空振り
2人がゲーム内で別れてから一晩経ち、昨日別れたカフェでもう一度集まって別れた後の報告をしていた。
「はぁ、追加のクエスト無かったよ。やっぱりなんかクエスト解放の条件とかあるのかな」
「まぁ、今回も勝手に達成して出来たしプレーしている内に出来るようになると思うけど」
「あっ、そうだ。ルーンの方は何やってたの?」
「私は【影分身】がどんな感じかな?って思ったからそれを試したのと、あとは特にシルクには関係無いことかな」
「関係無いことって何なの?」
「そのままの意味だよ。別にシルクがそんな気にすることでも無いけど…聞きたい?」
ルーンがこう言うときは大体聞かれたくないことだということをシルクは知っていたため、それ以上は特に聞こうとはしなかった。
「あっ、そういえばシルクと別れた後思い出したんだけど、装備品のことと言えばエイルさんに聞けば良いんじゃない?」
「た、確かにそうだね。さっそくエイルさんのお店に行ってみようよ」
「うん、エイルさんは一層の方のお店にいるってメッセージで聞いておいたから」
「じゃあ、一層のお店に行って聞きに行こうよ」
そう言うと2人は二層のカフェを出て、一層にあるエイルの店に来た。
「こんにちは~、エイルさんいますか?」
「連絡があったからここにいるのは分かってるでしょ」
「あはは、そうですよね。聞きたいことがあったから来たんですよ」
「何か面白いクエストとかアイテムを見つけたの?」
エイルの質問にルーンとシルクが顔を見合わせて苦笑いし、答えた。
「まぁ、そんなところなんですけどできればお店の裏で話したいんですけど」
「あーわかった、良いよ。ちょっと裏片付けるから少し待ってて」
そう言ってエイルは店の裏に消え、2人は店の中を見て回ることにした。
「ふぅん、やっぱりエイルさんのお店は良いアイテム置いてるよね」
「あっ、た、確かにそうだね…」
ルーンの歯切れの悪い言葉と何かをひっそりと置いたのを見逃さなかった。
「ルーン今、何持ってたの?」
「えっ、あっ、いやー別にたいしたものじゃないよ」
「えーと…『ハヤブサの指輪』って普通に何個も売ってるようなものじゃん」
「そ、そうだよね…」
ルーンのことが気になりシルクは『ハヤブサの指輪』を手に取るとその理由が分かった。
(あー、このアイテムルーンの『月狼のお守り』より性能が高いのか。だからこれを見てテンションが下がったのか)
シルクはなんとなく察することができたのでもう触れないでおこうと思った時、エイルが店の裏から帰ってきた。
「片付いたし、裏に来ても良いよ」
「分かりました。すぐに行きます。ほら、ルーンも早く行くよ」
「あ、うん。分かった」
そう言って2人はエイルに呼ばれ、店の裏にあるエイルの作業場に入った。
「で、話したいことって何かな?裏で話すってことは結構珍しい情報だよね」
「はい、そうです。さっそくですが、エイルさんは呪いの装備について何か知ってますか?」
「呪いの装備…このゲームに呪いの装備みたいなものは今のところ聞かないけど」
「はぁ、エイルさんでも知らないとなるとやっぱりまだ実装前なのかな」
「それで、呪いの装備がどうかしたの?」
シルクは今まで起こったことを禁術の本についてと合わせてエイルに説明した。
「このクエストはかなり凝ってるみたいだし、まだ実装前ってことはないと思うけど、全部は実装されてないとも思うよ」
「ど、どういうことですか?」
「このクエストは要するに7人分の呪いの装備の呪いを祓うクエストでしょ。なら、今は1人分しか実装されてなくて他はこれから、なんてことも無くはない話だよ」
「そ、そうですか…」
3人は今現在考察しかたてられない状況であるため、その後は話はあまり前進しなかった。
「とりあえず、何か進展がない限り分からないよ。こればかりは運営側のことだから」
「そうですね。エイルさんも時間をさいて話を聞いてくれてありがとうございました」
「いや良いって、2人は何かと珍しいことを引き寄せるみたいだし今回も面白い話だったから」
「じゃあ、進展があったらまた報告をしますから」
そう言ってルーンとシルクはエイルのお店を出てひさしぶりのレベル上げに行くことにした。




