中の人の会議4
ルーンとツクヨミの戦闘を見ていた運営の中の人間達はこの結果に納得していた。
「うーん、やっぱり最新鋭の戦闘型学習AIを取り入れたらこうなっちゃいますよね」
「まぁ、こうなる上でストーリー作ってるから実質負けイベントみたいなもんだから」
「結構このルーンって子もやってくれると思っていたけど、まだスキルの範囲と攻撃手段が無いから難しいかぁ」
「トップランカーがやっても勝てるかどうか以前にダメージを与えられるのか怪しいレベルの強さだからしょうがないだろ」
ルーンの戦闘シーンを見ながら何人かの運営が休み時間に話していた。
「おや?これって例の人型AI計画の戦闘シーンかな」
「あっ、絹塚さんこんな遅くまでご苦労様です。そうなんですよ。特にAI計画の中でも強い部類に入るツクヨミの戦闘でしたよ」
「あー、それは失敗したな。ツクヨミの戦闘は見てみたかったから生で見れなかったのは悔しいな」
「じゃあ、絹塚さんのパソコンに戦闘シーンの動画送っておきましょうか」
「いや、ここで見させてくれないか。早く戦闘シーンを見てみたいからね」
そう言って絹塚はパソコンに映し出されたルーンとツクヨミの戦闘シーンを見ると、あることに気がついた。
「ははは、面白い闘いだったが君たちは何かこの中にある違和感を感じなかったかい?」
「ツクヨミが強すぎたってことですか?」
「最後の攻撃が通らなかったってことですか?」
「いいや、違う。このシーンを良く見てごらん」
絹塚が部下達に見せたのはルーンが【透明化】をして分身とツクヨミに攻撃を仕掛けたシーンであった。
「別に何にも変な行動じゃないですか。ツクヨミがプレイヤーの分身をなぎはらって攻撃を…はっ」
「気づいたみたいだね。この時プレイヤーの分身をツクヨミは一撃目で2体しか倒せていない」
「そして残った1体を二撃目で倒した。その瞬間本体となるプレイヤーはツクヨミの背後をとり、一撃を与えていた。まぁ、実際はツクヨミに1%もダメージを与えられてないがな」
「どうしてこの一瞬のそんなこと分かったんですか?」
部下の一言に絹塚が少し考える素振りをするも、答えを出すことは出来なかった。
「どこかで見たことがあったと思うんだけど、忘れちゃったよ。さすがにもう年なのかな」
「いやいや、もう年だねって言ってる人がこんな細かいこと分かる訳無いじゃないですか」
「そうかもな。で、君たちは仕事の方は戻らなくて大丈夫なのかい?」
「あっ、ヤバイもう休憩時間終わってる。私はもう戻らなくてはいけないのでこれで失礼します」
「あはは、話し込むのは良いが仕事をほっぽりださないでよ。今は第二回イベントの準備で人手がいなくて大変なんだから」
絹塚のこの言葉を聞き終わる前に部下達は、それぞれの部署に戻っていった。




