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欲するもの

「それって、どういうこと?さっき、事故とは関係無いって…」

暗い顔でうつむいたフィアは消えるような声でそう言うと、シルクは今までのことを整理するようにある1つの事実を口にした。


「それはルーンのあの状態に関しての話です。そもそもルーンの狂気的な努力と異様な闘争本能はある1つのことのために成立していたことなんです」


「その1つのことってもしかして、ルーンちゃんの両親が関係してること?」


「はい、ルーンの行動の源は両親から褒められるというだけのただ単純なことだったんです」

シルクの言葉にフィアはなんとなくこれまでの話から見当がついていたという雰囲気だった。


「要するにルーンちゃんが頑張ることは全て両親の頑張ったねとかの褒め言葉をもらうだけだってことだよね」


「そういうことです。いつも優しい両親から褒められるなかで自分が頑張ったことを褒められることがルーンは一番嬉しかったようです」


「だからその一言をもらうためだけに、闘争本能むき出しで努力してたってことか…でも、それがあの事件と私たちにどう結びつくの?」

フィアのこの質問にシルクは少し変な風に間をとり考えるそぶりを見せると、決心のついたような顔をした。


「今まで言ったこともそうですが、ルーンはもちろん他のクランメンバーにも話さないでもらえますか?」


「まぁ、それはもちろんだけど何で今さら…」


「ルーンもこれ以上先のことは触れられたくは無いでしょうから」

シルクはフィアにそう前置きをしてからルーンの話の続きを話した。


「ルーンの今の状況は頼るものが無くなり、必死に他のものにすがりついているという感じです」


「それって…」


「はい、察してもらっている通り推測でしかありませんがルーンは今、依存する先を両親という家族の代わりに自分でつくったこのクランという家族にしているんです」


「でも、私やシルクちゃんみたいにリアルで繋がりのある人ならともかくゲームだけの関係の人に親友のそんな重いことを背負わせたくないってことだよね?」

フィアの付け足しがシルクの言いたいことそのままだったため、シルクはしっかり伝わっていると思い頷いた。


「別にメンバーのことを信用していない訳じゃ無いですけど、この集団にはいつかは終わりがくるって思うとまたルーンが塞ぎ込んじゃうと思って…」


「たしかに、あのときみたいにルーンちゃんが塞ぎ込む姿は私も見たくない。あれ、そういえばなんであのときはルーンちゃんは復活したんだっけ?」


「それは…まぁ今度話します。ですが、ルーンの依存性やそれに対する狂気性なんかは私やフィアさんが引き受けなければならないことは事実ですから」


「そ、そうだね。でも、そういう言い方をされるとなんかスゴい重圧を感じるよ。よし、じゃあシルクちゃんもとりあえず日中に向けて寝ようか」

フィアは少し笑いながらそう言いうと、仮眠スペースに向かって歩いていった。

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