び様に忘れかけていたが2人はふとここに来た理由を思い出した。
「あっ、そうだ。忘れるところだった。エイルさんの話をまだ聞いてなかった」
「シルクはテンション上げ過ぎだよ。エイルさん、本当に聞いていいんですよね」
「別に良いってば、リリスちゃんに負けたのは彼女の素早さで僕の攻撃をほとんど避けられちゃっただけだし」
エイルのこの言葉にルーンとシルクは何か不満そうな顔をしてエイルを見ていた。
「どうしたの2人とも?」
「いや、べつに~。エイルさんが何か私たちに隠してる気がしてたからねぇ」
「私たちリリスの動画を見てて思ったんですけど、エイルさんの弓がいつもよりぶれていたと思うんですけど…」
「うっ…」
エイルは痛い所をつかれたことをおもわず顔に出してしまっていた。
「さっきもお店の中覗いた時も何か真剣に考えてる感じだったじゃないですか」
「はぁ…そこまで2人が分かってるなら隠してる方が悪い気がするし、何かの拍子に解決してくれそうだし」
エイルはそう言うと吹っ切れた表情をして2人を椅子に座らせ、自分は2人の前の椅子に座り話し始めた。
「2人には一回話したと思うけど、僕の姪っ子がこのゲームをプレーしてるんだよ」
「はい、エイルさんと一緒に死神と戦って最後の一撃を決めたっていう子ですよね」
「うん、僕もその日以来姪っ子とは現実でもゲーム内でも会ってなかったんだよ」
「はい、でもそれがどうしたんですか?」
「いや、一週間前に姪っ子の母親まぁ僕の姉さんから連絡があって彼女が今VR引きこもりになってるんだって」
エイルの言うVR引きこもりとは今国内で問題視されている一種の引きこもりでVR世界に入ったまま出てこないで不登校やニートになるようなことを指すような言葉である。
「まぁ、無くはない話ですけど…」
「それがこのゲームにどうやらずっといるらしくて、僕もメッセージを送って接触をしようとしたんだけど、何度送っても返信が帰ってこないから心配で…」
「姪っ子さんがどうして引きこもってるとか、知らないんですか?」
「分からない。でも、両親には私にはこの世界でやらなきゃいけないことがある。やっと私が輝ける場所を見つけたかもしれないんだ。って言ってたらしいんだよ」
シルクにはエイルの姪っ子が何を言っているのかはいまいち分からなかったがルーンは分かったような感じがした。
「だから姉さんたちも無理にやめさせることが出来ないから、せめて見守ってほしいって言われたんだけど…」
「会うどころか連絡もとれてない状況が続いていて心配が重なって第二回イベントに集中出来なかったって感じですね」
「うん、だから見つけても分からないかもしれないけど、万が一見つけたら教えてほしいって話だよ」
「分かりました。見つけたらエイルさんが心配していることと、メッセージを返すように言っておきます」
シルクがそう言っている隣でルーンは少し神妙な面持ちでいたが、2人は特に気にしていなかった。




