お姉さんの正体は…
2人はエレベーターで清香の部屋がある10階に行き、その部屋の前に立っていた。
「インターフォン押してもいい?」
「別にいいけど、なんでわざわざそんなこと聞くの?」
「だって、いきなり知らない人がインターフォン押したら怖くない?」
「真白ってそういうところ細かいよね」
奈月のこの言葉が言い終わるか言い終わらないくらいに真白はインターフォンを押していた。
「真白は行動するのも早いんだよ」
「はいはい、それが私の良いところですから」
そして2人の会話が切れるタイミングでちょうど清香がドアを開けて、2人の前に出てきた。
「あぁ、奈月ちゃんどうしたの?なんかあった?ん?こっちの子は?」
出てきた女性は、奈月以上に長いストレートの黒髪に整った顔立ちをした綺麗な人だった。
「は、初めまして私奈月のクラスメイトで幼馴染みの絹塚真白っていいます」
「あー、この子が前に言ってた幼馴染みちゃんか。私は奈月ちゃんの叔母で保護者の雪村清香だよ。よろしく」
そう言って清香は真白に右手をだし、真白もそれに右手を出し握手をした。
「で、なんでうちに来たの」
「いやー、真白が清香さんのことを見てみたいって言ったから、成り行きで…」
「あーそういうこと、じゃあここでお別れっていうのもあれだし、中でお茶くらいしていかない?」
「ぜひ、お願いします」
2人は清香の容姿と同じ様に整った綺麗な部屋のなかに入れてもらい、お茶が出るのを待つことにしていた。
「あっそうだ。真白、清香さんは何の人かわかった?」
「いや全然分からなかったけど、どっかで見たことがあるような、ないような…」
「清香さーん、真白にあれを見せていいですか」
「別にいいけど、傷はつけないでよ」
清香がそういうと奈月は真白を連れて隣の部屋にいき、ショーケースに飾られている多くのメダルや賞状、トロフィーがあった。
「えっ、これって…」
「そう、私は昔結構有名なフェンシングの選手だったんだよ。まぁ、怪我をしてやめなきゃいけなくなっちゃったけど」
「知ってます。旧姓は氷上清香、高校1年生でオリンピック内定していてそのストイックさから、こ…」
「その後は言わないで、私その異名が嫌いなんだよ」
お茶を持ってきた清香さんの正体が分かり、少し真白に緊張感がはしった。
「あ、すいません…なんか」
「ごめんね。特に気にしなくっていいから、でも他の人には言わないでよ。変に注目集めるとご近所さんに迷惑だから」
清香は悪目立ちをを避けるために、今までほとんどの人にこの事を隠していたため、親族と本当に仲のいい友人しかこの事を知らなかった。
「あっそうそう、清香さんは今は何やってるの」
「うーん、特に職業にはついてないし昼間はぐだくだしてるからなぁ」
「あはは、案外ぐうたらな感じなんですね」
「でも今はそれはそれで楽しいし、ずっとフェンシングにうちこんでいたから今は新しい世界にいるって感じかな」
真白は少し清香の不規則な生活が心配になったが、フェンシングをやってる時の反動だと思いそれ以上はそのことにはふれず、お茶を飲んでその日は解散になった。




