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闇夜のジャングル

「おぉ!速いよこの月狼ちゃん!」


「そうですね。森の木に関してはその巨体でも軽々躱しているのが野生の動物って感じですね」


「あぁ、ルーンに頼んでこの月狼あとでもらおうかな。スゴく便利だし、モフモフだし」


「それは無理だよ。その月狼はルーンのスキルだから本物のモンスターじゃないし…いや、元々月狼はゲームのモンスターだし本物じゃないのか…?」

シルクが自分で言っていることの意味を考えてロジックにはまっていると森を抜け目の前には背は高く無いものの蔦や変な形の木が生い茂る中央のジャングルに全員が突入していった。


「はぁ、ここら辺は木がかなり進みづらいな。こんなところをルーンちゃんは先行したのかぁ…」


「師匠には陰と陰の間を瞬間移動できるスキルがありますからね。ここに限らず、障害物が多くて適度に光りが入ってくる場所なら私たちなんかより圧倒的に速いですよ」

ルーンは自身のスキルを使い、他のメンバーより先行し邪魔になりそうな敵がいたら奇襲で倒していた。


「まぁ、そのお陰でボクたちはこうやって簡単に前に進めてるんだけどね」


「それはそうだけど…ルーンは無理するからあまりこういうことはしないでほしいよ」

シルクは今までのことフラッシュバックしたのか少し暗い顔をしてそう言った。


「…ルーンちゃんなら大丈夫じゃない?ほら、今日だって自分の体力が無くなるの分かって帰って寝てたし」


「そうだよ。ルーンは頭もきれるし行動も早い、ダメだと思ったらすぐに逃げるよ」


「そ、そうですよね。私がちょっと考え過ぎてました…」

シルクは苦笑しながらそう言いつつも、やはりルーンが無理をしていないか心配になった。






そして、シルクが心配しているルーンはというと陰から陰に渡りながら前進していた。幸いルーンが発見した敵は簡単に倒すことができ、今のところ順調そのものだった。


(とりあえず、体感ではもうジャングルの4分の3くらい来たか?今までは余裕だったけど、このタイミングでトップ12が出てきそうで嫌なんだよなぁ)


(…っ!あそこの集団は…)

ルーンは集団でいる敵を発見して立ち止まり木陰に隠れ様子を伺った。発見したプレイヤーたちはルーンが今日の朝見た緋色の学生服を着ていた。


「ふぅ、それじゃあ使える人はここら辺で1度やって起きましょうか【ライト】」


「「「【ライト】」」」


「うっ…マズっ…」

集団のリーダーなのだろうか1人の女性プレイヤーが【ライト】を唱えると他のプレイヤーもそれに続くように【ライト】を唱え、ルーンが潜んでいた陰が消えてしまい【影隠れ】の効果も同時に消えてしまった。


「あぁ、やっぱりいましたか。なんとなくプレイヤーがいると思って使いましたが正解でしたね」


(気配や物音までは消せないことと、陰に私が潜めることもバレてるってことか…)

聖女の如くにこやかな笑顔でルーンを見つけたのは長くストレートの金髪の女性だった。


「あっ、見つけたからと言っても何もしませんから安心てください。私たちはあなたのクランと今日までは不可侵の状態ですから」


「そうですよ。しっかりそちらのクラン全体に伝わっていることは嬉しいです。ここはお互い自己紹介と握手だけにして各々の目的をはたしませんか?」


「それは良いですね。それでは、まず私から。私の名前はアリア、【蒼空学園】で一応所属メンバー統括をしているいわゆる幹部というやつです。以後お見知りおきを」

アリアと名乗る女性は長いスカートを貴族のように上げて挨拶をしてきた。


「私はルーン、【犯罪者ギルティナイト】のクランリーダーをやっています。あと2時間と少しですが平和的な関係をよろしくお願いします」


「はい、こちらこそ」

ルーンが右手を出すとアリアはその手を握り、またも聖女のような笑顔を見せた。しかしアリアと握手した瞬間、なにか電流が流れるような違和感を感じた。


「それでは、私たちはこれで」


「はい、私も用事があるのでそれでは」

ルーンは【蒼空学園】のメンバーが南の方に行くのを見送ると先ほどの握手で感じた違和感を確認するためにステータス画面を確認した。


「ステータスは特に変化無いのか…それじゃあ、あの違和感はいったい…」

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