戦略的交渉術
ルーンはフィアを連れてクランハウスからある場所に向かうために出てきた。
「ルーンちゃん、なんでいきなり出てきたの?」
「次のイベントのためにちょっと手を回す為ですよ。一応、これにはフィアさんの手助けが必要なんで」
ルーンは悪い顔で笑いながらそう言うのを見て、フィアは諦めた顔をした。
「じゃあ、目的地は小規模クランのクランハウスってところで合ってる?」
「はい、そうです。それで、1つ目のクランがここです」
ルーンはそう言いながら目の前にある建物のドアを2回ほどノックした。
「それで、トップランカーさんは俺のクランに何しにきた?カチコミかなんかか?」
「いや、時間取らせてごめんなさい。別に敵対心を持ってここに来た訳じゃないですから」
ルーンは不気味なくらいご機嫌にニコニコしながらクランリーダーの男と会話を始めた。
「実は私たちのクラン今、人数が少なくて困ってるんですけど…次のイベントまで協力関係を築きませんか?」
「なるほどねぇ。イベントで有利に進めるために俺たちのクランを使いたいと…」
「はい、雑に言えばそういうことですね。でも、私はウィンウィンの関係を望んでいます」
「ウィンウィンの関係って言うのは具体的には?」
男がそういうとルーンは目を輝かせ口角を上げ、具体的な説明を始めた。
「簡単です。あなたたちのクランはまず私たちに約半分の人数をください。その代わり私たちはその半分を使ってトップランカーと他のクランを攻撃します」
「なるほど、トップランカーが率いてくれれば俺たちのクランも別のクランのクリスタルに攻撃ができる。そうなれば、自然と俺たちのクランのランキングも上がるのか。ちなみに、俺たちがこの交渉を断わったらどうなる?」
「簡単です。あなたたちのクランの場所を見つけ次第、うちのフィアが潰しに行きます」
ルーンは脅しのように男に言うと、男の方はさも当然のことだという感じで頷いた。
「まぁ、そうなるよな。多分、あんたらはこの話を他のクランにも話すだろうし」
「分かってくれてありがとうございます。それで、この交渉条件をのんでくれますか?」
「あぁ、もちろんだ。俺たちみたいな小規模なクランだとあんたらみたいな大規模クランに潰されて終わりだしな。一矢報いるためには手を組むのは悪いことじゃない」
「賢い考えをしてくれて感謝します。じゃあ、私たちは次のクランに行くので…私たちと一緒に次のイベントも仲間として頑張りましょう」
ルーンはそう言ってそのクランハウスからフィアを連れて出ていった。
「上手いもんだねぇ~。ルーンちゃんの脅しと笑顔のコンビネーションは逆らえないわ」
「ありがとうございます。っと、そろそろかな。シルクにメッセージ送ろうかな」
「あっ、そう言えば他のみんなはクランハウスに残って何をしてるの?」
「う~ん、私とフィアさんが居たら出来ないことですかね。次のイベントの為にも出来たら良いことだから」
ルーンはそう言うとマップに印をつけた場所を確認すると、そこに向かうことにした。




