中の人の会議2
ルーン達がダンジョンの周回をしている頃、FLOの運営つまり中の人達は次のイベントに向けた準備で大忙しだった。
「おい、イベントのためのステージはできたか?」
「はい、終わりました。後はモンスターの配置をすれば完成になります」
「わかった。モンスターのほうは…」
リーダーのような人がそれぞれの状況を確認しながら逆算してイベントの日までの予定が間にあうかを考えていると、1人の男が彼のことを呼んだ。
「絹塚さん、イベントは一週間前までに間にあいますか?」
「あぁ、大丈夫だ。何もなければ明後日には終わる。で、そっちはどうなんだ」
絹塚と呼ばれている男の質問にさっきまでとはうって変わって顔をくもらせた。
「あの…2つほど誤算がありまして…」
「えっ、どれに問題がでたんだ」
「1つは死神のことでして…」
男がそう言うと、絹塚は安堵した表情でホッと一息ついた。
「死神は倒されても問題無いだろう。いくらトッププレイヤーとレベルが同じとはいえ今の最高レベルは28だろ、倒されたって何もおかしくない」
「そうなんですけど、撃破者がレベル8の初心者でしたんです」
それを聞いても絹塚は特に顔色変えずに男の話を冷静に聞いていた。
「どうせ、パーティーにトッププレイヤーがいてたまたまそいつがとどめさしただけだろ」
「そうなんですよ。でも、そのトッププレイヤーがエイルだったんですよ」
「へぇー、エイルか。一昨日も何かやってたらしいし、そういうの引き付ける体質なんじゃないの」
絹塚は面白がってそう言っていたが彼の心の中には何かが引っ掛かっていたが、特に顔にはださなかった。
「で、2つ目の誤算というのも少し死神が関わっていて…」
「ほぅ、何があったの」
「死神を出現させた場所が悪かったみたいでシークレットクリアされたクエストが一件、しかも賢者のところの…」
男がそう言った瞬間、絹塚の顔が少しこわばり男は少しビビったが話を続けた。
「詳しく説明すると、トレントの森に昨日放った死神のせいでその森に人がいなくなり、前日に行ったメンテナンスでのモンスターの湧き率上昇でたくさんのトレントが狩られずにいたため…」
「トレントを300体倒すと現れる隠しボスを規程レベル以下の単独撃破をトリガーとしていたから、1人のプレイヤーが幸運にも死神に会わずに300体のトレントを狩り、隠しボスを倒したってところかな」
「は、はい。そうです。あとそのプレイヤーがシルクと言って…」
「あのオリジナルモンスター倒したパーティーの片方か」
そう言って絹塚は少し考え、これからの対策を練るためにその男に他の部署のリーダーたちを集めてもらうことにした。
「イベントに支障がでなければいいのだろうけど…」
そう絹塚はボソッと呟き、窓に見えるビル群を眺めながら物思いに少しふけっていた。




