仕込みナイフと8人目
「はぁ、とりあえずブランちゃんはうちのクランに入るってことになるのかい?」
「皆さんが納得してくれればですけどね」
ルーンはそう言って大人メンバーの方を見ると、全員諦めた顔をしていた。
「ルーンちゃんは何がなんでもブランちゃんをクランに入れたいんでしょ」
「は、はい。もちろんです!」
「じゃあ、もうボクたちはルーンに従うよ。ブランがスパイだったときは、そのときに考えれば良いし」
「それもそうだな。外に情報を知られたところで俺の盾だったり、フィアさんの魔法なんかは対応しようにも難しいからダメージも少ないからな」
ルーンの想いに答えるように他のクランメンバーも入会についてとやかく言わなかった。
「それなら、ブランをこのクランに入れてもみんな問題ないということで良いですか!」
「「「「「「異議なし!」」」」」」
「あ、ありがとうございます!」
これにてブランは【犯罪者の夜】の8人目としてクランに加わることになった。
「あっ、そういえば師匠、ブーツに仕込んでたあの小さいナイフはなんだったんですか?まえ、戦ったときにはそんなもの無かったじゃないですか!」
「簡単だよ。エイルさんに教えてもらって仕込みナイフを入れてみただけだって」
「えっ、でもそれってツクヨミ様にもらった本物の『月影のブーツ』ですよね」
ルーンの返しに驚いたブランはルーンに耳打ちをしながら確認をした。
「そうだよ。紛れもなく本物のブーツだけど」
「えぇ!なにやってるんですか!そんなことしたら、あの人怒りますよ。あの人は色々なものを作るのが趣味で自分のものを傷つけられるのを嫌うんですよ!それを改造したなんて知られたら…」
「そこは心配いらないよ。だって、やっていいかってこの前、会ったときに聞いたもん」
「それで、あの人はなんて言ったんですか!」
ブランはもはや耳打ちすることを止めてみんながいる前で、大声で話していた。
「私が最後、あの人と会ったときブランも一緒にいたじゃん。あのときだよ」
「えっ、そんなこと言ってましたっけ?」
ルーンはブランに耳打ちでツクヨミと最後に会ったときの状況を説明し始めた。
「じゃあ、そろそろ妾も用事が終わったからな帰らせてもらうぞ。ほら、行くぞ女郎蜘蛛」
「あっ、ちょっと待ってツクヨミ!聞きたいことがあるんだけど…」
ルーンは帰ろうとするツクヨミを引き止めて、何かを聞きこうとした。
「なんじゃ?聞きたいこととは?」
「ツクヨミからもらったこの短剣や、装備なんだけど少し改造してもいい?」
「ん?妾が作った物に不満があると言うのか?」
ツクヨミは自分の作ったものについて改造したいというルーンの言葉が気にくわなかったようだった。
「いや、そういう訳じゃないよ。もちろん、性能自体良いものだし私に合ってるものだと思う。ただ…」
「ただ…なんじゃ?」
「ちょっと、やってみたいことがあるんだよ。もちろん、バラバラにするなんてことはしないから…お願い!」
「はぁ…まぁ、良い。そもそも妾はお主を勝たせるために渡したんじゃ。好きにするが良い」
ツクヨミはそう言うと今度こそ女郎蜘蛛を連れて帰っていき、ルーンも街まで魔方陣でワープした。
「まぁ、こんな感じのやりとりしてたでしょ」
「た、たしかにそうでしたね。なるほど、師匠がやりたかったのが仕込みナイフだったと…」
「なーに、2人でこそこそ話してるのかな?」
「そうですよ。私たちも交ぜてください」
2人があからさまにこそこそしているのを気にかけたシルクとアヤメが話しかけてきた。
「また、秘密の話?」
「まぁ、そんなところですよ。それより、今日はブランの入会祝いもかねてみんなで食事しませんか?」
「それは良いね。じゃあ、僕が料理つくるからえっと…アニはたしか料理スキル持ってたよね?しかも結構高いの」
「はいはい、言われなくても料理は手伝いますよ。みんなを驚かせるものつくるから待っててよ」
アニはそう言うとエイルと一緒に料理をするためにクランハウス内の調理場に向かった。そして、数十分後2人が作った豪華な料理を囲いながらささやかなパーティーを行った。




