ハンデマッチ
「じゃあ、決闘のルールは回復以外のアイテム有りで時間無制限の1対1で良いよね」
「はい、それで良いですよ」
ブランはルーンの提案したルールをあっさりと承諾すると、決闘場にワープしようとした。
「あと、ブランちゃんはどんな武器使うの?」
「あれ?師匠覚えてないんですか?まぁ、どうせすぐに分かりますし、教えても良いですけど。ほら、これです」
そう言ってブランが装備したのは肘のところまでを覆う赤黒い籠手の先に短刀の様なものが仕込まれたものだった。
「なるほど…ありがとう。じゃあ、決闘場で待っていてよ。すぐに行くから」
「はい、わかりました。遅れないでくださいよ」
ブランはるんるんで決闘場にワープするのをルーンは見送ると、クランメンバーの方に目をやった。
「ルーン、なんであんなの受けちゃったの!ああいうのは追っ払えばいいんだよ」
「いや、ちょっとあの子について少し気がかりなことがあって…私の推測があってれば良いけど…」
「それってどういう感じのやつなの?」
「この決闘が終わったらもしかしたら言えるかもって感じですからまだ言えません。あと、エイルさんちょっと欲しいものがあるんですけど…」
ルーンはそう言ってエイルに耳打ちをすると、エイルはその内容を了解してあるものをメッセージで送った。
ルーンは数分で準備を終え、ブランの待っている決闘場にワープしてクランメンバー全員を観戦に招待した。
「よし、じゃあ師匠始めますか」
「ちょっと待って。私も武器装備してからスタートしないと不公平でしょ」
ルーンはそう言うといつもの短剣ではなく、先ほどエイルから貸してもらったナックルであった。
「あれ?師匠の武器は短剣じゃなかったでしたっけ?もしかして、そっちが本職ですか?」
「いや、私の本職は短剣ってのは間違ってないよ。でも、そっちもハンデ背負ってるんだから私もハンデ背負って公平に戦いたいでしょ」
「なるほど…まぁ、良いです。師匠がそんななめた態度をとるなら私本気で潰すだけです」
ブランは笑顔でそう言うとルーンも臆すること無く笑顔で返した。
「ルーン大丈夫かな?いくらリアルで空手をやってたからってこんないきなり…」
「心配要らないと思いますよ。確かにルーン先輩はこのゲームのスキルでナックルのスキルを取得して無くても戦い方次第では上手く立ち回れるはずです」
アヤメの言う通りこのゲームはスキルアシストが無くともPSが良ければ戦闘を行うことは難しいことではないが、ナックルの攻撃スキルを持っていないルーンの場合だと、決め手に欠けるという感じである。
「それに、ルーンちゃんはこの前ナックルのスキルじゃないけど蹴脚系のスキルを取ったっていってたし…」
「あぁ、だからあんなことを頼んできたのか」
「エイルさん、あんなことって何ですか?」
「いや、実はね…」
「みんな、もう決闘始まっちゃったよ!」
エイルの言葉はアニの声でかき消されたが、その続きを聞こうとする者は誰もいなかった。




