ネクロマンサー
エイルが報告を受けてから約2時間後、その大行進を指揮している主であるクローネとそれを補佐するためについてきたロータスは着々と氷の要塞に向かって進軍していた。
「はぁ…クローネくんまだ着かないの?」
「ま、まだだよ。あ…あと、到着には1時間くらいはかかると思う…」
「どうしてこんなに大勢で進軍してるのに他のプレイヤーは攻撃してこないんだろ?」
ロータスは不満気な顔をしながら自身が召還した大きな熊型のモンスターの上で寝そべっていた。
「そ、それはほら、こんなに大勢で集団行動してるから手を出せないんだよ…たぶん」
「でもまぁ、クローネくんの【死霊術師】のスキルはかなり有名だし無理も無いか。下手に手を出して負けでもしたらこいつらの仲間だからな」
「で、でもアスタロの考えてることはわからない…。こ、これくらいの数じゃ【犯罪者の夜】を倒せないこともわかってるはずなのに…」
「あーしもそれは同感だよ。今のタイミングでなんであそこを潰そうとしてるのかわからない。まぁ、アスタロのことだから何か考えがあってのことだと思うけど」
2人はアスタロのことを余程信用してるのか何故、今回みたいな無謀な攻撃をするように指示をしたのか特に理由を聞くことも無かったため、このような疑問が生まれた。
「そういえばクローネくんはこのゾンビたちを最大で何体出せるの?」
「ぞ、ゾンビじゃなくて死霊体だけど…い、一番弱くても良ければ最大は1000体以上かな。で、でもそれだと簡単に倒されちゃうけど…」
「1000体か…なるほどねぇ。それって、やっぱり二つ名スキルってのが大きく影響してるの?」
「えっ、あぁ…うん。く、詳しくはアスタロに口止めされてるから言わないけどそ、それはかなり影響してる…ん?な、なんか前の方で爆発しなかった?」
2人が話していると隊列の一番後ろにいる2人にも聞こえるほどの爆発音が鳴り響いた。
「おおっ、退屈してたところに襲撃者か。ちょうど良い。あーしがちょっくら倒してくるわ」
「べ、別にロータスは行かなくてもいい。あ、あと10秒もあればみんなが片付けてくれる」
その後、クローネの言う通りほんの数秒で片付いたようで死霊体たちは何も無かったように進み始めた。
「あーしが出るほどの相手でも無かったってことかぁ。つまらんなぁ」
「あ、相手はたぶん【FirstStars】の傘下のクランのメンバーでそ、そこそこ強い方のプレイヤーが5人くらい…。で、でもロータスほどは強くなかった…」
「そんなこともわかるんだ。じゃあ、あーしのスキルと似た感じのスキルをクローネくんも持ってるってことか。あんま一緒に行動しないから結構初耳のことが多いね」
「そ、そうだね。そ、そろそろエイルのしゃ、射程圏内に入るから気をつけて…。え、エイルのスキルは基本、ちょ、超遠距離特化のものが多いから」
「了解!」
そんな会話をしている2人をエイルは洋館の屋上から自身の目でしっかりと確認していた。




