闘争本能
「フィアさん、まずルーンがなんで色々なことを頑張ってきたのかわかりますか?」
「えっ…なんだろう?考えたことも無かった。でも、それってただやってて楽しいからじゃないの?」
シルクはフィアの回答に首を横に振ると、難しい顔をして質問の答えについて話し始めた。
「いいえ、ルーンはやっていて楽しいからやっていた訳では無いんです。それどころかルーンはどの競技にも何の感情も持っていませんでしたよ」
「それじゃあ、ルーンちゃんはなんでやること全てあそこまで極めることができたの?ルーンちゃんのポテンシャルでも、努力はしないとどの競技でも全国クラスなんていけないでしょ。それは私が一番分かってる」
フィアは何かを噛み締めるように最後の一言を言うとシルクは話を少し違うものに変えた。
「これは、ルーンと私が幼稚園に行ってたときのことです。ルーンはある男の子にかけっこで負けてしまいました。元々運動神経が良かったルーンですが、さすがに男子の運動神経と比べると勝てるはずも無かったんです。しかし、一週間後ルーンはその男の子に圧倒的な差をつけて勝ったんです。ルーンはどんなことをしたと思います?」
「う~ん、どうやってか…普通に走りの練習をしたんじゃない?それ以外、思いつかないし」
「はい、その通りです。…ですが、今考えるとルーンの練習は練習と呼べるような感じじゃなかったんです」
フィアはおびえたようにそう口にしたシルクに疑問を感じながらその続きを聞き出した。
「ど、どんな内容の練習だったの?」
「ただ延々と走っていただけです。これだけ聞いても何がという感じだと思いますが、本当に睡眠、食事、排泄行為これ以外の時間をただ走るだけの生活をしていたんです」
「う~ん、ピンとこないけどつまり…ルーンちゃんは1日12時間以上走り続けていたの!」
「はい、そんなことをすれば普通の幼稚園児は疲れて倒れるものですが、ルーンはその逆で元気が溢れるようになり、どんどんとタイムが縮んでいくんです」
シルクが言っていることはルーンにとってはその後当たり前になることだがその他の大多数の人類では考えられないような現象だった。
「でも、ルーンちゃんはそこまでしても走りに興味は無かったんでしょ。それって、ただ単にその男の子に勝ちたかったからスゴい努力した話だよね?」
「そうですね。ですが、ここで初めの話に戻りたいと思います。ルーンはなんであそこまで完璧だと思います?」
「えっと…つまり、ルーンちゃんは極度の負けず嫌いで1度負けた相手に勝つために完璧になったってこと?」
フィアの回答にシルクはなんとも言えないような顔をして答えを言った。
「フィアさんの考えも間違いでは無いんですが、ルーンのはただの負けず嫌いじゃないんです。ルーンそれは一種の闘争本能と言えるものでした」
「闘争本能…でも、そうしたら今までのイベントや戦闘でそれが見られなかったのにどうして今…」
「それに関しては私たちクランメンバーとあの事件が深く関わっているんです」
シルクがそう言うとフィアはハッとして少し暗い顔でうつむいた。




