防衛戦線
クローネとロータスが率いる死霊体軍団はエイルに約3割を倒されたところで洋館の氷壁に到達した。
「「「うがぁぁぁ…うがぁぁぁ…」」」
「さ、作戦通りにお願い…ロータス」
「わかってるよ!【召還:ヤタガラス】【召還:フレイムバード】!アイテム【コウノトリのゆりかご】」
ロータスは黒く大きなカラスを一体と炎を纏った鳥を数体、そして人が何人も入るくらいの大きさはあるバケットのようなものを出してそのなかに死霊体を入れた。
「よーし、ヤタガラスちゃんたち頼んだよ!」
「じゃ、じゃあ僕たちはこれから…」
死霊体を詰め込んだバケットはヤタガラスによって軽々と氷壁をこえて洋館の敷地内に侵入した。
シルクは箒にまたがりエイルと死霊体の入ったバケットを足で掴み羽ばたいてきたヤタガラスとその周りにいるフレイムバードの処理にあたっていた。
「エイルさん、予想通り来ました!どうします?あの大きなカラスを優先的にしますか?」
「うん、そうしてくれ。僕とフィアは周りのフレイムバードを撃ち落とす。他のメンバーはクリスタル周辺と下に待機してもらってるから」
「わかりました。それなら周りのこと気にせずぶっぱなしますよ!【レヴィアタン】」
シルクは箒の上にバランス良く立つと背負っていた杖を持ち、水龍のエフェクトの魔法を放った。
「シルクちゃんはそのまま攻撃を続けて!じゃあ、フィアも雑魚処理やるよ!【マルチショット】」
「わかってるよエイル!【絶対零度】」
「それを借りるよ!【錬金術師】【トリプルスナイプ】」
エイルはフィアの【絶対零度】の力を取り込み放った矢は炎を纏った鳥さえも凍らせ地に落とした。
「エイルさん、フィアさんナイスです!あとは私が…」
「オッケー、アニのお手製アイテム受け取って!アイテム【クラスアップ雷】」
フィアはシルクにアニが作った黄色の液体が入ったフラスコのような小瓶を投げつけた。
「ありがとうございます。これであの大きいカラスを撃ち落とせます!【カースドサンダー】」
「ギャァァーーー!」
シルクが放った魔法はヤタガラスに直撃し、撃ち落とすことに成功した。それと同時にヤタガラスが持っていたバケットも落ち下にある地雷の爆撃に焼かれることになった。
「よし、撃ち落とせた!シルクちゃん、下の方はどんな感じになってる?」
「まだ何体か死霊体がのこってます!」
「オッケー、それじゃあシュウくん、ブランちゃん残りの奴らの処理にあたって!」
「「了解!」」
エイルの指示を聞いたシュウとブランは隠れていた場所から飛び出し、それぞれ近くの死霊体を倒していった。
「私はあとこれだけで!【粘糸】【焔ノ正拳】」
「最後の一体!【フレアスラッシュ】」
2人の活躍で爆発のなか生き残った死霊体を全滅することができたが、エイルは大事なことを見逃していたことに気がついた。
「ナイス2人とも!エイル、これで…って、どうしたの?なにかあった?」
「いないんだよ。クローネとロータスが…」
「えっ、ウソ!さっきまであそこに…はっ、もういなくなってる!どういうこと?」
「まさか洋館内に…アヤメ!そっちにクローネとロータスはいるか!」
エイルは急いでクリスタルの守備を担当しているアヤメに自作の無線機で連絡をとった。
「えっ、クローネとロータス?そんな人どころか敵プレイヤー1人も来てなくてつまんないんだけど、それよりおじさんなんかあったの?」
「えっ、そっちに行ってない…って、そうなるともう逃げたのか?」
「まぁ、相手も牽制のつもりで、他のクランにうちを攻めるとこういうことしますよってことを示したかっただけじゃない?でも、そうなると見せものにされたのはちょっと気分が良くないけど」
「そう考えておくか…。それじゃあ、とりあえずクリスタルのところに全員を集めよう。一応、万が一ってこともあるからな」
エイルはそう言って屋上をあとにした。そして、それに続くようにフィアもシルクを屋上に迎い入れたあと、氷を張った状態にして完全防御形態に洋館を変化させた。




