火渡しの糸
「くっ…まだ死んでなかったか」
「そちの爆撃で死ぬような妾ではないぞ」
チェインは驚き、バックステップで距離をとろうとすると女郎蜘蛛は右腕を再度蜘蛛の脚に変えて、お返しと言わんばかりに今度は女郎蜘蛛がチェインの胸元を貫いた。
「グハッ…うっ…!」
「そちは妾に言ったであろう。生きていたら相手をしてやると…その約束果たしてもらおうか!」
女郎蜘蛛はそう言うとチェインをシルクと同じく蜘蛛の巣で壁に張りつけにした。
「うぐっ…動けない…しかも魔法もスキルも使えない上にアイテムボックスも開けない…」
「妾は正々堂々と殺り合うのが好きでのぉ。まぁ、そちが妾に爆撃を仕掛けてきたんだ。妾がそちの動きを止めるくらいで釣り合うだろ」
女郎蜘蛛は張りつけになったチェインに自身の口から糸を出しながらゆっくり近づいた。
「後ろががら空きですよ、お姉さん!【聖天の雷槍】」
リリスは黒い翼で音をたてずに女郎蜘蛛の背後まで近寄り、隙をついた一撃をお見舞いしたが、あっさりと女郎蜘蛛の右腕で止められてしまった。
「お姉さんって呼んでくれるのはありがたいけど槍向けないでもらえるかな」
「くっ…今です!」
「オッケー【ファントムスラッシュ】」
「ぐっ…」
リリスの方に女郎蜘蛛の気が向いている隙をつき、ルーンが背後から一撃を与えると、2人は反撃を恐れ女郎蜘蛛の腕がとどかない範囲まで退いた。
「リリス、囮になってくれてありがとう」
「囮くらいならいくらでもやりますけど、それより張りつけになった2人をどう助けます?」
「助け方はわからない。女郎蜘蛛自体を倒せばなんとかなるんだろうけど…」
ルーンはそう言って約3割しか削れてない女郎蜘蛛のHPバーを見た。
「妾が楽しみにしておった食事の時間だったのにのぉ。しょうがない、邪魔者には消えてもらうとするか」
「リリス、何か来るよ!」
ルーンは嫌な予感を感じ、動けるリリスに呼びかけできるだけ女郎蜘蛛から離れた。
「【蜘蛛ノ巣ノ中心】【子蜘蛛召還】」
女郎蜘蛛は変形した右腕を地面につき、蜘蛛の巣形の魔方陣を形成し、小さな蜘蛛形モンスターを10体召還した。
「数を増やしてきたか…リリス、小さい蜘蛛から先に片付けるよ!」
「わ、わかりました!」
「ふっ、妾を先に片付けようとしないとはなかなかの余裕を感じるのぉ。まぁ、良い【子蜘蛛ノ炎】」
女郎蜘蛛は召還した子蜘蛛たちに火に放たせ、蜘蛛の巣の魔方陣をつたって炎が広がっていった。
「うっ…この炎は厄介だな」
「る、ルーンさん、大変です。魔方陣をつたってルーンとチェインの張りつけている糸にも引火しています!」
「なっ…!それはヤバイ!」
(シルクは今、火属性吸収状態だから大丈夫だけどチェインさんは焼き殺される!)
ルーンの予想通り、シルクには全くダメージを受けてなかったが、チェインは炎によるダメージがどんどんと貯まっていき、光りとなって消えてしまった。




