悪魔の血
私がこのスキルを手に入れた理由はいたってシンプルであり、ある1つのトラウマを祓うためだった。
「はぁはぁ、痛みもひいてきたか…。このゲーム無駄にリアルだから刺されたりすると結構いたいんだよねぇ。まぁ、あれを試すにはもってこいか」
「あとはこの【猛毒】状態の継続時間だけど…ふふっ、狙ったようにぴったりじゃん」
そうひとりごとを呟き笑いながら、女郎蜘蛛をひきつけてくれているルーンとシルクを見た。
「よし…時間的に動くなら今かな…」
「おっと…これを忘れちゃあれができないや…」
リリスは立ち上がりながらそう言って、近くに転がっていた自分の槍を手に取った。
リリスの秘策の準備が整うまで、ひきつけることにしたシルクであったがリリスを貫いた槍状の攻撃や、蜘蛛の糸にかなり苦戦していた。
「くっ…飛び道具攻撃がかなりキツい…」
「シルク、大丈夫?私がターゲット全部とろうか?」
「大丈夫、キツいのはルーンも同じでしょ。ただでさえ、リリスが抜けて避けるので精一杯だし」
「私はそんなにキツく無いよ。ただ、攻め手にかけてるのは事実だけどね」
ルーンはそう言いながら蜘蛛の糸を躱し、槍状の飛び道具を短剣で弾いた。
「そちたちは粘るのぉ。そろそろ、大人しく妾に食べられるってのはどうか?」
「蜘蛛の口のなかで噛み砕かれるくらいなら最後まで必死に足掻いて生きるよ!」
「シルクの言う通りだよ!【ランススロー】」
リリスは2人に気をとられている女郎蜘蛛の不意をつき、槍を投げつけ背中に刺した。
「おぉ、そちも生きておったのか。だが、もうほんの少ししか生気を感じないが…」
「そうだね。私のHPの約半分はあんたの攻撃で削れた。そんで、あとの半分くらいはその攻撃の毒で消えていった」
「じゃあ、あと残り少しのそちの生気ごと食ってやろうではないか」
「そうだね。もうこんな状態じゃ戦えないし、あんたにこの身体はくれてあげるよ」
リリスはそう言って女郎蜘蛛の目の前に立ち、目をつぶり静止した。
「ほぅ、そちはもの分かりが良くて助かるわ。では、いただくとするかのぉ」
「リリス!」
「ルーン、待って!リリスは…」
「あぁ、私の血一滴にいたるまで食えば良いよ!【デビル·ブラッド】」
リリスに女郎蜘蛛が触れようとしたとき、リリスが女郎蜘蛛の背中に突き刺した槍が黒く光ったと思うと、途端に女郎蜘蛛が苦しみだし、HPをどんどんと削っていった。
「な、何を…そちは妾に何をやった…」
「簡単ですよ。あなたの【猛毒】によって削れた私の約5割のHPと同等の割合、つまりあなたの5割のHPを10秒で削るスキルを使わせてもらいました」
「よ、よくもやってくれたな…」
「まぁ、私もその分のダメージを対価に使うスキルなんでここで退場ですけど…。シルク、ルーンさんあとは頼んだよ。じゃあね、おばさん」
リリスはそう言うと光となって消え、3層の街の入口まで戻された。
(あーあ、これ本当はルーンさんに使いたかったけど次戦うときは対策されちゃうかな)




