第4回イベント2日目3
十数分後、ルーンはその場にいた20人強の【蒼空学園】のプレイヤーを葬り去った。
「はぁはぁ、結構人数は倒せたけど何人かは逃がしちゃったかぁ。でも、お偉いさんは来てくれたみたいだね」
「あーあ、もうバレちゃってるよキョウちゃん。さすが、トップ12末席って感じじゃない」
「そうだな。倒せれば儲けくらいに思って3パーティーで襲撃させてみたけど、珍しいスキルをいくつか見せてもらっただけだな」
そう言いながら現れたのは鏡のような大盾を持った黒髪の男と両手に剣を持った金髪サイドテールの女の子だった。
「あなたがキョウヤさん、そしてそっちの女の子が…」
「ライカだよ~。よろしくねルーン」
「で?うちと取り引きがしたいんだろ。どんな取り引きをしたいんだ?」
「はい、簡単な話です。私たちのクランとイベント2日目つまり今日1日お互いのクランを攻めるのをやめましょうという不可侵条約のようなものを結びたいんです」
ルーンの話にライカの方は首を傾げて不思議な顔をしていたがキョウヤの方は話を理解して考える顔をしていた。
「どうして今、俺たちとそんな条約を結びたいんだ?現状、争ってるわけでも共通の敵がいる訳でも無いのに」
「シンプルに私が用意周到でこのイベントを生き残りたいと思っているからです」
「じゃあ、なんで今日1日だけなんだ?残りの日程も不可侵を望むのが普通じゃないか?」
「そんな条約提示しても受け入れてもらえないですよね。うちと【FirstStars】、おたくと【ミルキーウェイ】が手を組んでるのは周知の事実ですから」
ルーンはしたたかな笑顔でそう言うと、キョウヤも納得したような顔をした。
「大体言いたいことはわかった。で、こっちがそれに応じるメリットは?さすがにそこまで考えてるのならそっちがうちに攻めないってだけじゃ釣り合わないよな」
「はい、もちろんです。そちらに提示する対価としてこちらが攻めないこと、イベントステージ内の各クランの位置を記したマップの複製、そしてうちのクランに関する情報を少し。まぁ、最後の情報は知ってるかもですけど」
「なるほど…ライカ、お前的にはどう思う?」
「う~ん、難しいことはよくわからないけど要するに今日、あの氷の要塞に攻めないだけでマッピング部隊の仕事が無くなってあっちの情報が手に入る。なら別にこれは結んでも良いと条約だと思う」
キョウヤはライカの意見を聞くとルーンに向かって右手をさしだした。ルーンはそれを見てすぐにそれがなにかを察して自身も右手をさしだし握手した。
「これで、条約締結ってことで良いですね」
「あぁ、それで問題ない。それより、マップの複製と情報を出してもらおうか」
「はいはい、わかってますよ。ほら」
ルーンはそう言って、アイテムボックスからイベントマップに赤い印がつけられているメモ用紙のような紙をを軽く投げるようにして渡した。
「よし、とりあえず1つ目は受け取った。それで大事なのは2つ目の情報だ」
「はいはい、知ってますよ。キョウヤさんって案外せっかちなんですね」
「そうなんだよ~。やっぱり、初対面の人にもキョウちゃんがせっかちってわかっちゃうよね~」
ライカはルーンの煽りを真に受けてルーンに笑いながらそう言うとキョウヤに睨まれた。
「まぁまぁ、恐い顔しないでください。そして、うちの情報なんですけど【蒼空学園】さんにも関係あることなんですよね」
「どういうことだ?」
「私たちのクランは規模は最大ですがメンバー8人と少数精鋭です。もちろん、精鋭揃いで私を含め8人中4人がトップ12、さらに1人は箒乗りの魔法使い」
「それがなんなんだ?何を言いたい?」
もったいぶっているルーンを急かすキョウヤ、そこにそれをなだめるライカという構図ができた。
「残り3人、そのうちの1人が元【蒼空学園】のメンバーでキョウヤさんのご友人だったシュウさんです」
「なっ…!」
「開示する情報はこれで全てです。条約締結は感謝します。それでは。アイテム【フラッシュボム】」
ルーンは強烈な光りで身を隠し、その場を颯爽と立ち去って行った。




