月神の弟子
ツクヨミは持っている紫色の剣を女郎蜘蛛の首に当てながら、脅すような低い声で言った。
「それで、お主はこの娘が妾の力の継承者って知っていてやっていたのか?返答によってはお主をまたあの空間に封印してもいいんじゃぞ」
「そ…それだけは勘弁を…。私は知らなかったんです。だからもう、あの薄暗いジメジメした空間に100年も入るのだけは本当に…ご勘弁を…」
「え?え?これどういう状況ですか?えっと…女郎蜘蛛がツクヨミの弟子で私が継承者で…?」
ルーンは色々な情報がいきなり入ってきて頭のなかの整理が追いつかなかった。
「はぁ、女郎蜘蛛は泣きじゃくって今はまともに話せないな。お主、大丈夫であったか?」
「えぇ…ツクヨミがくれたコートのおかげでなんとか…。それで、お二人の関係は…」
「あぁ、妾が昔悪さをしておったこいつをちょいと100年間異空間に幽閉したんじゃ。そしたら、泣きついて弟子入りを申し出てきて、妾はそれをのんだのじゃ」
「な、なるほど…それで自分の一人称まで変わるくらいのトラウマが原因で泣きじゃくって…」
ルーンは泣きながら白かった髪が黒に戻っている女郎蜘蛛を見て、少し可哀想とも思えてきた。
「あの…その異空間にもう1度閉じこめることって…」
「もちろん、やらんから安心せい。前にも言ったがお主には負けてもらったらこまるからな。奴がお主を食らうのを止めにきただけじゃ」
「えっ…本当ですか…。ツクヨミ様…あの空間に…行かなくても…良いんですね…」
「あぁ、お主にはまだこの世界でやってもらいたいこともあるからな」
ツクヨミはニヤッと笑い、女郎蜘蛛の頭を撫でるとルーンの方を見た。
「ルーン、お主はこれから更に激しい戦いをし、妾が助けに行けないときもあろう…」
「は、はい」
「お主は以前会ったときにこの世界で楽しく過ごしたいと言っておったじゃろ。妾は遠くから見させてもらったがお主には多くの仲間ができて楽しそうじゃな」
ツクヨミは満面の笑みでルーンに子を見るような眼差しを向けていた。
「たしかにクランを作ってクランメンバーもどんどん集まってますけど、それが何か…」
「お主のところはまだお主を入れて7人じゃったな。妾は直接大きな干渉はできないが少しならやることができる」
「それって、どういう…」
「女郎蜘蛛、耳を貸せ!」
ツクヨミに言われるがまま、女郎蜘蛛はツクヨミの方に耳を傾けると、ルーンに聞こえないように耳打ちされた。
「えっ…!そんなことしても良いんですか?ま、まぁ私にできないことでも無いですしツクヨミ様のご意向とあれば…」
「あぁ、しっかりやるのじゃぞ。分かっていると思うがこれが今回の件のお主の処罰じゃ」
「な、何を話しているんですか?」
「まぁ、お主は後々分かってくるじゃろ。あと1つ良い機会だからお主に話しておこう」
「は、はい…」
ルーンの質問はツクヨミにあっさりとあしらわれ、かわりにツクヨミは真剣な表情で話題を変えてきた。
「これも前に言ったことじゃが、お主のしている妾の力がこもったその指輪、同じようなものをつけていると前に話したがその存在を2人確認することができた」
「だ、誰ですか?」
「その2人はそれぞれ風神と雷神から指輪を受け取り、この世界ですでに有名となっている奴らじゃ」
「それって…」
ルーンはツクヨミの情報と一致した状況の人物をちょうど2人知っていた。




