扉を叩く者
「だ、誰ですかねルーン先輩…?」
「分からない。ここの場所を知っていて訪ねてくる堂々してる人か、それともただ迷っただけの人か…」
「どうする?開けてみる?」
「私が出てみるよ。スパイならこんなことをするわけ無いだろうし、万が一のことがあっても私が氷漬けにして逆に情報を聞き出せば良いんだし」
フィアはそう言って立ち上がり、ドアの除き穴から外の様子を伺った。
「こんな真正面にくるスパイはないと思うが、ここ最近は他のクランに半ば無理矢理勝負を挑むなんてこともあるからな。【蒼空学園】にいたときも何回かあった」
「なるほど…それはそれで厄介というか面倒ですね」
「う~ん、そういう訳でも無いんじゃない。ドアの外にいるのはアヤメちゃんくらいの女の子が1人だけだし、敵意は感じられないから…開けるよ」
フィアは全員が頷くのを確認してからクランハウスのドアを開けた。
「ふーん、良いところじゃん。あっ、ここって【犯罪者の夜】のクランハウスで合ってるかな?」
「合ってはいるけど君は…」
クランハウスに入ってきたのはアヤメ程の身長にアニのミルク色の髪より純白に近い髪を花魁のようにまとめ、白と黒を基調にした紫のラインが入った着物型のワンピースを身に纏った女の子であった。
「えっと、師匠は…おっいた!」
「えっ!うわっ何この子?」
女の子はクランハウスのなかを覗き込みルーンを見つけると抱きついた。
「この子って酷いじゃないですか師匠。私のこと忘れましたか?ブランですよブラン」
「いや、知ってるも何も初めましてだし…」
「えっ、何?この子ルーンの知り合いじゃないの?」
「知りませんよ。少なくともこのゲーム内では会ったことも無いですけど」
ルーンはそう言いながらブランと名乗る女の子を自身の身体から引き離した。
「もしかして誰か違う人と勘違いしてるんじゃないの?ルーンと似たアバターの人と…」
「いや、違いますよ。私の師匠はルーンさんと…あともう1人だけです!」
「ど、どうやら人違いでは無さそうだけど、本当にルーンちゃんは知らないの?」
「本当に知らないですって、それにブラン…ちゃん?はここに何をしに来たの?」
ルーンの質問にブランは一瞬ニヤッと笑うと、さも当たり前のように答えた。
「もちろん、師匠のクランである【犯罪者の夜】に入るために来たに決まってるじゃないですか」
「決まってるって…一応このクランには最低限入会テストを受けて合格する必要が…」
「何言ってるんですか?私は師匠に実質1度勝ってるんですよ。まぁ、邪魔が入ってあくまで実質ですけど…」
ブランの急な態度の変貌に周りは一瞬凍りついたが、ルーンはあることに気がついた。
「あなたもしかして…」
「ふふっ、気がつきましたか?とりあえず、入会テストを初めてくれませんか?」
「おい!お前、さっきから言いたいこと言って自分のやりたいことやれって、いきなりやるなんて無理に決まって…」
ブランの横暴に頭にきたシュウがつっかかろうとすると、ルーンが静止に入った。
「良いよ。ブランちゃんの言う通りやってテストを受けさせてあげれば良い」
「そんなこと言ったってこいつ他のクランが送り込んだスパイかも知れないだろ!」
「いや、それは絶対にない。私もこの子について思い当たるふしがあったし、私が相手をすれば問題は無いでしょ」
「ありがとうございます。あと、わがまま言っちゃってごめんなさいね」
ルーンはブランの要求を受け入れ、ブランは笑顔をでクランメンバーに謝った。




